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罪悪感と好奇心を胸に抱き



しんと静まり返った部屋の中央、示されたその椅子に腰掛ける。

隣には緊張気味の高城と、それぞれの隊長達。

円卓を囲み緒方が椅子に座った事を認めると「始めるか」と声が掛けられた。

今日の議長は遠垣内。

議題は……保護された少女について。



「全隊員周知の事かもしれないが、先日よりアヴリウスにて保護された少女……錦見谷ハルコについて皆さんの意見をお聞きしたい」


「彼女か」


「今は緒方班に居ると聞きましたが、後々戦闘にも参加させるつもりですか?」


「僕はそのつもりは無いよ」


「僕だって反対だ!彼女は一般人で戦闘なんてとんでもない!」


「まあまあ、そんなに暑くならないで」



それぞれが意見を述べる中、遠垣内の発言に全員の視線が向いた。



「私は賛成だが」


「賛成?彼女を戦闘に参加させる事をか?」


「もちろん、以前報告があった通りだとノーアに命令したと聞いた。

それならばノーアによる被害者を減らせる他俺達が出向く手間も減らせる筈だ」


「……まだ彼女はノーアを完全掌握している訳じゃない、それにまだまだ不安定な事が多い。

ハルコちゃんが自分自身の価値を知ろうとしている事は確かだが早急過ぎると思う」


「それなら早く慣れて貰うまでだ、相楽の奴が付いているならなおさら」


「彼女は一般人だ、戦闘員では無い」


「高城先生……彼女の意識は未だノーア寄りなのでしょう、早い所こちら側の意識に染めてしまうのは如何か?」


「僕は彼女の意思を尊重したい。

その為にも、そして今後の僕達の為にも、彼女は大切に育てたい」


「それなら彼女が良いと言えば良いと言う事ですか?」


「……直接戦闘は出来れば避けて欲しいけれど、彼女にそう言う意思があるのなら僕は彼女の意思を尊重するよ。

だけど彼女の目は、心は……僕達とは違う場所でノーア達を見ている。

その視点はとても貴重だ、だから余り……濁らせたくは無い」



机の下で握り拳を作った高城に賛同する意見が多数。

しかし遠垣内は「だからこそだよ」と苦笑した。



「彼女は自分自身の価値について無知だ。

お姫様よろしく護り囲うのであれば敢えて手放すのもひとつの手だ。

なぜなら彼女は無知である限り襲われない……それは貴方が示した事だ」


「それは……」


「知ってしまった以上、知りたいと願う以上。

彼女は強くなるしかない。

そうではないか?」



これではまるで遠垣内の支配の元進んで行きそうだと、緒方は僅かに笑みを浮かべると咳払いした。

それに不機嫌そうに眉を顰める遠垣内。



「それも含めて彼女に選んで貰うのはどうでしょう?」


「緒方……」


「ここで僕達がいくら考えていても彼女の考えが纏まる訳じゃ無いでしょう、折を見て私から問い掛けてみます。

先程から高城先生の言うように、彼女は今かなりの勢いで成長したがっている。

が、だからこそペースは僕達が手綱を握らないといけない、彼女の為にも、そして僕達の為にもだ。

身体に負担が掛かり過ぎて壊れてしまうのは貴方としても本意では無いでしょう、遠垣内くん」


「もちろんだ」


「ならばもう少し猶予が欲しいな」



考え込む様子を見ながら、隊長陣の顔色を伺う。


中立派、穏健派、過激派。

それぞれの主張は立てられたかなと胸を撫で下ろす。



「俺としてはすぐにでも彼女に戦闘員として先陣に立ってもらいたいのだが……緒方の言い分も分からないでもない。

……もう一度だけ、謁見してやっても良いかな?」


「まだ会わないで居たらどうかしら、遠垣内くん?

貴方が萎縮させる前に私が1度お会いしたいわ」


「深山女史がそう言うのなら」



含みを持たせた笑みを浮かべる遠垣内に深山は「ドウモ」と笑みで返した。

ひとまずは決着がついて会議はいつも通り答えの出ない平行線を続け、時間になり終幕となった。



「それでは本日はこれで、次回の議長は緒方だ」


「よろしく」


「では、解散」



席を立ち足早に部屋を出て行く者達が多い中「緒方くん」と深山から声が掛かった。



「モルモットちゃんはお元気?」


「錦見谷ハルコ、ですよ……日向に怒られますよ?」


「あら、ごめんなさいね」



コロコロ笑って眼鏡の位置を直すと「それで、今日はどこに居る?」とあくまで自分の主張を突き通す。



「今日は……どうだろう、さっきコウタと出掛けていたようで帰って来ていたから多目的室か中庭だと思うけど?」


「じゃあレナの所に行くついでに挨拶させていただこうかしらね、彼女何が好き?」


「この間のお茶会では嫌いな物は特に言っていなかったよ」


「あらそう?それじゃあチーズケーキでも買って行くわ、緒方くんも食べるでしょう?」


「そうだね、戻り次第いただくよ」


「それじゃあまたあとで!」



笑顔で部屋を出る深山に笑顔で返しつつ、内心では疲れたとため息を吐き出してしまうのだった。

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