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初めての色、初めての恐怖



「え、遠垣内君達が?」


「はい」



高城先生の声に答えつつ、昨日のやり取りを思い出してムッと眉根を寄せた。

その様子に苦笑した先生は「そんな事があったのか」と難しい顔をする。

しかし私を見ると苦笑して頭に手を置いた。



「君のそんな表情を見て安心しちゃうのはダメだよねえ」


「いや、俺も正直なんか安心した」


「……怒っているんですけど」


「うん、でもなんだろうねえ」


「なんだろうなあ」


「……」



2人のその緩んだ表情を見ていると、怒っている私がおかしいのかもと思ってしまう。

昨日のやり取りを思えば心がトゲトゲして行くと言うのに。

それとも私の感じ方が他と違うからなのか?




「いやいや、ハルコちゃんの怒りはごもっともだし、なにより尊重される君の意思なわけで、決して軽んじるわけではないんだよ?」


「そうそう、最初のお前を思い出すと、ああ……うんって俺達が勝手に安心してるだけだからな?」


「……でも、私のあの返答のせいで高城先生や相楽くんがやりにくくなったりしない?

私、感情に任せてあの人達をなじったわ。

それに相楽くんが止めてくれなかったら……周囲に居たノーア達に命令するところだったのよ。

怒られても仕方無い事をしてしまったのに、どうして貴方達は、私に優しくするの」



頬を膨らませると「だってハルコ、自分でもう分かってんじゃん」と相楽くんは苦笑して私の頭を撫でる。



「やってしまったこと、やろうとしてしまったこと、それから何がどう悪くて今後どうして行けば良いのか。

全部自分の中で考えて考えて考え抜いた後に俺達に言ってるんだ。

もう言える事ねえよ」


「……でも」


「ハルコちゃん、怒られたい?」


「!!」



じっと静かに私の目を見て逸らさない高城先生の気迫に、私は思わず肩を揺らして身を硬くした。

怒られる!と思うと更に緊張して自分の手をギュッと強く掴む。



「はい、怒った!これでハルコちゃんは怒られました!」


「はっや」


「うぅ〜、僕元々人を怒るのって得意じゃないんだよ〜」


「それであの気迫なんだとしたらすげぇ演技派だけどな。

で?これで満足かハル……コ?え?お前……えっもしかしてマジで怒られたと思ったのか!?」


「違うよハルコちゃん!?僕全然怒ってないよ、泣かないでっ!?」



泣く?そう言われて初めて頬を暖かいものが伝う。

溢れてくるソレは止まらなくて、びっくりした様子の2人が慌てふためく様子に時差を感じた。



「止めろ止めろ!!目が腫れるぞ!!?」


「止め……る?どうやって」



「楽しいこと!!楽しいことを思い出して!!

君が今までで1番楽しかった事を!!」



楽しかった事、なんだろう。

ゆっくりと思い出しながら、ふと相楽くんに連れられた車の中での景色を思い出す。

このレンズを通して見た穏やかな色彩。

原色ではなく、ただ自然の街並みの色合い。

人々の表情に、穏やかに吹く風。

そうだ、あれは…凄く、楽しかったな。



「相楽くん濡れタオル!」


「よし!泣くな〜ハルコ〜、怖くないぞ〜!」


「なんで子供に言うみたいなの」


「あ、落ち着いたか?」


「ごめんね、僕怖かった?初めて女の子泣かせちゃったよ……本当にごめんなさい」


「あっ、その……こちらこそごめんなさい、怒られたかったと言うか怒られなきゃと思ってしまって……でも実際に自分が悪いんだと言われると凄く悔しくて」


「そりゃそうだよぅ!!ハルコちゃん今回の事に至っては全然悪くないんだから!!

怒られる必要も無いんだからね!?

悪いのはアポも取らずにやって来た彼等だし、今後ハルコちゃんが彼等を許す必要なんて絶対無いから」



最後の言葉に力を込めたのか、握り拳を作った高城先生は私の頭を優しく撫でた。



「良いかいハルコちゃん、君の感じたままに生きなさい。

君が感じる感情は全て許されるんだ、それは人として生まれた僕達に通ずる1つの心理であり権利でもある。

感情を殺してはいけないよ。

それは精神に直結する欲求なのだからね。

もしまた彼等が同じ様に目の前に立ち塞がる事があろうと、君は君の意見を素直にぶつけて良いんだ。

どんな理不尽な言葉でさえ、君の素直な気持ちが何よりも優先されるのだから」


「……私、悪い子じゃないですか?」


「何を言うの、こんなにも素直で良い子が悪い子なわけないよ。

僕達が証明してあげる」


「そうだぞ、何があっても俺達が守ってやる。

……本来なら俺がって言いたいけど」


「えっ?もうそんな関係なの!?」


「その関係はまだ説明出来てないので延期だな」


「……あ、ああ〜、なるほど」


「高城先生はその言葉に納得しちゃうんだ」


「ううん、こればかりは経験と感情の問題だからなあ。

君が嫌じゃ無いと言うなら、受け入れても良いんじゃないかなと助言しておこう」



少し得意げに笑った高城先生に首を傾げながら、少しだけ頬を赤くした相楽くんにも首を傾げた。

そうかと納得した部分もあれど、好きな人達に怒られるのが怖いと思った感情を学んだ。

怒られるのが怖いと言うか、信じて貰えずに否定されるのが怖いが正解か。

私はまだまだ弱いんだなと理解して、私はエスコートするかのように差し出された彼の手を取るのだった。

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