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強大なモモ


森を抜けたところで、山の鳥たちが飛びまわるのがわかる。


見たこともない鳥だったが同じ猛禽類の仲間がいたことでセパモンは喜んでいた。


「鳥が増えたということはもうすぐラソルタだ。神祭一番の放牧の町だからな。」


オトモリのいう通りものの30分ほどでラソルタの町は現れた。


大きな町で鼻の長い動物、首の長い動物、小さな毛むくじゃらの動物などが人の生活の中に入り込んでいる様子をアムサは目にする。


「オトモリ、あの黒くて大きな動物は何?」


「グリズリーだ。昔、飼っていた(薬売り)が名付けて……」


「訛ったのね。」


珍しいものに目を奪われながらも、目的の馬屋に辿り着く。


「いらっしゃい。」


「馬を一頭もらえないだろうか。」


「……すいません。馬は全て売れてしまったんだ。」


売り切れ!?ここには100頭以上の馬がいるはずだが。


「昨日、若い兄さんが来てね、百頭全て買うって言い出してよ。んで今朝そいつの手下のやつらが持ってったのよ。」


オトモリとアムサは同じことを考えていた。


先を読まれている。


ナカマルはアムサを神祭から出さないつもりなのだ。


「大将、昨日来た若い人はフラカマ城の使いでは?」


「将軍様の使いではないよ。フラカマの紋様もないしそんな偉い感じはしなかったよ。むしろ…」


むしろ…


「胸辺りに狼の墨があって、デスペラードってかんじかな。」


狼の刺青…オトモリがボラバラの市で見た男も入っていた。


「ですぺらーど……?」


アムサはまた聞いたことない言葉を聞いた。いつも質問ばかりしている。


「特定の場所につかず町から町へ浮浪する剣豪や賞金稼ぎのことさ。昔、どこかの兵隊がそいつらを追って発見したときに〈みつけたど!〉と言ったのが……訛ったんだ。」


「あそ」


店を出ようとしたときだった。オトモリとアムサは3枚の手配書を見つける。3人ともオトモリはよく知っていた。


「大将、これは……」


「ああ、隣町の強盗団の頭たちだ。なんか昨日のデスペラードも気にしてたぞ。」


オトモリはそれを聞き、アムサの手を引き店をでた。


「どうしたのよオトモリ」


「アムサ。ここはもうナカマルたちに張られている。めぼしい牛や鹿をもらってここを出よう。」










「バッテンブロウどの。」


フラカマ城の別荘を借り、刀を磨くバッテンブロウ。

それを呼び止めたのは昨日銭を払い雇った三組の強盗団のうち、特に残酷で女より若い男好きなヒヤケヤ賊の頭、山縛山(サンバイザ)だった。


「なんだ。若え兄ちゃんでもみつけたか……」


「うちが男なら誰でもいいと思ってんのかい。オカマなめんなよね。」


くだらない話はそこでやめた。


本題にはいる。


「ラソルタの町にアムサと男がいたと、手下から連絡が入ったんだが、進行しようか。」


バッテンブロウは「だめだ」と一喝した。


「うちの手下たちなめんなよ。あんな女すぐ捕まえられるさ。」


「女はな……だが問題はあの男だ。あの男はただ者ではない。」


サンバイザにはその意味がわからなかった。なぜただの男をそんなにも恐れるのか。


「その男は……間違いなくマドガラスだ。昨日の夜、ボラバラからラソルタへ向かう途中でタイターンがやられた連絡があった。たしかタイターンはナムサの下についてるよな。」


タイターン!?あの大きな体と二刀の鎌をもつ、巨木のタイターンを。武器狩りが……?



「今お前らが行ってもやられるだけだ。タイターンのお陰でナムサ城のモトチカ将軍もアムサの体を狙ってることがわかった。しばらくはナムサの連中に任せ、俺らはやつらを見張るんだ。」








ナムサ城の将軍室。


天下を狙う館花モトチカは配下の賞金稼ぎタイターンの敗北に焦っていた。


タイターンは武器である鎌を折られたことがショックだったようで熱を出してしまった。


「タイターンがやられたのはアムサなのか?そこまで強豪とは聞いてないが」


ナムサ城の軍師の一人が口を開いた。


「タイターンの精神が混濁して確実ではありませんが……カラスがなんとかと聞き取れました。」


カラス?そんなやつがいるのか?


それを聞いていた配下の賞金稼ぎ、深紅珍(マッカチン)は確定した。


「間違いない……武器狩りのマドガラスだ。あいつは武器を叩き壊し、それを奪うという新種の盗賊ですわ。」


マドガラス……その名はモトチカの耳にも入っていた。

しかしとくに実害もなく館花家にはそれほどの脅威には感じていなかった。


「なぜ武器狩りがアムサへ協力しているのだ。あの女とどういう関係だ?」


その理由は誰も知らぬところだ。


だがそれよりも危険なこと。それを知る一人の軍師。


その軍師は言葉につまっていた。


だが言わなければ…


「……将軍様、伝えなければならぬことが…」


「なんだ!早く言うのだ!」


「今朝、うちの兵隊が一人消えました。この紋様を残して……」


その紋様は中室家の紋様だった。


「おそらく奴は中室のスパイでしょう。館花もアムサのダイヤモンドを狙っていることがバレたと思われます……」

※スパイは「酸っぱい」やつがしてたからです※。



モトチカは持っていた扇子を握りつぶした。


血管が何本も切れてしまいそうな勢いだった。


「ならば……こちらも宣戦布告と行くしかないな…」


また別の軍師も口を開く。


その軍師もまた口の開きにくいことだった。


「いけません将軍様。今の館花では絶対にうてません。」


なぜだ?確かに今まで争い事を好まずやって来た。

争い事ばかりの中室なぞ、軍勢で圧倒するのはわかりきっていた。


「中室には…バッテンブロウがついてます。」


「なに!」


その名前が出たときに辺りは騒然とした。


伝説の賞金稼ぎにして二刀を操る最強の男。誰もがその名前を恐れていた。

国を支配できるほどの武力をもちながらも、そうはせず7年前に突如姿を消した白い仮面の男。


「やつは…生きてたのか…」










オトモリとナムサはまだラソルタにおりラクダの肉とスパゲティというのを食べていた

※らくだとは(あ~らくだ)が語源です※


尚、乗れる動物としてラクダ、鹿、牛も買えなかった。どうやら誰にも売らないように買収されたようだ。


「これもうまいなオトモリ。私は猪しか食うたことがなかったんでな。」


「そりゃよかった。しっかり食っとけ。食ったらここをでるぞ。」


オトモリは顔を動かさず辺りを見渡した。


チラチラとこちらを見ているやつがいる。


1…5…12…18


「18人か…やはり、何か乗れる動物を買わねばな。」


18人の意味はアムサにはわからなかったが、確かに体力は残しておきたい。そのとき、目の前を変な動物が通りすぎた。


「オトモリ、あの動物はどうだ?」


「あれはカバという動物だ。一見おっとりしてるが慣れないと狂暴だ。しかも足が遅い。」


「じゃあ、あれは?」


「あれはタスマニアデビルだ。(たまに太る)からそう呼ばれる」


そんな、質問を10ほど繰り返した。


「なかなかよい動物はいないものだ。歩いていくしかないのかな。」


仕方ない…


「この際だ。あれを買うか…」


あれ?










オトモリとアムサはその巨大さに少し焦っていた。


これが人間の言うことを本当に聞くのか?


「これが、エレファント…」


アムサはもちろんのこと、オトモリもこの動物を知らない。


店主は笑いながら説明した。


「皮膚は岩のように固く、力も人間の数十倍、足も速くはないが、ちゃんと水と果物を与えてやればそこそこは走るぞ。」


乗り方を習い、店を後にした。


「アムサ、名前をつけてやれ」


「そうね。大きいから、モモなんてどう?」

※シナノ族の言葉で〈強大〉という意味※


「なぜでかくて桃なんだ?」


そして町を出る。そこでオトモリはモモを降りた。


「アムサ、先に行ってろ。すぐ追い付く。」


妙な気配は姿を現す。


オトモリの前には木影に潜んでいた複数の男たちがいる。野蛮にも刀や銃を持っている。


アムサとモモ、セパモンはオトモリを信じ、先を歩いていった。


「よく気付いたなマドガラス。我らはヒヤケヤ賊のもんだ。」


「勘弁しろよ。誰の命令だ?サンバイザのオカマか?」


お頭をバカにすんなとひとりが刀を抜いた。


だがオトモリはそれより早く自分の裏拳を男に当てる。


男は背骨を抜かれたように倒れ落ちた。


「まだやるか?」


「本当を言えば、上からは貴様に手を出すなと言われているんだ。だが舐めたもんだよ。俺たちじゃあ倒せないと思ってやがる…」


その台詞にオトモリは疑問を感じる。


「倒せない?狙っているのはアムサではないのか?」


男たちはヒッヒッヒッと薄気味悪く笑いだした。


「狙いはアムサさ…だがあの男は……貴様を警戒している。俺たちもバカにされたもんだ……」


あの男……!?


「やっちまえ!」


一斉に刀はオトモリに振りかかってきた。


だがその腕は複数でしか何も出来ないボンクラの腕だ。軌道を読み込み、何をしても掴めないウナギのように避けてやった。


一本一本ボキボキと刀を破壊し、相手が銃を抜こうとする。


「……情けないね。俺みたいな素手の男に刀をへし折られたあげく、敵わないとわかりゃ狙い撃ちか。」


男の一人はまた笑った。


「情けなくて構わない。生きてこその世の中だ。お前はこれで終わりだ」


「……なら死ぬ前に一つ頼みがある。」


「なんだ!?」


「アムサではなく、俺を狙う理由はなんだ?お前らの後ろには誰がいる。」


男は引き金を引き答えた。


「ああ、お前も聞いたことはあるだろう…」


その名は…最強の男…


「バッテンブロウ」


…バッテンブロウ……俺が一番聞きたくない名前…


そうか……そういうことか……んじゃこんなとこで…


「すまんな、死ぬわけにはいかなくなった」


男たちはそのなめくさった言動を聞き引き金を引く。

〈バン!!〉


…倒れたのはヒヤケヤ賊の男たちだった。


全員腕が吹っ飛んでいる。腕を抱え唸る男たちのその姿、オトモリの記憶をカナヤスリで痛め付ける。


(このまま死にたくない…子供に会いたい…父ちゃん…父ちゃん…)


気のせいだ…きっと…気のせいだ…


「…刀振り回してるときに銃先に石ころつめさせてもらったよ。残りの人生頑張りな…」



城内の茶室に座るナカマル。


その向かいにはバッテンブロウが座っている。


「ナカマル…茶というのには、黒いもんだな…」


「茶ではない。コーヒーだ。」


「こーひー?」


「香りのよい豆から作られる香味のある飲み物だ。このカカオ豆というものから作られる。」


ナカマルは瓶から黒い豆を取り出した。

 

「コーヒーは作った人間が(恋)をした相手が(かかあ)天下の家に育ったことが語源ようだ。」


こい…コーヒー……かかあ……カカオ…どうでもいい。



苦いコーヒーを二人ですすっているときだった。


戸を叩く音。


開けたのは二人の男だった。


一人はナカマルの臣下。


もう一人はサンバイザだった。


「何があった。」


臣下から口を開いた。


「ナムサ城の館花モトチカが同盟を結びたいと使いをよこしておられます。」


すべてナカマルの思い通りだった。


やつらに送ったスパイにわざと紋の入った手拭いを置くよう指示した。


奴等はそれで情報が筒抜けだとわかる。


だが武力で攻めいろうにもこちらにはバッテンブロウがいる。


だがダイヤモンドは捨てがたい。そこで同盟を組み山分けと考えたのだろう。


「中へ通せ。」


「ナカマル、同盟を組むつもりか?」


「ああ。だが目的は奴等の兵力だ。しばらく使ったらモトチカを殺し全てを私が手にいれるのだ。」


ナカマルは臣下とともに、茶室を去った。


待たされていたサンバイザは流れ下るように頭を下げた。


「すまない…私の部下が命令を破りマドガラスに戦いを挑んでしまった。責任は頭である私がとる。」


……これは……面白いことになった……



「さすが血気盛んなお前の部下だ。予想通りの展開となったよ。」


サンバイザは腹を切る覚悟でここへ来たのだが、バッテンブロウの反応は予想外だった。


「では、マドガラスに私が追っていることはばれたんだな……」


サンバイザは首を縦にふった。


「それでいい…今頃やつは焦っているはずだ……倭人の乱でのこと…決着つけなければな……」


バッテンブロウは苦いコーヒーを飲み干した。



































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