姉さんの暮らした世界で
ちょっとシリアスです。
「早く起きて、りゅうくん。」
姉さんの声で目を開けると姉さんの顔が見えた。見えたのはいいが・・・
「姉さん、近い。」
何故か姉さんは鼻の先が触れそうなほどに顔を近つけているのだ。あっ今ちょっと触れた。
「ごめんね、でもいくら呼んても起きないりゅうくんが悪いのよ。」
「へいへい、そりゃごめんなさいでした。おはよう、姉さん」
「おはようじゃないよりゅうくん、もうとっくにそんな時間は過ぎてます。いまもう12時過ぎよ。」
「夏休みだからいいじゃないか。」
「よくない。ものには限度があるでしょ。12時は寝過ぎよ。」
「以後気をつけます。」
「よろしい、じゃ私は着替えるから、その間に出かけ準備してね。」
と言って姉さんは俺の部屋から出た。
俺と姉さんは現在2人暮らしだ。両親は俺が3才の時に他界した。一緒にいた時間は少なかったが、優しいことだけはよく覚えている。その後親戚の紗子さんに引き取られたが、その紗子さんも俺が中3の時病気で他界。子供もいなかったからか俺たちは紗子さんに好かれていた。姉さんは特に紗子さんと親しかったようで、毎月一回は必ずショッピングに行っていた。俺もとてもよくしてもらていた。先に他界した両親は生みの親で紗子さんは俺たちの育ての親という感じだった。だから紗子さんが他界した時、俺と姉さんは1日中ただ泣いた。心に開いた穴を埋めようにも、どうすればいいかわからない。ただ俺は悲しむ姉さんもう見たくないと思った。
そして俺は高2になり、俺より二つ上の姉さんは大学を受験せず、働き始めた。両親とその人が残してくれたお金は少なくないが、姉さんはいつかはなくなるからと、働くことを宣言。俺としては姉さんには大学に行ってもらいたいが、姉さん曰く「私はりゅうくんが幸せならそれでいいのよ。」これを言われると俺は何も言えなくなる。
さて、辛い思い出はこれぐらいにして今日のスケジュールを思い出してみる。まず紗子さんのお墓参りに行き、その後姉さんとショッピングして、そのあとは適当にどこかをぶらぶらして帰るというプランだったはずだ。それにしても、姉さんと出かけるのは久しぶりだなーと朝ご飯だった昼ご飯を食べながら思う。楽しまないと。