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もしかしたら私も変われるのかな




「ハルコちゃん、今大丈夫?」


「高城先生?はい、大丈夫です」



お昼が過ぎた頃、お散歩に行っているノアが居ない部屋の中で1人ミヤに借りた小説を読んでいると高城先生の声が聞こえて立ち上がる。

首を傾げつついつもと何か違うなと思い扉を開けると「やあ」と苦笑して部屋に入った。



「どうしたんですか高城先生?」


「うーん、えっとね……」



歯切れの悪いままに頬をかく。

どうしたんだろうかともう一度首を傾げていると「ハルコ、検査させて欲しいんだって」と高城先生の肩からひょっこり現れたノアが言った。



「ノア」


「あのね、あのね、ハルコの目が僕達を映すメカニズムを知りたいんだって」


「うわぁ、先に言われちゃったよ〜」


「そんなにびびらなくたってハルコは嫌がって無いぞ?」


「もうちょっと格好良く、ビシッと決めるつもりだったのに!」


「多分無理だと思う」


「酷いやノアくん!」



謎の掛け合いが始まったと思いながらも「検査なら全然大丈夫ですけど」と高城に視線を合わせた。



「いや、その……いつものメディカルチェックとは違って、もっとしっかり数値を取って調べたいんだ。

ハルコちゃんが見えているノーア達の色、その色彩によって感情が異なる事をもっと厳密に数値化していきたい」


「はい」


「……嫌じゃ、ない?」


「嫌じゃ無いですよ。

私、今の自分が否応無しにノーア達をノウンしていない事は凄い事だと思っています。

今まで見えていた世界のままなら間違い無くもっともっとたくさんのノーア達をノウンしていたはずですし……それを未然に防ぐ為の検査なら喜んで協力します。

少なくとも高城先生達の事は……とても信頼していますので」



そう伝えると、グッと堪えた高城の目から涙がぽろぽろと落ちて来た。

慌てて「大丈夫ですか!?」と駆け寄ると「大丈夫!」と片腕で顔を隠す。



「違うんだ、ちょっと感動して……」


「か、感動?」


「うん、本当にありがとう、ハルコちゃん……僕もっと頑張って君達を守れるくらい立派な成果を上げてみせるよ」


「えっと……ありがとうございます、でも無理はしないで下さい……?」


「ダメだぞハルコ、高城はそう言われるとムキになる奴だ」


「僕はやってみせる!」


「ほらな?」



ノアが得意げに見上げてくるので、それに「そうだね」と返す。

しかしどうしていきなりそんな話しになるのか。

私はその経緯を聞こうとも思ったけれど、やめた。

きっと高城先生はまたたくさんの事を同時に考えて、考えて考えて出した答えなのだろう。

この人は私がここに来た日からずっと、誰かの為にここに居る。

ならば私は協力するだけだ。

この人達の為になる事は私の為にもなる。

私の瞳に映るノーア達に起こる影響力はノウンが示す通り特殊だと私も理解している。



「ところで具体的な話しになるんだけれど……ハルコちゃんの目に見えているノーア達の色彩や感情を拾う時って何をしたらどう言う風になるかとか法則はあったりするのかな?

聞いている限りだとただ視線を向けて要るだけで存在させてしまうようだけれど……」


「法則……なのかは分かりませんけれど、目が合うんです。

霞が色付いた時、呼ばれてる気がすると言うか……呼ばれた気がして振り返ったり、その場所に目を凝らすと形を取ると言うか……すみません、全然言葉に出来ないんですけど……」


「いやいや、言語化出来たら多分もっと僕達もノーアの事を調べられるはずだし、その感性と言うか捉え方はハルコちゃんにしか出来ない事なんだよ?

そのままで十分だからね」


「……ありがとうございます。

そうですね、法則と言えるか分かりませんけれど、私が彼等に意味を与える時は必ず呼ばれた気がします。

無作為に私がその場所を見詰めても……試した事はありませんけれど、出来たとしてもそれは意味を持たないと思います。

ノアが現れた時は呼ばれた訳じゃなくてあると分かっている場所に私から呼び掛けたので。

相楽くんに言われてその場所をよく見ると、ノーア達とは別にサラリーマンの彼の存在を感じ取れましたし……それに、完全に同化している訳じゃないと分かったのも、色の違いと……あとは」



の、言葉の続きが出て来なくて少し止まった。

あとは……なんだっただろう。

決定的に違うと言う確信を持ったものの、それが何故なのかは分からない。

色だけじゃない、濃淡だけじゃない何か。

ぶっつけ本番でやったからなのか余計に言葉に出来ない。



「ごめんなさい、上手く言葉が見付からなくて」


「大丈夫だよハルコちゃん。

そうか……やはり君の目にはノーア達と被害者の男の人とは別の存在として認識しているんだね。

そうなると……」



一瞬にして難しい顔をした高城に視線を移しつつ、私も私でその答えを探ろうと思考に浸る。

しかしやはりこれだと言うハッキリした答えが出ないままだった。

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