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怒りは赤い色彩で



「大丈夫か?」



そう声を掛けられて初めて、ぶわっと緊張の糸が緩んだ。

毛穴から汗が吹き出し、身体中から熱が放出される。

悔しさの方が強くなって涙まで出てきた。



「ははっ、よしよし泣くな」


「子供扱いしないで!」


「してないしてない、よく頑張ったな」


「頑張ってなんて無いわよ」



ぐぅっと鳴った喉に、堪えても涙は溢れて行く。

眼鏡を掛けていても分かる程に心配そうなノーア達。

相楽くんは楽しそうだけれど。



「……相楽くんはどうして、そんなに笑っているの」



恨みがましく見上げると、もにょっと口元を歪ませて「はははっ」とまた声を上げて笑う。



「もう!」


「悪い悪い!お前がこんなに感情を剥き出しにしているのは、なんか良いなと思ってな!」


「子供っぽいって言いたいの!?」


「いやいや、普通に可愛い」


「何がよ……」



肩の力が抜けて、涙も引っ込んだ。

後ろに倒れ込むと「そう言う顔も良いな」と私の頬を優しく撫でる。

その距離感が気持ち良くて目を閉じると「頑張ったな」とやっぱり嬉しそうな相楽くんが居るのだ。



「遠垣内さんはああ言う人だから関わらなければまだ平気だけど、安西さんは遠垣内さんの言いなりだからな。

それにあれだけ言い返せる奴も、言わせるような奴もお前以外知らねえわ」


「別にモルモットとか危険分子だって言われるなら私も理解してるから仕方ないと思えるんだけど、言うに事欠いてバケモノだもの……頭に来たわ」



バケモノは違うと思いたい。

だってもし、私がバケモノだったら……。


ノーア達の事を考えると、どうしても許せないのだ。



「ハルコ、ほら」


「ん」



手渡された紙袋を見て、私は持っていた荷物の中から同じ紙袋を相楽に差し出した。



「交換」


「うん」



それぞれが作ったバーバリウム。

私も同じラッピングを開けると、そこにはカラフルで小さな花弁が細い葉と一緒に閉じ込められていた。

とても綺麗で可愛くて、さっきまでのトゲトゲした気分が沈んで行く。



「すごい」


「お前のもめちゃくちゃ綺麗だな、気に入った」



キラキラと光に反射する宝石みたいなバーバリウムは、すぐに窓側に置いた。



「どうしよう、窓側も良いけどベッドにも置きたいし……机の上にも置いておきたい!」


「喜んで貰えて良かった」


「……そうだった、本当は相楽くんの為に作ってた筈なのに私の方がはしゃいじゃった、ごめんなさい」


「謝るなよ、俺も嬉しい」



ポンと頭に乗った手のひらに頷くと「携帯の使い方、ちょっとでも触りながら覚えて行けよ」と言って扉へと向かう。



「明日先生の所で用事あるんだろ?

それが終わったら電話して、迎えに来るから」


「分かった、ありがとう相楽くん」



外まで見送って行こうとしたけれど「まだ先輩達居るかもだから良いよ」と苦笑されて、私はその場で立ち止まった。



「今日も本当にありがとう、バーバリウム、大切にするね」


「俺こそありがとう、また明日な」



手を振って去って行った相楽くんを見届けて、私はソファに座りながら貰ったばかりの携帯を眺めていた。



「写真にノーア達は映らない、動画でも……映らないのはどうしてだろう?

やっぱり残留思念の問題なのかな……?

感情が色濃く映るのは目に見えて居るけれど相楽くん達には見えて居ないのと同じ理由なのかしら」


携帯電話には様々な機能があるようだが、残念ながら私にはまだまだ分からない物の方が多い。

どうにか写真と電話とメッセージ?の使い方を反復練習だけして、しばらくして帰って来たノアにただいまと声を掛けた。



「ん?ノアは写真に映るのね」


「どれどれ?」



ベッドの上で寝転んでいるノアにシャッターを切ると、真っ黒の毛並みの細部までしっかりハッキリ映っているノアが居る。

ノーアは無理でノアはOK?

やっぱり密度?認識と認知の関連性なの?


モヤモヤをかかえつつも、私は明日の検査とお出掛けのためしっかりと眠る事にするのだった。




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