因縁と恩・In the past
ダサカシ賊の頭、隠神はバンガローで縛られた部下たちを見つけた。
「おい!おめえら、誰にやられた!?」
縄をほどかれた部下二人は残った力でモヒカンへ土下座をした。
「すいません!妙な男に乗ってきた馬を盗まれました!あの2頭を探そうとしたらいきなり蹴られたんです。おそらく逃げた2頭もやつが!」
妙な男……誰だ?
「エレファントに乗ってました!それしかわかりません」
エレファントは日本でもラソルタでしか手に入らない……神祭から来たとしたら……もしかして……
「妙な女もいなかったか?」
「いえ……女はいませんでしたが。」
あれ?勘違い?
オトモリとアムサはバンガローから山二つ離れたカルデンという町にいた。
ここでも放牧をされていたがラソルタに比べれば10で割ってもまだ多すぎるほどの規模だ。
そこの牧場主に4頭の馬を渡した。
「兄さん方、本当に4頭ももらっていいのか?」
「かまいません。僕らでは4頭を養うこともできないので。それにこいつもいますし。」
オトモリはモモの鼻をなでた。
「馬たちも喜んでます。ラソルタでは良いもの食べさして貰えず飼い主も変な頭で気持ち悪くて嫌だった……そう言ってます。」
アムサはセパモンから聞いたことを牧場主へ伝えた。
バッテンブロウは馬で神祭を抜けようとしていた。
その時謎の馬車に乗った男が呼び止めた。
「クレソンモカボロさん?」
その台詞に「配達か」と馬車から文を貰った。
この国には夕陽曲というものが数多く存在する。
あの配達人はその下につくものだ。
全国どこにいようが爺追伸という鳥が配達者を探してくれるらしい。
但し、男女の違い程しかわからず配達されるものは特徴的な格好をしなければいけない。
この仮面が役に立ったようだ。
「モヒカンからだな……」
内容は馬を4頭盗まれたことと、謎の男に部下が二人やられたと書いてある。
そしてその男に復讐すると…
「あいつらは弱いからな……マドガラスなら止めるんだが……まあその辺の男ならすぐ片付くだろ。」
「お頭、配達人に何言ってたんですか?」
モヒカンたちは馬を走らせながら、謎の男の足跡を追っていた。
「あークレソンモカボロのことか。バッテンブロウは有名人だからな。文を届ける際はその偽名を言えと言われてるんだ。」
「どういう意味ですか?」
「んなこと知るかよ。俺だって意味を聞いたら仮面越しに睨まれたんだよ!」
ダサカシ賊はそんなやり取りをしながら気が付くと小さな町へついていた。
「お頭、カルデンに着きました。ここは放牧の町なのでここにいるかも知れませんよ。」
「お前らくまなく探すんだぞ!」
モヒカンを中心にダサカシ賊は馬を降りた。
何百頭もいる馬に驚いてか、町人はごそごそと出てきた。だがそれを率いる男たちはなんとも気持ち悪い髪型だった。
「おい!ここに馬泥棒がいるだろ!馬はどうでもいいが盗んだ男に用がある!」
町民はおまえの方が馬泥棒みたいだと思いながらも口をつぐんだ。
だがその声に一人の牧場主は妙な不安を感じた。
「……馬泥棒だと……まさか……」
「なんだおっさん知ってるのか!?」
モヒカンの凄みに負け、口を開いてしまった。
「奴ならここを少し前に出ました。馬はやつらが持っていきましたよ!」
その声にモヒカンは牧場主の指差した方向へ馬を再度走らせた。
「本当にこれでいいのかね…アムサさん…」
「わかりません。オトモリはあの人と知り合いみたいですよ。」
30分前。カルデンで牧場主へ馬を渡したオトモリとアムサ。
「アムサ、お願いがあるんだが……」
アムサは黙って聞いた。
「おそらくやつらはここに来る。だから俺がやつらを倒す。」
「どういうこと?」
「牧場主には、演技をしてもらうよう頼んでくれ。俺はここから2km離れた所で奴等が来るのを待ってる。」
「私はどうするの?」
「ここにしばらくいてくれ。あの髪型……おそらくやつらの長は俺のよく知る男だ。」
大量の馬が走ってくる足音が聞こえる。
オトモリはモモの背を降り、体に防具を取り付け始めた。
もちろん仮面も。
「おい!誰かいるぞ!エレファントだ!」
やってきたのはモヒカンたち。そしてモヒカンもその姿をみる。
「貴様はマドガラス!!馬泥棒はてめえか!?」
「馬泥棒はてめえだろ。100頭も買いやがって。まあお陰でモモと知り合えたけどな!」
モヒカンは馬を降りた。辺りを見渡すがその目的の姿はない。
「おまえらの目的は馬じゃなくてアムサだろう。残念ながら先に進んだよ。」
モヒカンは巨大な槍を取り出した。
そしてそれをマドガラスへ突きつけた。
「貴様は俺が殺す。おまえら手ぇ出すな。」
やはりな……こいつはこういう男だ。
「モヒカン……お前は義理や筋を重んじる男だ。俺もよく知ってるよ。」
「何が言いたいんだ!」
「もし俺が勝ったらバッテンブロウではなく俺につけ。そして、俺たちを無事休集へ送り届けろ。」
モヒカンは「そんなことか……」と笑い始めた。
「俺は負けねえ。幾度とてめえには武器を盗まれたが全て俺が油断したからだ。あれから修行したのさ」
「おまえは力よりも格好を重視することがモットーなんだろ。約束を守れるのか?」
「当たり前だ!!貴様なんぞに負けるか!」
モヒカンの槍はオトモリの首めがけてとんでくる。
オトモリは武具でガードした。
「……腕あげたなモヒカン。今のはよけれなかった」
「ほざけ!」
モヒカンは次々にオトモリへ攻撃をしかけた。
周りのギャラリーは「やっちまえ!」とモヒカンへ声援を送る。
だがその槍は一つもオトモリヘ当たることはなくついに……
「だがまだまだだなあ、ヨシオ……」
モヒカンはその名前に反応し、油断したときに槍を破壊される。
「まだやるか?モヒカン。」
顔の前に鉄甲の拳を突きつけられたモヒカンは折れた槍を下ろした。
「……俺の敗けだ。」
「じゃあ約束だな。俺の仲間になれ」
「……ふざけんな。やっちまえ!おまえら!」
ダサカシ賊はその声に一気に武器を抜き、オトモリへ向かっていった。
その様子を見たオトモリは仮面を外した。
その顔は……
「おまえらやめろ!!」
ダサカシ賊は馬へ戻る。
モヒカンはオトモリを連れ、部下たちの目につかない所へ隠れた。
「……オトモリの兄さん、どういうことですか?」
「おめえが約束を破ったからだろ。」
「オトモリ兄がなんでマドガラスの格好を?」
モヒカン自分の髪を手持ちの水筒で整えた。
どうやら失礼な髪型だと思ったんだろう。
「なぜ兄さんが?色々聞きたいことはありますけど……」
その考えはくみ取った。
「俺が本物のマドガラスだ。てめえの武器を今まで盗んだのも俺だ。そしてアムサを連れて逃げているのも俺だ。」
「そうだったんですか……じゃあ、細工屋ってのは……」
「昼の顔だ。おまえが忍び込んだ家の主だよ。時又ヨシオくんよ。」
時又ヨシオ……それはモヒカンの本名だ。
5年前にコソ泥集団にいたヨシオはまるで仕事が出
来なかった。力もなく上のものにはよく殴られた。
あるとき忍び込んだ家に入ったとき、いきなり床が
開き閉じ込められてしまった。
しばらくすると一筋の光が差し込んだ。
「……クラガラ師匠、泥棒がインサイダーに捕まってますよ。どうします?」
「ずっと閉じ込めとけ。」
「そりゃ、可愛そうだな。ここは助けてやりましょう。」
「好きにしろ。」
ヨシオはその家の主、クラガラと弟子のオトモリにに助けられた。
「助けていただいて有り難うございます。でもうちの集団は失敗は許さないところなんで、いっそこのまま殺してくれ。」
「その集団てのはこれか?」
クラガラが出したのは真酸紙だった。
そこには〈ナミシロ団御用!〉と書かれた文字。
「ナミシロ団は捕まった?……やった!解放だ!」
かつてある盗賊のシタッパだったとき仲間の裏切りでナミシロ団へ売られたことを思い出す。
盗賊はしがないコソ泥へと落ちた。
そこでは雑用ばかりで殴られ蹴られの生活だった。
「クラガラさん、オトモリさん助けていただいた恩は忘れません。私は根っからの盗人ですから今後この生活からは抜け出せないでしょう。ですが正義の盗賊となり、いつかお二人を助けます。」
モヒカンことヨシオは5年前のその言葉を思い出していた。
「オトモリ兄さん、じゃあナミシロ団を潰したのは……」
「俺だ。だがお前に恩を思わせるわけじゃない。クラガラ師匠の友達が金を盗まれて困っていたからな。」
モヒカンは無礼をわびた。
「部下たちの手前、オトモリ兄と呼ぶことはできません。オトモリさん、恩をお返しします。」
「さっき裏切ったくせに」
「あれは……マドガラスに武器を盗まれたことがあるからですよ。兄さんと知ってればそんなことしません。」
モヒカンはたじたじになった。
ただ一つ気になることがある。
「マドガラスが出てきたのは最近ですよね?5年前は違った。なぜ武器狩りをしているんです。」
モヒカンの質問にオトモリは答えにくそうに思えた。
「言いたくないなら答えなくても……」
「お前と出会った2年後……クラガラ師匠は殺された……殺したのは盗賊だった。取っ捕まえたがその盗賊は……倭人の乱で親を殺された男だった。」
モヒカンはその言葉に驚いた。
「バッテンブロウに殺されたのか!?」
オトモリは首を下げた。
「これ以上、倭人の乱とバッテンブロウの犠牲者を出したくなかった。その気持ちを押さえ込めなかった。だから武器を狩り始めたんだ。」
カルデンの町でオトモリを待つアムサ。
本当にダサカシ賊を仲間にできるのか。
アムサは心配だった。
するとオトモリとともに大量の馬がやってきた。
「アムサ、心配かけたな。」
その姿にまた涙腺が緩むアムサ。
アムサは町人にばれないよう顔に袋を被せた。
「町人の方々。この馬を貰って頂けませんか。盗んだものではありませんのでご心配なく。」
半分嘘で半分本当だ。
カルデンの人達は喜んだ。
昔、倭人の乱で出兵のため全ての馬を国に取られたのだ。
その後この町から馬が消え廃れていった。
「オトモリさん有り難う。」
アムサは袋から顔を外した。
「これも受け取ってください。でもあんまり公に見せては行けませんよ。」
そのままモモにのり、オトモリとアムサは去った。
「おい!それアムサちゃんが顔に引っ付けてた袋じゃあねえか。」
「それにしては随分重いねえ。何が入ってルんだい」
「なんじゃこりゃ……ダイヤモンドじゃあねえか!」
「嘘だろ!これ一粒で城が立てられるって聞いたぞ。」
「……あの人達はきっと神の使い何だろう。この恩は必ず返そうぞ。」
その後、カルデンはかつて以上の精気をみなぎらせ、神祭のラソルタ以上の放牧の町となる……だが何故そんなに急激な発達をしたのか知るものはいない。
バッテンブロウは同盟を組んだ館花の配下と深呼国の酒と温泉の町、ダムリンへ来ていた。
ここで作られる私好酒と爆発音酒と魚疑酒は国一のうまさだ。
温泉は、煙草を吸いながら堀当てたという伝説から(スパー)と言われていた。
その町の一番高級な客漠蘭の嘘本当にて。
真紅珍と賞金稼ぎ仲間、鼻唄は談笑していた。
「マッカチン、バッテンブロウはどこだ?マッカチン」
「女には興味ないそうた。」
「そうか。せっかく将軍二人から渡航費たっぷり貰ったってのによ。なあ、マッカチン」
「ルルル、それよりアムサの情報は?」
「ああ……これは接吻国の仲間からの情報だが、馬を大量に連れた男たちがいたそうだぞ。マッカチン」
「そりゃ、バッテンブロウの配下のモヒカンだろう。」
「それがおかしいんだ。その中に女とエレファントがいたそうなんだ。マッカチン」
「エレファントはラソルタで買ったんだな。そこに間違いなくマドガラスとアムサがいる。あの男は……」
マッカチンは爪を噛んだ。
「ルルル、あいつは気付いてないが……俺は昔モヒカンと一緒に見習い盗賊をしていた。だが俺はその一味を全滅させた。金のためにな。」
「よくある話だよマッカチン」
「あいつも殺そうと思ったが、その時あるコソ泥集団が人手を求めてた。何でも新人が寄り付かないらしくて俺は奴を売ったんだ。金を貰ってな。」
「そこそこある話だよマッカチン」
「俺はその金で顔代欧米で顔を変えた。賞金稼ぎでやり直すためにな。」
「まあまあある話だ。マッカチン」
「そのあとその集団は捕まった。だが奴だけ捕まらずダサカシ賊の頭になっていた……俺の不安がわかるか?」
「わからん話だ。マッカチン」
「おそらくモヒカンは、その集団を一人で始末したんだ。貧弱な奴だと思ったがそれは奴の演技だったのだ。恐らくマドガラスに近付いたのも奴の演技だ。」
「何が言いたいんだ。マッカチン」
「この事はバッテンブロウに報告はよそう。だが手柄は俺らのもんだ。モヒカンを殺し俺らがアムサを連れてくるんだ。」
「悪くない話だ。マッカチン」
「これでタイターンをやった恨みが晴らせるな。しかしタイターンはどこに行ったのだ?家から消えていたぞ。」
「いや知らん……」
マッカチン言わんのかい!!
ダムリンのスパーにて湯につかるバッテンブロウ。
過去の傷に湯が染みる。
特に染みるのは胸の傷だ。それを隠すように狼の入れ墨を掘った。
やつにつけられた傷……マドガラス……
湯を抜け、例茶碗蒸に入った。
蒸気を体に浴びる。熱い。あの時のようだ。
バッテンブロウの頭の中の計画は完璧だった。
サンバイザとゴミブクロ、その他の賞金稼ぎたちを別の国へ送った。
それはアムサの体質を他の国に悟られないためだ。
感ずかれたら殺せと言ってある。
そしてモヒカンに馬を引き連れて休集へ向かわせたのも計画のうちだ。
大量の馬が休集へ向かったことを噂で耳にするはずだ。
マドガラスとアムサが休集に帰る頃にはすでに、シナノ族のアムサの家族はモヒカンにて殺されているはず。
それで怒れるマドガラスと私は戦える。やっとだ。
あの時のように……俺は……。
オトモリとアムサ、モヒカンは接吻国の船舶所、
ナムシレンで一泊をすることに決めた。
この町にも外国人は多くいる。
とくにこの町の奴等は気性が荒い。
町の中に小規模なカジノがある。
※カジノは前に(火事の)あった場所だから※
ここで賭金を失ったやつがそのまま賞金稼ぎや、時には打撃萬となりこの町にうごめく。
まるで悪循環だ。
その中の宿街、浮伊豆鈍では、小さな沢山告白をみつけ、そこに部屋を借りた。
小さな酒場の五角鐘にて、オトモリ、アムサ、モヒカンは酒をのみながら話していた。
「バッテンブロウは俺たちにアムサの家族を殺すよう命令した。」
アムサは立ち上がり「なぜだ!家族は関係ない!」
と叫んだ。
「その理由はなぜかわからない。ただダイヤの為ではない。」
オトモリは鶏肉の揚げを食べながら話を無言で聞いた。
「バッテンブロウはオトモリさんに異常なほど執着し恐れていた。だから直接的にマドガラスに誰も攻撃しなかった。」
「……」
「やつの正体は知らないが……何かマドガラスに怨恨を持っているように感じる……」
「……」
「それが何かはまるでわからん。オトモリさんに心当たりは?」
オトモリは口を開いた。
「俺もわからん。だが奴が恨んでるのはマドガラスじゃない。ありのままの俺だ。」
その理由はアムサもモヒカンもわからなかった。
「……やつは一度俺の前に現れた。ホラバラ鉄細工を売ってたときだ。」
オトモリはその顔を知っている……あの時……やつだ……奴が……バッテンブロウ……
「俺も……人並みに忘れたい過去がある…… やつとは……決着をつけなければいけない……」