そのとき、私は何を思うのか
「………」
景色が変わった。
あの子の目に見えてた色が、空が、雲が……雰囲気が変わった。
ノーア達のあの子を見る視線が、意識すらも塗り替えられてしまった。
霧のように見えるノーアは人の意思や想いに同調する、それは必然でありノーア達は影響されるだけ。
それを取り巻く状況を、あの子は……本当に変えてしまうなんて。
「そう、あの子を主と認めたんやね」
嬉しくて悲しくて、今までの居場所から退く時が来たのかと漠然と理解した。
いや、元々そのつもりだったけれど、その時が来てしまったのだ。
私はあの子が覚醒するまでの前座だと分かっていたのに……いざこの時が来てしまって少しだけ寂しい。
「姫様」
「うん」
ニコリと笑みを浮かべたつもりだったが、相手の顔色を見るにどうも上手く笑えなかったようだ。
ああ、いけない……私はもう姫じゃないと言うのに。
今度こそ意識して、表情を引き締めた。
「大丈夫、今までほんまに良くしてくれました。
私はまだ消えへんし……しばらくは、ここに居れるから」
「はい」
流れた涙は何故?
私から離れられるから?それとも私が居なくなって頼る術が無くなるから?
「私は……いつまでも姫様と共に居ます」
「……」
触れられる訳が無いのに、手を伸ばすこの子に。
私もゆっくりと手を伸ばした。
私は人じゃない、だけど……。
「ありがとう」
この子にそう言いたくなった。
今度こそ笑う事が出来ただろうか。
笑ってくれた事が嬉しくてすぐにここから消える事は難しかった。




