天を抜く、白い風
「オトモリさんこっちだ」
モヒカンの声に従い、オトモリはとある場所へとつく。
そこはウォングラの町。
モヒカンのかつての盗人仲間、記戌名は現在、馬や牛、ラクダや馬車を決められた時間で手配する貸借車という仕事をしている。
「モヒカン、これじゃあ間に合わない。アムサはもうダイヤモンドの涙を流せない。バレたら殺されてしまう」
「違いますよ……シルベスタ、あれ出してくれ」
銭ははぐんでくださいよとシルベスタは倉庫の裏へと案内した。
「なんだこりゃ!?」
シルベスタは説明した。
「2030年以降は廃棄されたと思われてましたけど……見つけたんですよ……失われたはずの歴史を……」
こんなもん、歴史本でしか見たことない……でも……やるしかない……
「……モヒカン!モモを頼んだぞ!」
フラカマ城にて。
600坪の敷地広場には飛行船が停められていた。
城の屋上には待ってましたとナカマルとモトチカが長椅子に腰掛け座っていた。
マッカチンとルルルはロープで縛られたアムサを引き連れ二人の前へ差し出した。
「おやおや……バッテンブロウが来るかと思ったが……まさかおまえらとはな。」
バカにした様子でナカマルはさげずむ。
だがマッカチンもルルルも何とも感じていなかった。
「……ナカマル……お前はこの国を支配できない……支配するのはモトチカ様だ!」
「そうだぞナカマル」
マッカチンとルルルの台詞はナカマルだけではなく、モトチカにも意味がわからなかった。
ルルルはモトチカの耳に小声で呟いた。
ハハーン……なるほどな……
モトチカの態度の急変がナカマルの不安を煽る。
「……折角協力してヨロシ城を潰したが……あまり意味はなかったようだな……」
モトチカは脇差しを抜いた。
「ナカマル……もう貴様に用はない……全ては私のものだ……」
「貴様!わかっているのか!貴様などバッテンブロウが……」
……脇差しはナカマルの腹へ刺された……
「…………!?」
アムサの目の前で思いもよらぬ光景がながれる。
ナカマルは言葉途中で息絶えた。
「……この世に総将軍は二人もいらん。バッテンブロウは残念だったが……アムサのダイヤモンドがあれば、何もいらぬ。」
アムサは縛られたままでモトチカに体当たりをした。
落とした脇差しを拾い自分のロープを切り、モトチカを人質にした。
「動いたらこいつを殺すからな!」
モトチカは脅えていたがマッカチンとルルルは微動だにしていない。むしろ笑いがこぼれる。
「何がおかしい!!」
「アムサ……おまえは何も知らない……」
「そうだぞ何も知らないぞアムサ」
何も知らないとは……どういうことか……
「バッテンブロウは俺達と別れた時に、ある伝言をナカマルに伝えてほしいと頼まれたのだ……」
それは……
「俺はニセモノだとな」
その速度は尋常ではなかった……
オトモリは減し曲がりそうな首の重力に耐えながら、その速度に耐えていた。
首が折れるが先か、落ちて死んでしまうのが先か、はたまた運良く生きているが先か……
……死ぬわけにはいかない……
……好きな女を守るために……
(かつて、この国の軍人が乗っていた……戦闘機というしろもんだ。運転することは可能だが、着地は無理だろう……だから、目的地についたらこれを……)
見えた!
フラカマ城だ!
目的地が見えたらこの棒を上に引くんだよな……
アムサはマッカチンとルルルの笑いの意味がわからなかった。
その気持ち悪い薄ら笑いを聞いているときだった。
謎の轟音とともに何かが落ちてきた……
その物体は飛行船へぶつかり大炎を上げていた。
「誰だ!?爆弾でも投げられたか!?」
現地広場へ駆けつける舘花の兵士.
急いで消火活動を始める大炎は強くなるばかり。
モトチカはアムサと脇差しを振り払い、屋上から城下をながめる。
「火を消せ!せっかく頂いた城に燃え移るぞ!」
その時……空から何か別のものが降ってくる。
白くて……大きい……凧のような……男……
「オトモリ……」
「マドガラスか!?」
マッカチンとルルルは城下へ下った。
モトチカは脇差しを拾い、今度はアムサに向けた。
そして、城に常備してある喋育母を屋上から城下へ向けた。
「何しに来た!!マドガラス!!もうおまえには救えない!!この女のダイヤモンドはオレのもんだ!」
オトモリは装備していた春蹴を取り外した。
そして広場にも常備してあるスビーカーを取った。
そして……「アムサ……おまえに言わなければいけないことがある……」
アムサはそのまま聞いた。
無視されたモトチカは不服だった。
だがモトチカの国支配は確実だ。
もう怖いものなんかない。
「アムサ……お前は俺を守ると言ってくれた……だが俺はそれを断ったよな……覚えてるか!」
アムサはモトチカのスピーカーを奪い取った。
「覚えてます……全部覚えてます……」
オトモリはそれを聞き、再度口にスビーカーを当てた。
「その訳をおまえに話したい。なぜ俺があんなことを言ったのか……なぜ俺がバッテンブロウとの決着にこだわったのか……」
それは………………
「俺が本物のバッテンブロウだからだ……」
「え………………」
「……お前の兄や、ハロルの父、マコロの祖父を殺したのは……」
俺だ……
マイナス1871年……14歳のオトモリ、11歳のカナオレの兄弟は接吻国のフロンの町で剣術と柔術を学んでいた。
とくに兄のオトモリの才能はすごかった。
素手でも剣でも才能の塊。
大人たちどころか、10人がかかっても勝てなかった。
それに憧れるカナオレ。
カナオレも充分強かったがオトモリには敵わない。
「カナオレ、もっと素早く剣を振らないと戦場でやられてしまうぞ。」
「兄さんみたいにできないよ!僕は戦場へは行かないからいいんだよ。」
兄弟はお互いに競い合いながら逞しく育っていった。
3年後のマイナス1874年、18歳になったオトモリは一つの疑問を思い付いた。
やはり刀をもたねば剣術を学んだ意味がない。
オトモリは兵士となり、わずか3ヵ月で国の中でも10人しか選ばれない上級兵士となった。
そしてその上級兵士たちをも破りついには国で一番の兵士(天を抜く者)という称号をもらう。
父、モカボロはさえないお面職人だった。
母、クレソンは父と一緒に面屋を手伝っていた。
家は貧しかったがカナオレはそんな父と母が大好きだった。
剣術や柔術にみきりをつけ、カナオレは父へ弟子入りし、その技術を学んだ。
そしてマイナス1875年、才能溢れた筈のオトモリは戦争への不参加を言い渡される。
「軍隊長!なぜですか!僕は天を抜く者の地位を手に入れたのに。なぜ戦わせてくれないのですか!」
その理由は明らかだった。
兵士は切った人間の数で銭をもらう。
オトモリがいたら皆が損してしまう。
わずか一年ばかりの新卒に周りの目は厳しかった。
そしてオトモリは軍を辞める。
軍では自分の腕は評価されないからだ。
ただその腕を評価してくれるものもいた。
巷の将軍たちだ。軍には頼めないような仕事もやってくれる賞金稼ぎとしてだ。
だがオトモリの顔は売れ過ぎていた。
一度自分を捨てなければならない。
家に帰ると、父と母、カナオレが出迎えてくれた。
軍を辞めたことはいいだせなかった。だが皆は迎えてくれた。
オトモリはカナオレの初めて作ったお面を前善人された。
「カナオレ……これ兄さんにくれるのかい」
「なかなかうまくいかなくて。もっときれいに作れるはずだったんだけどなぁ」
カナオレのお面の名前は白風。
ブロウ……ブロウ……武の狼……武狼。
髪をザンバラに切り、言葉使いも汚くした。汚れた袴を吐き武狼のなのごとし、オオカミの入れ墨を胸に彫った。
これで俺の顔は誰も知らない。
とどめにカナオレのくれた仮面をつけた。
天を抜く者……武狼……
「今日から俺は抜天武狼だ。」
バッテンブロウとなのり、名だたる悪党を切った。
さすがに初めは人の死ぬのを直面できなかった。
だが、悪人に殺された人の家族が涙を流して喜んでいた。
それから悪人の死に無抵抗となった。
だがバッテンブロウがつけていた仮面が問題が起きる。
もちろんそれは知るよしもなかった。
マイナス1876年
休集の民がこの国からの独立を打ち立てた。
かつてのこの国の文化を取り戻そうとたちあがったのだ。
しかし、この国は大昔に時代を巻き戻すことをし始めた。
そんな休集の民の独立を許す筈がない。
不要支配で動いていたため、その戦争に一人の命を奪うにつき20銭(1000円程)ということで契約をした。
……その裏で悲惨なことが起きていた……それを俺は何も知らなかった……
戦争の名は倭人の乱と呼ばれた。
ワンドとは魔法の杖のこと。
もし魔法の杖を見つけたらどうするかという例え話から始まった戦争だからだ。
休集は(使い研究する)、その他は(捨てる、焼く)という話から。
興味はなかったのだが私は国軍についた。
相手の休集軍はモリブン総隊長ひきいる10万の軍。
もちろん休集にはそこまで兵士はいない。
大半が徴兵によるかき集めだった。
なお、国軍は20万とその倍はおり、ほとんどが本物の軍隊だった。
これではまずい……俺の成果が上げられない……
俺は合えてスパイをかってでて誤情報を国軍に流した。
相手が攻めてきてないと嘘をつく……敵は間近なのに……
初めはファクトラという大きな町だった。
電気やテレビーやビルというものが揃っていた。
だが全て(進化しすぎたもの)として、国軍に破壊された。
ここでは8000人の成果を上げた。
剣も握ったことのないような男たちの立ち回りにまるで満足できなかった。ただモットウとして、逃げるものは追わない。
だから逃げさえすれば殺すことはない。
次は、森の中だった……フワリの森と言ったかな……
ここで倒した兵士は5000人だった。
素人の兵隊にしては命知らずに向かってくるものばかりだ。
とくに印象に残った男がいた。
体が分裂する男。
暗い森の戦い方を理解しており、気の影から同じ顔が別々に襲ってくる。
だが、そのタネはただの同じ動きをするだけの双子の兄弟だった。
それさえわかれば何てことはなかった。
男の一人は向かってきたにも関わらず泣いていた。
「……このまま死にたくない……子供に会いたい……父になれたのに……アムサ……」
……ではなぜ向かってきたのか……逃げればよかったのに……
男たちは間もなく息を引き取った。
自分が殺した相手には白い牛の毛をいれることにしている。
それで最後に数を数え給与をもらう仕組みだ。
その男たちのポケットに毛をいれようとした……なにかが入っている……
「御守りだ……」
ソスク兄さん、ハナメ兄さん必ず無事に帰ってきてください……私はこの涙でも頑張ります。だから……逃げてもいいから帰ってきて。
この涙……意味がわからない。
ソスクとハナメ……君たちに恨みはないんだ……だが俺は……殺し合いの中でしか輝けないのだ。
沢山の戦いをして、気がついたら休集軍の人数は2万人ほどになっていた。
モリブン総隊長は向かってきたのが一人とわかると、「仮面の男!俺をなめるなよ!」と一人でかかってきた。
「あんた、もう負けはわかってるはずだ。なぜ降伏しないのだ。」
その問いにモリブンは笑っていた。
「我は義の男。恩は必ず返し大義を果たす!我の前へ百人向かおうが千人向かってこよう絶対に逃げん!だが一人相手にはこの軍勢で戦うようなことはせん!そんなことするぐらいなら腹を切り死を選ぶ!」
なかなか……男の中の男だ……
だが話はそれだけ……俺の抜いた刀は腹と首を切り落とした……
大将の首は落とされた……これで国軍の勝利。
「刀を下ろせ!!無駄な死は生みたくない!!俺はバッテンブロウ!!この勝負は俺の勝ちだ!!」
休集軍の刀は降りた。
全部で何人倒したのか……途中から数えてなかった……
「まってくれ……」
撤退する休集軍の中に、一人だけこちらへ向かう影。
それは……
「その仮面は……ブロウ……」
「……カナオレ?」
なぜここに……それはお互いに思っていた……
「……何やってるんだよ兄さん!なぜそんな格好で……ブロウまで、つけて……」
「おまえこそ……なぜ休集軍に?仮面職人はどうした!?」
カナオレは睨み付けた。
「……何も知らないんだな……父と母は殺されたんだ!俺は職人をやめた……そして休集にわたり兵隊になった……同じ軍だったら兄さんに迷惑かけると思ってね……」
あまりの衝撃的な言葉に声がでなかった。
「ある日、仮面をつけた賞金稼に相棒がやられたと、殺し屋がうちへきた。あの仮面はここで作ったのだろうと……」
もちろん……
「いいがかりだと追い払ったが、俺は刀を振り込まれた……それを父と母が……かばってくれた」
だが……
「あの殺し屋が言ったことは本当だったんだな……仮面の賞金稼ぎは、兄ちゃんだったんだな!」
もう隠せないか……
「そうだ。父と母のことは悪かった。だがこれが俺の仕事なんだ。俺は兵隊にはならなかった。俺にはこれしかないんだ……」
カナオレは剣を抜いた。
「……兄さん、俺は強くて正義感のあるあんたに憧れたんだ……憧れたのはバッテンブロウなんかじゃない!!」
カナオレの剣は振りかぶられた。
よけるつもりだったが、カナオレとは幾度となく対戦した。
カナオレは俺の戦いかたを知っている。
だが……
俺は剣を抜き、カナオレの胸を切った……
だが血の繋がった兄弟……殺すことはできなかった。
「……なぜ殺さない……」
「わからん。きまぐれだ。」
「今殺さなければ……俺はあんたを殺しにいくぞ……」
「かまわない……そんときは俺を止めてくれ」
カナオレはオトモリの胸へ彫られたオオカミの入れ墨をみた。
その狼はカナオレを恨むように睨み付けていた……
マイナス1878年
バッテンブロウは止まろうにも止まれなかった……
大量の銭を得ても、名前のせいで依頼が止まらない。
そして悪夢の依頼が入る。
黒妖精と呼ばれる軍人殺しの捕獲依頼。
俺はパピヨンを追い詰めた。
簡単な依頼だった。
黒頭巾を被るその姿。
最後に顔を拝見した。
「子供……」
その姿は12、3歳ほどの少女だった。
「なぜこんなことを……」
「あんたを殺すためさ……」
どういうことだ!?
「おまえは倭人の乱で私の家族を殺したんだ」
「休集軍か!?」
「違う……国軍さ。だがおまえは総隊長に偽りの報告をして敵と戦っただろう……」
なぜそれを……
「総隊長はお前を雇っていた男とグルだったのさ。貴様が何人殺せるかを見ていたんだ。それを怪しいと感じた父と叔父は、お前のお遊びの邪魔になると……」
そして……悲劇は起こった……
「総隊長に殺されたのさ……全て総隊長が、教えてくれた。だから私はあの時おまえのお遊びに付き合った総隊長とそれを知っていた部下を……殺したんだ」
信じられない……そんなことがあったのか……
小さいときに剣術を始めて、その才能で全てを勝ち取った。
だが大人になり周りは認めてくれなかった。
そしてこの仕事につき認められた……はずだった。
俺はどこで外れてしまったんだ……
こんなはずではなかった……
誰もに喜ばれているはずだった……
「パピヨン……すまなかった……だがオレを殺すな。もう罪を重ねてはいけない」
「……じゃあどうするんだ?」
「こうするんだ……」
刀を抜き、自分へ突きつけた。
自分の命や断ち、父と母に謝ろう。
その時、なにかが弾けたような撃音が聞こえる。
後ろを振り替えると総隊長の部下がピストルをこちらに向けていた。
パピヨンの胸へめがけて……
パピヨンは即死だった。
苦しまなくてすんだのが幸いだった……
だが最後の言葉も残せぬまま……
……気がつくと俺はその兵隊の首を真っ二つに切っていた……始めて法に触れる人斬りをおこなった……
気がつけばバッテンブロウという名前になってから色んなやつらから殺されかけた。
同業者からも……悪党からも……
パピヨンを土に埋め、パピヨンの刀を破壊した。
そして自分の刀も破壊した。
剣をしらなければよかった……
もっと平和に生きられたかもしれないのに……
今度はバッテンブロウを捨てて生活をしていくことを決めた。
仮面を壊し、袴を捨てて、胸のオオカミは見えないように隠した。
髪形も変えて生きていこうとした。
だが、なんの仕事をしても……殺しの記憶は焼き付いてきた……人を見るたびに……いい人たちに触れるたびに……俺の殺してきた人間が頭に浮かんだ……
仕事も続かずとある町で登った山。
俺は命を絶とうとしていた。
だが、そこにはクラガラという男が銀を堀りに来ていた。
そいつをよけるように場所を代えたが、そいつはすべてについてきた。
「あんたわざと着いてきてるだろ!」
「てめえこそ!借金取りじゃねえのか!」
俺たちはいがみ合った。だが話し合ううちに共通点も多かった。
「おまえ、バッテンブロウだったのか……」
「ああ……だけどここで終わりだ……」
「俺は狂烏だ……」
なんだそりゃ!?
かつて賞金稼ぎだったころ、マドガラスとカッコつけて名前を名乗ったが腕が悪すぎて誰も依頼しなくなったらしい。
だから副業でやってみた銀細工をやったらそこそこ流行りだし、そのまま賞金稼ぎはやめたそうだ。
「だが今はこのとおり……」
クラガラは袋に入ったものを見せた。
人つまみほどの銀。
「その時代も終わりかけだ。あんたよかったらうちで技術を学ばねえか……銭はねえけど……めしなら食わしてやるよ。」
「バッテンブロウとばれたらあんたに迷惑かけるかもしれねえ。」
「心配いらねえ。うちにはインサイダーっつうすげえ罠があるからよ……」
「これが真実だ。お前を騙す気はなかったんだ……だがアムサが兄を慕っていた話を聞いて……話せなくなった……」
アムサは目の前が真っ黒だった。
全てが見えなくなってしまいそうだった。
「だから最後に聞いてくれ!!」
オトモリはスピーカーに吠えた。
「俺はマイナスを歩き、マイナスを走ってる!アムサがいなければ先を見れなっただろう!だが今捕まっているお前を助けるために命を捧げられるなら捧げたい!俺は……」
俺は……
「お前のことが(好き)なんだ……お前の兄達に怒られようが……お前を守るためならもう一度、刀を抜いてやる!!」
アムサの目には涙が浮かんでいた。
大量の雫が零れ落ちる……溢れだしてくる……
「私も……例え兄や、ハロルの父に恨まれても……あなたは優しく強い人だと主張します……」
…………
「……わたしもあなたが、(好き)です。オトモりと一緒に……歩いていきたい……」
塞き止められたものはなくなり、今までダイヤに塞がれたものまで全て流れてきた。
「え……なぜ涙が流れるのだ……ダイヤモンドはどうした……」
モトチカや配下たちはアムサの涙に驚いた。
だがそれと同時に兵士たちに武器を下ろした。
「……ダイヤモンドも手に入らず、目の前にはバッテンブロウがいる……戦う意味も力もない……」
だがマッカチンやルルルには諦めが付かなかった。
バッテンブロウの正体を聞いて、モトチカがナカマルを殺すまではよかった。
俺たちは一生優雅にくらすんだ……
マッカチンたちの怒りは頂点に達した。
「ちくしょー!!」
マッカチンとルルルは武器を取りオトモリヘ向かっていった。
その瞬間オトモリは避けながら地面を転がり拾った刀を二本持ち、マッカチンの剣、ルルルのピストルを峰で弾いた。
二人は武器を失い拳で向かっていく。
そしてオトモリも、刀を落とし、その両拳は二人な鼻をとらえた。そして引っ張られるほど後ろへ倒れた。
「くそ!こんなことならナカマルについてた方がましだったぜ!」
「そうだマッカチン」
マッカチンとルルルは門を抜け闇はと消えていった。
「貴様ら!!どこへいくんじゃ!!戻ってこい!!」
前へのめりすぎたのか、モトチカは屋上から滑り落ち燃え盛る大炎の中へ消えていった。
そして……その炎は城へと移り始めた。
ヤバい!!、
その時オトモリの目にうつるパラシュートの群れ……
それはダサカシ賊の面々とモモ、それに包帯をつけたセパモンだった。
巨大な白い塊のようなものが城の上を飛んだときだった!
(開くぞ~!) ※シルベスタがジャンボジェットでやって来た※
白い塊のようなものの下部が開き大量の水が降ってきた。
その水は炎を消し去った。ただその大量の水のせいで辺り一面が池のようになってしまう。
「モモが重たすぎるぞ~落ちる~!」
下の水の中にザパザパ飛び込むダサカシ賊。
アムサはセパモンが生きていたことをよろこんでいた。
たがその際に大きな揺れを感じた。
「アムサ!城が崩れる!飛び込め!」
アムサは走りだし、右手にセパモンの足を持ち大ジャンプをした…………
水の中……
あ……私……うまく泳げなかった……
(………アムサ)
「アムサ!手に捕まれ!」
オトモリの伸ばした手は水中なのに温かかった。
水の中を出た二人を出迎えるモモ。
鼻を揺らしながら水をかける。
オトモリとアムサは背中に乗った。
モモの背中もとても温かかいものだった。