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戸惑いながらそれに触れて



「いらっしゃい、ハルコちゃん、ノアちゃん!!」



部屋に入ると途端に元気に迎えてくれた日向に、私も笑顔で返しながら「お邪魔します」と言ってノアと共に扉を潜った。



今日は日向のお部屋にお呼ばれしての女子会だ。

昨日深山さんに頂いたチーズケーキと日向の常備しているお菓子。

それに何故か朝イチで部屋にやって来た相楽くんから貰ったモンブランを持参して。



「これなに?」


「なんか……朝から相楽くんが持って来てくれた」


「あ、い、つ!ほんっとーに、ほんっとーに……」



ぐぐっと握り拳を作ると「良い仕事するー!」と目がハートになった。



「しかもエスパリーチェの限定モンブラン!!!!

並んでも買えないかもしれないって言われるくらいにすっごくすっごく美味しいモンブラン!!!」


「……日向、モンブラン好きなの?」


「うん!大好き!!

こう言う気遣いが出来るはずなのに、なんでいつもあんななのか不思議だよね〜」



私を部屋の奥へと押しやって椅子に座らせると「せっかくケーキがふたつあるんだし、紅茶で良いかな?」とカップを取り出した。


それに頷きつつ、前に相楽くんに言った言葉が蘇って来た。

あの外面は仮面であり自衛だと。

過去になにかあったのか、今現在も何かがあるのか……と考えるものの私から聞けるわけもなく。

そしておそらく答えてはくれないだろうなと納得してその考えは終了だ。



「ミルクとお砂糖はご自由に!」


「ありがとう、日向」


「……」


「どうしたの?」



カップを受け取ってから、日向は思い悩むように眉を寄せた。

それに問い掛けふと「あのね?」と私の手を取る。



「ハルコちゃんが嫌じゃなければ、ミヤって名前で呼んで欲しいな……って」


「……良いの?」


「うん!もちろん!!」


「じゃあ僕も!」


「ノアちゃんもありがとう!」



ぎゅうっとノアを抱き締めながら「昨日はごめんね」と苦笑する。



「深山さんに言われて初めて気付いた。

ハルコちゃんは頑張り屋さんで、自分を追い詰めちゃう人なんだって。

一緒に頑張れる事なら、私いつだってなんだって頑張るよ。

今度からハルコちゃんが1人で頑張らなくても良いように、私達にもお手伝いさせて欲しいの。

1人はね、すごくすごく……寂しい事だって、私知ってるもん」


「日向……」


「ミヤ!」


「……うん、ありがとう、ミヤ。

私ね、お友達を名前で呼ぶの、初めて」



照れくさくてそう言うと、嬉しそうに「それは光栄ですなあ」とミヤも同じ様に笑った。



「じゃあじゃあ、女子会っぽく何か話そうか!」


「女子会って何をすればいいの?」



ピタリとその場で止まったミヤは、うーんと首を捻る。

そして、私を見てゆっくりと首を振った。



「なんでも良いの!

ハルコちゃんの好きな物とか、最近知って驚いた事とか……」



お砂糖を入れて掻き混ぜながら、私はふと思い立つ。



「ミヤは、ノーアの事どう思ってる?」


「んえ、私?」



常備菓子のクッキーに手を伸ばしたミヤは、それをぱくりと口の中に放り込むと「えっとねえ」と少しだけ考える様に眉を寄せた。



「難しい……?」


「難しい?」


「うん、私達の感情に影響を受けて何かに成るノーア達は……一言では言えないけれど、とても難しい。

私はハルコちゃん程ノーア達が見えているわけじゃ無いから……多分ここに居る人達も感じ方はそれぞれあると思うけど。

元々ここに集まっている人達は科学者から隊員になった人か、それぞれの事情で隊員になったか、スカウトのどれかだしね。

ノーアの研究をしていると言うのもあって、私達から見たノーアは未知のモノ。

人によっては研究対象とか言いそう」


「そっか……」


「でも、どうしていきなり?」


「私にとってノーア達は身近過ぎて、普通の人達にはあの子達がどう写っているのか気になったの。

夢の中でも現実の視界の中でも彼等は私の傍に常に居て……それが自然過ぎて。

この眼鏡のおかげで視界はとても静かになったけれど、それでも何も居ない訳じゃない。

だけど前みたいに理由を付ける必要が無くなったと言うか……」



言葉に詰まっていると、ミヤはチーズケーキをフォークですくってくれた。

ぱくりとそれを頬張りながら考えを纏める。



「そう、この眼鏡を掛けていると焦点がズレると言うか、あの子達をしっかり見なくて良い感じがするの」


「……ハルコちゃんにとってそれは良いこと?」


「少なくとも生み出さないと言う意味ではとても」


「そっか!」



にっこりと笑顔で「それなら良かった」とミヤはモンブランもお皿に盛り付けた。

一瞬、ミヤの雰囲気が変わった気がしたけれど……考え過ぎか。



「ミヤ、僕もー!」


「もちろんだよー!」



ノアの前にもクッキーやモンブラン、チーズケーキをしっかりセッティングしながら「ノアちゃんは、私達の事どう思ってる?」と首を傾げた。



「達?」


「じゃあまず私!」


「ミヤは優しいから好きだぞ!」


「私もノアちゃん可愛いから大好きだよー!!!!」



ぎゅうっとノアを抱き上げる。

それにふと笑いながら、こう言うのが女子会なのかなと普通の人達の雰囲気が少しだけ分かった気がした。

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