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きっと気付けたその先が光に溢れていると信じて




「ごめん、やっぱりお前の事好きだわ」


「?ありがとう」


「それで良い、今はもうそれで良いから……お願いだから俺の事嫌わないでくれ」



ぎゅっと抱き締められて、私もその背中に手を回す。

結局付き合うと言う答えは分からないままだけれど、私はこの距離に居られるのがたまらなく幸せだと感じた。



「取り敢えず……だな、付き合う云々はこの際ちゃんと説明する。

けどハルコの言う様に、本当に俺はいつも通りで良いのか?」


「もちろんだよ。

逆によそよそしくされたら私が寂しいし、何より私は助けて貰った側なんだよ?」


「お前が言うなら……それで良いけど」


「不満そうだけど?」



首を傾げる相楽くんにそう言うと「なんでもない」とため息を吐き出した。


お買い物はとても楽しく終わったと言っても良いだろう。

それに何よりお互いの意見交換が出来たのが大きいと言えた。

車に乗ってアヴリウスに帰る道中、何故か相楽くんが黙り込むのは分からなかったけれど……でもそれでも、今日の気分としては最高なままだった。



「荷物置いたらこっち来るから」


「分かった、待ってるね」



そう言って研究所へ入るドアの前で別れ、私は自室へと向かう。

しかし妙な胸騒ぎがしてゆっくりと歩調を緩めて行き、行き当たった自身の自室前に居る男にため息を吐き出したのだ。



見覚えのある後ろ姿と、傍に控える一人の男。

このセットは1度見たら忘れられない程記憶に残る。



「やあ、錦見谷ハルコさん」


「……こんばんは、遠垣内さん」



側仕えの人の名前はあいにく覚えていない。



「安西と言います、以後お見知り置きを」


「錦見谷です、どうも」



1歩前に出た側仕えの男は、自己紹介と共に無表情で手を差し出す。

私がそれに応えると表情も変えずに1歩下がった。



「今日は突然済まない、実は先日のお詫びにやって来たんだ」


「先日?お詫び?」


「君がこのアヴリウスに来た時の事さ、流石に態度が悪かったかもしれないと反省してね、こうしてこの場所まで足を運んだんだ」


「お詫びなら結構ですよ、アナタ達の言っている事は間違ってません。

私はモルモットでもあり危険分子でも有り得る。

ノーア達を肉眼で見る事の出来る希少な人間でもあるがそれ以上に貴重なサンプルでもある。

これは高城先生から学びました」


「なるほどね」


「わざわざこんな場所まで足を運んで貰ってすみませんが、人が来る予定なので失礼します」



彼らの隣を素通りしようとしたものの「このクソガキ」と安西が口汚く呟いたのを聞き逃す程では無い。



「遠垣内様の言う事が聞けないのか、この生意気なクソガキめ!!」


「クソガキ……?そんな言われ方されて素直に従うバカは居ませんよ?

そんな言葉で他人をなじる人間が仕える人なんてたかが知れてるわね」


「遠垣内様を侮辱するのか!」


「バカにしてるのはアナタの事です」



沸点の低い人だと私は目を細めた。

敵意や怒りを剥き出しにしている人は分かりやすい。

赤く色付くノーア達は点滅を繰り返しているが、私はそれに知らん振りをする。



「残念だけれど、私はもう言われた事に無関心では居られない。

理不尽には相応の理不尽を返すし、怒りには怒りを返すわ。

それがどんな人であろうと言われてそのままにするつもりはもう無いから!」


「この……バケモノめ!!」



言われて瞬時に頭に血が登った。

これが怒り、悔しさなのか。

じっと見詰める先にはうっすらとノーア達が見えた。

彼らを手繰り寄せ、言葉を紡ごうとした瞬間。

後ろから誰かに抱き締められて溜飲が下がる。



「……このおてんば娘」


「相楽くん!」


「やあ、相楽」


「どうも、遠垣内先輩。

安西先輩も」


「チッ、お前か」



僅かに冷静になった様子の安西に、私は邪魔をする相楽を振り返る。



「ちょっと、離して!」


「離したら暴走するだろう?

だから離してはやれない」


「暴走なんてしないもん!

あの人私の事バケモノって言ったのよ、言うに事欠いてバケモノって!!

アナタの目節穴なんじゃない!?

ノーア達を見ている私の目よりおかしいわ、人の形をした私に向かってバケモノって!!」


「バケモノにバケモノと言って何が悪い?」


「やめなさい安西、その辺で」


「はっ」



遠垣内の言葉に瞬時にかしずいた安西。

私はそれを見て「絶対、アナタ達だけには協力しない」と叫んだ。



「いくら何と言われても、私は遠垣内さんと安西さんの事は信用しないし協力しない。

アナタ達の話しが出た時は全ッ力で拒否するわ!!」


「おや、それは困るな……」


「困れば良いわよ!!

私はアナタ達が大嫌い!ぜーったい言う事聞いてやらないんだからね!!」



がうっと噛み付くと「ハルコ、落ち着け」と苦笑しながら私の頭を撫でた。



「そもそも何よあの時の態度だって!!

いくら私を嫌っているからって上から目線でムカつくったら!!

今だってバケモノなんてバカにして、そんな奴らの話しなんて一切聞かないからね!!」


「ハールーコー」


「相楽くんうるさい!!」



相楽にも噛み付くと「ほら、部屋行くぞ」と笑っている。



「錦見谷ハルコさん、先程の言葉……どうしたら撤回して貰える?」


「撤回はしない」


「この安西を切り捨ててもかい?」



ニコリととんでもない事を言う遠垣内と、それを聞いて絶句の表情を浮かべる安西。

私は相楽に背中を押されながらもしっかりと遠垣内の目を見て言い放つ。



「私がアナタを嫌いなのはそう言う態度よ。

人を簡単に切り捨てられる人は信用ならない」



そう言って部屋に入ると、それ以上の追求は無かった。

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