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決して色あせる事無く続いて行く



歩きながら、隣で水槽を物珍しそうに見ているハルコを盗み見た。

普通の女の子に見えるのに普通じゃない事は、ハルコのかばんでうごうごとしている子猫の姿をしたノーア達が物語っている。

彼等はこの世界で人の感情の機微が視覚化したモノと言われているが、事実その目に見える人は少なく。

現在で「見えている」とアヴリウスで認定され匿われているのはハルコだけらしい。

研究機関として存在するアヴリウスで働く俺としてはただの監禁に近いが、本人もノーア達が見える事が特殊なのだとは理解している様で大人しいものだ。

偶然とは言えハルコを拾った自覚のある俺が教育係兼見張り兼お守り役になった事はあまり後悔していない。

どちらかと言えばラッキーだとも言えた。

過激派の遠凱都を始めとした、ノーアを良いものと思っていない連中への攻撃から守ると言う名目で色々と聞き出す事が出来たなら、結果的に緒方さんや高城先生への恩になる。

それに、さすがに世間知らずの女の子をあんな殺伐とした世界に放り出すマネは出来ない。

それこそ遠凱都の様に「モルモット」だと自分を決め付ける事だろう。

特に今のハルコを見ていると世間知らずなだけでなく、異性との関わりが希薄な事もあり色々と危ういのだ。

純粋な心配が勝っての今となるのは、我ながら笑える結果となっている。



「相楽くん、これなに?」


「深海魚、海の底の底の、光の届かない場所に住んでる奴らの事を言うんだ」


「うわ、くらげだ」



さっきまでの仏頂面や眉をしかめる仕草も無ければくらげに驚いたりライトに照らされたイカを見て笑ったりと、本当に普通の女の子なのに。

この間連れて行ったショッピングモールで買った洋服なども、ハルコに合わせたものでコーディネートしていたと言うのに本人の無頓着さには呆れた。

自分がどれほど恵まれたものを持っているか説教したくなった程なのだから。



「相楽くん見てこれ、なあに?

すごく変な形……いや、むしろすごい?」


「ただのヒトデだろ?なに、ハルコ海来た事無いのか」


「人の多い場所は基本的に行った記憶が無いなあ……」



水槽の底でイソギンチャクと一緒に沈んでいるヒトデを見ながら、暗いからとかばんからこっそりノアを出してやった。

2人して無邪気に笑ったりして楽しんでいる様子に少なからずこみ上げるものはある。



「それなら海見に行くか?

イルカのショー、13時からだってよ。

昼飯いれてそのまま行こう」


「本当?」



キラキラと目を輝かせるハルコは、まるで子供みたいで。

思わず手を取って歩き出した。


一方その頃アヴリウスの研究室には、日向が眉を八の字にしながら高城へと愚痴をこぼしていた。

手にしたカップに入っているのはただの紅茶なはずなのに、まるでのんだくれが居るように見えてレナはため息を吐き出した。



「……そんなに気になるなら一緒に行けば良かったじゃない」


「行けるなら行ってたもん!」


「元々緒方くんに口止めされてたから、僕は何も伝えなかったけど……まさか日向にも内緒にしてたとは思ってなかったなあ」



珈琲をちびちび飲みながら、窓側に置いてある植木鉢に視線を向ける。

小さなサボテンは小さな蕾を付けており、霧吹きで水をかけてやりながら「でも」と高城はサボテンから日向に視線を戻す。



「どうしたんだろうね、相楽くん。

彼にしては珍しく1人の女性だけを気に掛けて居るようだけど……ハルコちゃんだからかな?」


「どう言う事です?彼女、目鼻立ちがしっかりはしているけどそこまで目立つ容姿では無いと思うけど?

それに相楽くんが女の子1人を特別扱いするなんて珍しいし……」


「レナさんははっきりした美人だもん、ハルコちゃんはなんて言うか……奥の見えない女の子なの」


「ミステリアスと言う事?……まあ、纏う雰囲気が不思議なのは分からなくもないけれど……それだけであの相楽くんが参るとは思わないわね」



相楽は男にも女にも愛想は良いけれど、それは外面で誤魔化した偽りの見た目だ。

特に女性に対しての態度は火を見るよりも明らかで、紳士でレディーファーストを怠る事は決して無いがその分八方美人とも言えるのだ。

誰かを1番大切な位置に置く事は無く常に平等であり、告白されたりするような決定的な隙は見せない。

それを知っている高城は「そうだねえ」と曖昧に頷いた。



「でも彼女はまだここに来たばかりだし、先輩として教えてあげようと言う親切心なんじゃないかな?」


「だとしたら同性の私でも良かったじゃないですか。

……私もハルコちゃんと遊びたいし仲良くなりたいです」



ぶーと口を尖らせた日向に「珍しいわね」とレナは日向の頭を優しく撫でた。



「どちらかと言うとミヤちゃんも、誰かに依存する様な子じゃ無かったのに。

ハルコちゃんと言う子は、人をも惹き付ける力があるのかしら?」


「うーん、否定出来ないかもしれないね。

彼女は良い意味でも悪い意味でも透明過ぎるんだ。

だからこそ気遣いたいし、教えてあげたいと思うんだろう。

逆に彼女自身は無意識なので、性格によっては染まり過ぎるきらいがあるかもね」


「ハルコちゃんは良い子です、良い子過ぎます。

だからこそ見守ってあげなくちゃと思うし、私自身としても彼女と関わっていろんな表情がみたいのに……相楽くん、拾った責任は取るとか意味分からない事言うし。

この間だって2人でショッピングに行ってハルコちゃんの服選んであげたって……きっと今日だってその時買ったお洋服着てるんでしょ?いいなあー!!」


「その場合相楽くんに嫉妬しているのよね?

ミヤちゃんも今度誘ってあげれば良いのに、ハルコちゃん喜ぶと思うわよ」


「……喜んで、くれるかなあ」



急に黙り込んだ日向は、深いため息を吐き出して2人に問いかけるのだった。

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