好きです。
オトモリ、アムサ、モヒカンの一味は休集の地を踏んだ。
最初についたのはファクトラという町。
ウォングラやテンシュンを隣に据えた大都市だ。
ここは休集一番の町にして、手入電と呼ばれる新しい娯楽が栄えている。
電磁の力を使い、世の中の情報を流したり、人を笑わせる刺華笑茶と呼ばれるものなどを流している。
「ここは……休集?」
アムサの声は驚きのものだった。
ここから僅かな場所にシナノ族の村があるという。
村から出たことがないアムサにとっては近くにこのような栄える町があることを知らなかったのだ。
「アムサ……ここで腹ごしらえをしよう。そのあとすぐ出発だ……」
オトモリの声に覇気はなかった。
その理由をアムサは知っていた。
昨日の夜。
休集の手前、モンジラの森で休んだ。
テントを張り焚き火の前にオトモリとアムサはすわっていた。
「オトモリは……私が守る」
アムサはオトモリをとても大切に思っていた。
ハロルや死んだ兄に言われた言葉……
(ドキドキしたらその思いを伝えなければ……)
「オトモリ……私は……あなたの顔を見たり……あなたの声を聞いたりすると……すごくドキドキします」
アムサは吐きそうだった。
これをしなければ後悔する……後悔はしたくない。
「……アムサ……」
はい……返事の声が裏返る……
「俺はおまえを守れない……俺は過去を生きている…口先だけの約束はできない………生きてアムサに会う自信はない……」
へ……!?それはもしかして……
「おそらく……バッテンブロウは俺を追ってくる……奴は俺を狙っている……勝てるかどうかわからない……でも戦わなければいけない……」
「なぜ!?戦いを生まないために武器を狩ってきたんではないの?自分を否定するの!?」
「……そう思ってた……アムサを守るためにナグラコウを抜いたとき……ハロルを助けるためにナタを持ったとき……気付いた……」
「…………」
「……武器をなくしても戦いはなくならない……守るために新たな武器を生み出し、そしてそれが今度は悪人に渡る……俺は……ついにこのときがきてしまった……」
「…………」
「バッテンブロウは俺の弟だ………倭人の乱であいつの目を見たとき……俺があいつをバケモノにしたとわかったんだ……だから……」
だから……
「俺の手で葬むる。それで全てが終わる。」
ファクトラの富顔雷男は有名らしいがアムサは味がしなかった。
そんな様子をみたオトモリは口を開く。
「知ってるか?今生きてる歴史は本当は2030年で終わったんだ。機能が発達しすぎてな……」
「しらない……」
「2030年を0年とし新たな歴史が刻まれた。今度は進化し過ぎた文化をなくし古いものを再度取り入れようとマイナスの歴史が始まった。」
「聞いてない……」
「昔は飛行機や、テレビ、電話というものがあったらしい。だが少しずつ退化していき飛行船、手入電となり、電話は完全に消えた……人は進化を止めて過去にこだわり出したんだ……」
「もうしゃべらないでよ……」
「俺の人生もマイナスなんだ。この歴史と同じように……リゾットだって、ブイヤベースだってこのトンコツラーメンだって本当の語源は誰もしらないんだ。」
もう黙ってよ!!
「……私は語源も歴史も興味ない!!興味があるのはオトモリ!あなたなの!」
この気持ちを一言にするなら……
「あなたが(好き)……こんな言葉でいいのかわからないけど……あなたが好き。」
オトモリは笑った。心から笑った。
そう……この笑顔も私が(好き)なもの……
「……俺もアムサが(好き)だ……俺もおまえの笑顔を見ていたい……例え不幸になっても……戦争がおきても……おまえを守りたい……好きだからな」
ファクトラ放送局はトンコツラーメンが有名な怒嫁という店に来ていた。
だが放送されたのはトンコツラーメンではなく一組の男女の(好き)という言葉だった。
その日の夜、テレビーを見る人達はその光景をみた。
食べ物やペット、趣味にしか本来使われない言葉。
(好き)
愛を伝える言葉……好き……いい言葉だ。
オトモリとアムサは言葉の歴史を作った。
ファクトラの町もずいぶん変わった……
あの廃れた町が……ずいぶんと復興したもんだ……
バッテンブロウはファクトラの町に馬を走らせていた。
ふと立ち止まると丘昼と呼ばれる大きな建物についた既笑から映像が流れる。
その映像にはオトモリとアムサが愛を伝えあっている……(好き)と伝えあっている……周囲の人々は熱狂している。
あちこちの恋人たちがその言葉を真似て伝えあっている。
「兄さん……あんたはすごいなぁ……なんでも俺の前を行く……俺もあんたが(好き)だったよ……」
バッテンブロウは馬を走らせた。
ナスダの飛行船乗場。
マッカチンとルルルはめぼしい飛行船を選んでいた。
「ルルル、知ってるか。昔は飛行機と呼ばれるものが飛んでいて、エアポートというところに止まっていたんだ。」
「エアポートかい?マッカチン」
「語源は(え?あほ?うそ?)かららしいが……」
「うそくさいなマッカチン」
「そこでその飛行機を奪うやつをテロリストと呼び奪われることをハイジャックと呼んだそうだ」
「語源は(手の色、見せて)と(拝借)あたりかマッカチン」
「……おまえ天才だな」
マッカチンとルルルはめぼしい飛行船を見つけた。
15時30分発のブラクニ行きだ。
乗客を刀で脅し全員下ろした。
だがルルルはその中で気に入った乗客たちが一組いた。
「あの奇抜な踊子綺麗だな……マッカチン」
「あれはブラクニの三婆だったかな。尻をふって踊るらしいぞ。ヒノコジャネイノの(ヒノのカニバリバリ)は有名だとよ。」
「カニバリバリか……この仕事終わったら…一緒にいこうぜマッカチン」
「興味ねーや。だいたい四角車落が必要なんだぜ」
「パス……まあいいや……出発だマッカチン」
目的地をシナノ村の山、ユノヒ山を目指す。
前日の夜、マッカチンはバッテンブロウに恐る恐る聞いた。
「バッテンブロウ……これから俺たちは別行動を取りたいんだが」
「なにをするんだ」
「おめえの目的はマドガラスだよな。俺たちはアムサのダイヤさえ手にはいればいい。銭が欲しければ別だが……」
「銭なぞいるか。しかしよくわかったな……となると……モヒカンもお前らとつるんでるのか?」
「そうだ。あいつは今マドガラス達と一緒にいる。もちろん裏切るためだ。あいつはそこそこ槍の腕があるからな。」
「……バカを抜かせ。モヒカンごときがあの男を倒せるものか。やつは何か弱味でも握られたのだろう……それであの男についていかざるを得なくなった。」
「……そうか、それで……」
マッカチンはサースの暗無人でのモヒカンの様子に納得した。
あいつは奴の仲間になったのだ。
「まあいいや。俺はルルルと一緒に飛行船を盗む。それであんたがマドガラスと戦ってるときにアムサを捕縛してナカマルとモトチカ様へ引き渡す。」
「……好きにしろ……ただおまえらにナカマルへ伝えてほしいことがある……」
ファクトラから2つ山を越えた辺りだった。
モヒカンたちは髪型が奇抜すぎて村人がびっくりしてしまうという理由で山の下へ待機している。
オトモリは不思議な森へたどり着く。
そこには先も見えないような霧がはっていた。
静かな森で動物たちもいない……
「ここは……フワリの森だ。」
フワリの森……ここがあの……
「倭人の乱で木が燃えてしまったが別の森から植え替えた新生の森だ。猪なども少しずつ増えてきていたが……私がさらわれたときに殺された。」
オトモリは動物たちの腐ってしまった死体を見つけた。
「ここが……私がさらわれたところだ。墓を立ててやることもできなかった……」
アムサは悔しくてたまらなかった。
でもどうせ出てくるのは……
「アムサ!おまえ……」
アムサの頬を伝ったのは……涙だった。
「これが……これが涙というものか……」
手で流れる涙の感触を確かめる。
「アムサ……きっとこの森と動物たちが涙を流してくれたんだ……これでもう追われることはないよ……」
動物たちの墓を立て、供養した。
それからまた歩き出すと白い大きな鳥居が見える。
「あそこがシナノ族の村だ。シキタリや掟は厳しいがとてもいい村だ」
門には老人と村長夫婦がいる。
「父上!母上!オンカムロ!」
「アムサ!!」
アムサは村長である父に抱きついた。
「探そうと思った……だが掟をやぶり探すことができなかった……」
・村を出たものは全て逃げ出したものとする。
・成人式や狩へ向かう以外は外へ出ることを禁ず
・逃げ出したものを追うことは例え家族でも禁ず
これがシナノ村の掟だった。
オトモリは掟にしたがい三回鳥居に向い頭和や下げると中へはいることができた。
すると出迎えたおじいさんが挨拶をしてる。
「こんにちはオンカムロさん」
アムサはそれを聞いて笑っていた。
「オトモリ、オンカムロはただいまという意味よ。その人は村会長。この村の責任者よ。」
……うわ恥ずかしっ……
シナノ村は小さくそこには沢山の木や藁で出来た家があった。
他にも紺美国と呼ばれる一日中開いている店もあった。
柔夢、八七、などの見たこともない食べ物が置いてある。
「ん?これはなんて食べ物だ?」
「それはホットケーキよ」
「ずいぶん白いな……」
「………………」
オトモリとアムサはイオルマンセと呼ばれる大きな鍋を囲む祭りへ招待された。
そこには猪のほかにバナナ、グミの実、クコノ葉などが入っている。
とてもおいしい。
この味は……
「好きだ」
アムサの部屋へ戻った。
男だけとなり、アムサの父はオトモリに頭を下げた。
「アムサから聞いた。あなたがアムサを助けここまで連れてきてくれたんだろ。礼をする」
「僕は何もしていません。彼女がいたから僕も頑張れた。そう思っています。」
アムサの父は一つの飾られた絵画を持ってきた。
「アムサは兄が二人いた……だが倭人の乱で死んだ。これは彼女が描いた絵だ。アムサは男っぽいが芸術の才能もあってね。」
その絵はまるで生き写しのようだった。
そこには小さいアムサと二人の兄が並んでいた。
だが何かがオトモリの中で引っ掛かる……
この顔に見覚えがある……
「兄の名は、ソスクとハナメ、双子だった。ソスクには子供もいて……アムサはとても二人になついていたんだよ……」
嘘だろ……これは運命のいたずらか……なぜ俺をここへ連れてきたんだ……ソスク……ハナメ……
オトモリは絵を返し立ち上がった。
「私はこの村を出ます。アムサによろしくとお伝えください。」
おまえたちだったのか……なぜ……俺なんだ……
「オトモリさん、まだゆっくりとしていってください……」
「村長……この村に(強く優しいものはいない)という言葉がありますね……」
「……サーダナムービランバのことかね」
「かつて旅の中でアムサは僕に、その言葉は僕には当てはまらないと言いました……」
だが俺は……
「強くもなければ……優しくもない……私は……罪人です。」
(このまま死にたくない……やっと父になれたのに……子供に会いたい……父ちゃん……母ちゃん……アムサ……)
アムサは部屋から外を覗いていた。
そこからはとてもきれいなフワリの森が見える。
ふと涙が流れる……もうダイヤは落ちてこない。
このまま……オトモリはここを、離れてしまうのか…
バッテンブロウと戦いへ行ってしまうのか……
外を覗く透けた板…………昔からあるのに名前をしらない……
(俺はマイナスを生きてる……)
この透けた板もきっと2030年には名前があった……
ホットケーキだって語源があったはず……
小さいものにでも……
「……決めた……この板を今日からマドガラスと呼ぼう……」
シナノ村があるユノヒ山の麓。
モヒカン率いるダサカシ賊は猪を狩り鍋を炊いていた。
「さあ食うぞ!」
男たちは腹ペコだと鍋をつついた。
そこに見覚えのある男が現れた。
「バッテンブロウ……」
「よう……モヒカン」
フラカマ賊は箸を棄て、武器を抜いた。
「……バッテンブロウ……裏切りの覚悟はできている。だが部下は見逃してくれ……殺すのは俺だけでいいはずだ」
「……バカタレ。てめえに恨みはねえんだよ。俺は殺し屋じゃねえんだ」
その反応はモヒカンにとって予想外なものだった。
「……モヒカン……おまえオトモリと仲良くなったみたいだな……」
モヒカンは首をふった。
「仲良くなったんじゃねえ。オトモリさんは俺の恩人なんだ。恩を返すまでよ……」
バッテンブロウは投げられた箸を拾いあげ仮面を外し鍋の肉をつついた。
「……昔、ここで戦争があった。こうやって鍋を食って飢えをしのいだよ。」
その顔に誰も見覚えがなかったが、伝説のバッテンブロウがこの男だったとは。
鬼のような顔をしていると思っていたが予想が外れた。
むしろ人に食べ物を分け与える優しい顔つきだった。
「なあ……モヒカン……」
「なんだ……?」
「おまえを殺したら……オトモリは本気で戦ってくれるかなぁ……」
その表情は鬼と化した……
「オトモリは?」
アムサはオトモリを探していた。
イオルマンセの席には既に姿はなかった。
「……おまえによろしくと伝え……村を離れたよ。」
そんな……
アムサはその後を追うように走り抜けた。
「アムサ!外へいってはならん!掟に背くのか!」
アムサは立ち止まり、村長である父と村会長へ伝えた。
「今オトモリと離れたら後悔する……私は掟に背いてでも……オトモリについていく……」
オトモリが……
「彼を(愛してる)」
村会長は涙を流した。
その言葉はかつてのこの国で恋人や夫婦同士で言われた言葉だった。
そして自らも知らぬの信濃神守の声が聞こえた……
……かつて過去を振り返った……この国を……また若者が……変えようとしている……
「行け!アムサ!絶対に振り替えるな!」
「村会長!?」
「古き掟に縛られるな!かつての自由を取り戻すのだ!
」
その声にアムサは村を抜けた。
アムサは村を抜け、しばらく走った。
だがそこにはオトモリではなく、謎の男が二人……
「誰だ!?そこを通せ!」
「それはできねえな。お前の体をモトチカ様へ渡すのだ。俺らはそれで一攫千金だ!取り押さえろルルル!」
こいつらはナカマルたちの手下だ。
だがすでに涙はダイヤではなくなった……
「……おまえたちの目的は果たせない。なぜなら……」
アムサは涙を流して見せた。
流れるのはダイヤではなかった……
「……話が違うなマッカチン……」
「ふん……関係あるか……こいつさえ渡せば一生優河に暮らして行けるんだ……」
マッカチンは隠し持った棍棒でアムサの延髄を叩いた。
土に体を落とすアムサ。
「早く飛行船へ持っていこう……戦争が起きるぞ。」
オトモリはフワリの森を抜けた。
これでいいんだ……これが一番幸せなんだ……
「情けない顔してるな……オトモリ……」
その声の先には……
「カナオレ…顔代欧米しただろ…」
オトモリは担いだ荷物を下ろした。
「…顔を変えなくたって仮面被るんだろ……どこかの怪人のように……」
「その昔、オぺ○座というところに怪人がいるという物語があったらしい。だが時代はそれを棄てた。過去にこだわったみたいだな。おまえのように……」
「そうだ……だから……もうやめないか……」
「ふぬけたな……オトモリ……俺はこんなところまで誰にも会わず来たと思うか!?」
……モヒカン……ダサカシ賊……
「……モヒカンは……」
「殺した」
オトモリの拳がカナオレの顔面に当たった。
「闘鐘だな……」
「かかってこい……カナオレ!!」
カナオレの二刀がオトモリの鉄の小手を切り裂いた。
刀を原料に作られた小手が意図も簡単に……
オトモリはカナオレの背後に回り込み攻撃を仕掛ける。
だが全ての読まれている……やはりこいつは……格が違う……
「情けねえ……そんなもんかオトモリ……それじゃあこの国は変えられねえよ。いくら武器を狩り続けてもな」
飛行船はあっという間に休集、接吻国、深呼国の上を過ぎた。
アムサは体を縛られサルグツワをされていた。
動き回るがまるでほどけない。
飛行船の外を見るとそこには……セパモンが付いてきている。
「んー……」
ルルルは外を眺めた。
「トンビが着いてきているぞ。視界不良で邪魔だなマッカチン」
「おまえの得意の飛捨竜で撃ち落とせ」
「まかせてよマッカチン」
アムサは動く限り体を動かした。
体が摩れても……傷だらけになっても……叫び続けた……
(セパモン……逃げなさい)
ピストルの撃音が鳴り響いた……
その後にセパモンの姿はなかった。
マッカチンは縛られたアムサの怒りに満ちた睨みを鼻で笑った。
「……トンビのことよりよ……今頃マドガラスとバッテンブロウは戦争中だぞ……おまえの愛するオトモリがなぁ~」
オトモリ……私が……守ると言ったのに……
カナオレの刀はオトモリの肩を掠める。
状況はカナオレが圧倒していた。
刀狩りとは名ばかりに……機動が読めない……
「……やはり所詮は剣士だ……刀をやろうか?オトモリ……」
オトモリは肩の傷に土を擦り付け服を破き止血をした。
「……そんなもんいるか……俺は武器狩だぞ……」
「……ほざけ。ならば愛する女が助けを求めたらどうする……それでも刀を抜かないか?」
カナオレが何を言っているのかはわからなかったが、アムサに何かあったのか……
「例えアムサの為でも……刀は抜かない! …おまえは素手で倒す!お前は俺のせいでバッテンブロウとなったのだからな……」
カナオレは上衣を脱いだ。
そこには無数の傷と胸に彫られたオオカミ……
「細工師なんかしたところで……おまえの運命が変わるとでも思ったか!!」
オトモリはその姿を見て、胸当てを外し同じく上衣を脱いだ。
そこに現れる一太刀も浴びていない体と胸に彫られたオオカミ……
「お前は俺のマネゴトなんだよ……俺の運命は……俺が変える!!行くぞカナオレ!!」
オトモリの両拳は無数にカナオレの体へと当てられた……
なぜだ……なぜ素手の男に……やはり……俺は……こいつの前には……出れないのか……
オトモリの拳はカナモリの二刀の刀を叩き壊した。
そして最後に拳が当たったのは……
「……おれの愛するオオカミに……ゲンコツくらわせやがったな……」
血を大量に吐いたカナモリはそのまま地へ落ちた。
「……くそ……おまえを殺すために……生きてきたのに……」
カナオレの叫びは空中へ放たれた。
オトモリはその声に涙を流し答えた……
「……俺は死ぬべきだった……おまえにやられて……だが……俺は……まだ死ねないんだ……」
オトモリは上衣を着た。
ボロボロの体で荷物を背負い、山を降りようとした。
「どこへ行く……」
「山を降りるんだ……」
カナオレは動かない体で無理矢理に首を横に降った。
「そっちじゃねえ……アムサは……今……空の上だ」
どういうことだ……アムサに何をしたんだ……
「俺達がやりあってる間に……アムサは神祭へ連れていかれたんだ……マッカチンとルルルが……飛行船を盗んでな……」
それを聞き、空を見るがすでにその姿はない……
その時どこか遠くから声が聞こえた……
「オトモリさん……」
その姿は……死んだはずのモヒカンだった。
「カナオレ……」
カナオレは血を吐きながら声を出した。
「オトモリに本気になってもらいたくてな……やっぱり強かった……俺は父と……母に……会いに行くよ……」
……カナオレは息を引き取った。
動物たちの墓にその遺体を埋める。
「……モヒカン……ここからフラカマ城に最短で行く方法を教えろ……」