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空間隔離の能力⑤

久しぶりに更新します。

 古崎祐雅は二人の少女と対面していた。片方は長い黒髪の少女、日之衛旭奈。ここしばらく接していた同学年の生徒だった。残る少女とは初対面である。旭奈と同色のセミロングに、勝気な瞳が深い印象を与えている。

 随分と好戦的そうだ、というのが祐雅の第一印象だった。


「貴方、部外者でしょ? 邪魔しないでくれる?」

「……邪魔をされたくないような事をしている最中だったのか。成程。それは悪かったな」


 祐雅が首を傾け、敵意をむき出しにしている少女へと笑いかけた。


「邪魔はしないさ。そのまま続ければいい。二人きりになったのは偶然なんだろ? なら、第三者の俺が口出しをしなければ、万事解決だ」


 びっ! と、祐雅が親指を立てた。

 対して、月織愛依華は「ちっ」と舌打ちを鳴らす。

 吊り目気味の目が祐雅を睨んできた。下調べで性格は把握しているが、流石に怯んでしまう。祐雅は取り繕った笑顔を崩さない様気を付けた。

 そのかいもあってか、月織が祐雅から興味を失くした。反応がなく、自然な態度だと受け取ってもらったのだろう。彼女は旭奈へと視線を戻した。


「残念ね。私、こういう軽薄な男が嫌いなの。……趣味が悪いわ、旭奈さん」

「がーん! 昼は熱烈な目で俺を見てくれていたのに」


 祐雅が効果音を口にし、精神的なダメージを身体で表現する。そんな行動は軽薄としか評せなかったが、近くの旭奈は別の事が気になった。


「え、昼……?」


 旭奈が驚いた様に祐雅と月織の顔を見比べる。彼女も何かしらに気付いているらしい。都合が良い、と考えるべきだった。本人の自覚が警戒には何よりも必須である。


「何の話か分からないわ。言いがかりは止めてくれる? 私は、貴方みたいな男、見たことも会ったこともないわっ!」

 憤然と言い捨てる月織に、祐雅は笑顔を向ける。

「――その反論は、おかしいぜ」


 ただし、内面は疑いで満ちていた。彼女の言葉はちょっとした矛盾が生じている。正確には、断言は不可能な部分があったのだ。

「同じ学校に通ってんだ。……直接会っていなくても、見たことぐらいはあるだろ?」

 ぴくり、と月織の眉が動く。眉間に皺を寄せ、機嫌の悪さを隠そうともしない。彼女は祐雅を睨み、甲高い声で叫んでいった。

「あ、当たり前でしょ? 第一階級の貴方と、第六階級の私は受けている授業が全く違う! そんな階級差なら顔を合わせることなんて――」


「何で俺の階級知ってんだよ?」


「あ」

 月織愛依華が自らの失敗に気づき、口を開けて呆然とする。真に誤魔化すべき仕草を、彼女は露骨に晒してしまった。

 ここぞとばかりに、指摘通りの最底辺な能力者が追及する。


「俺はあんたに一度も第一階級だと名乗った記憶はないぞ? それなのに、どうして知ってるんだ?」

「そ、それは」

「正しくは……あんたが監視していたと思われる昼の時間以外に、俺の階級を知る事は出来ないぜ。さっきの言い分を信じるなら、俺の階級なんて調べたりしないんだろ? だから、事前に把握している可能性もあり得ない。残るは、盗み聞きをしていた――という線しか考えられなくなる」


 流暢に語る祐雅に、月織愛依華は圧倒される。単純な推察に過ぎなかったが、それを実行した祐雅に彼女は恐れ戦いた。


「あんなあからさまな殺気、気づかないとでも思ったか? ……能力者ってのは特に脳の器官が特殊だ。デバイスとかはなぁ、そういう脳波を感知して起動してるんだよ」


 そう言って、祐雅が右腕を持ち上げる。その手首から銀色の腕輪が現れた。中心に溝が出来ており、薄い青色の蛍光色が詰まっていた。

 デバイス。能力者が能力を使用する際に、能力者の肉体、精神、状況を記録する装置である。装備者が能力を発動すると、それぞれに発光し、発動中という事を外部に示す。


「雰囲気っつーのは、良く分かるんだよ。ただでさえ数人の能力者と戦った経験があるからな」

 彼の発言を、傍で立っていた日之衛旭奈が不思議に思った。

「……?」

 祐雅は自分が戦闘系の能力ではないと言っていた。だが、実際にはいくつかの戦闘経験があると告白もしている。彼女はその矛盾を訝しんでいた。


「なあ、第六階級ゼクス。揉め事にうるさい風紀委員に告げ口されたくないだろ? 俺達だって、面倒事は起こしたくない。ここは素直にあんたが帰ってくれないか?」

「風紀……委員っ」

 月織が忌々しそうに呟いた。

 風紀委員とは、祐雅や旭奈とは正反対の能力から選抜された能力者の集団であり、学園の秩序を守る役割を担っている。彼等は皆、攻撃に特化した能力者だ。反抗的態度を向けるのは危険である、と誰もが理解していた。

 黒い髪の少女は祐雅を鋭く凝視し、やがて視線を伏せる。


「――――むかつく」

 月織愛依華が鮮烈な感情を吐き出した。投げ捨てるかの如く飛び出た不満が祐雅と旭奈の聴覚に突き刺さって来る。祐雅は一瞬だけ彼女を警戒した。そこまでの敵意、悪意が月織の周囲から溢れていたのだ。

「分かったわよ」

「つ、月織……さん?」

 旭奈が細々と声をかける。だが、彼女は反応も返さずに、二人へと背中を見せた。そして、自分を追い詰めた少年へと告げていく。

「名前を覚える気はないけれど……あんた、覚えておきなさいよ」

「何か理不尽な要求だな、おい」

 前髪が長いせいで元々目が合わせられない祐雅は、悠々と彼女の言葉を受け流した。顔が隠れているので表情は見えない。それでも、彼女の顔がどれだけ歪められているのか、祐雅は本能的に察する。


「この私相手に風紀委員の名を使って脅迫したこと。必ず、後悔させてやるわ」


 少女の喉から低い宣言が漏れた。直接の対象になっていない旭奈が、彼女の威圧によって萎縮してしまう。黒くぎらついた瞳が、最後に祐雅を睥睨していく。

 不吉な予告を残し、月織愛依華の背中はどんどん離れていった。数分も過ぎると、影も形も見えなくなる。彼女は二人の元から完全に立ち去っていた。

「はあ」

 がっくり、と祐雅が肩の荷を降ろす。


「怖ぇぇぇよ! あの女っ!」


 月織愛依華が居なくなった事を機に、祐雅は全力で叫ぶ。その目尻には薄らと涙までが付いていた。

「何だよ! 本気で殺されるかと思ったぞ!? 眼科に行って治療すべきレベルの目付きだ、アレは!」

 己を照らしていた眼光を思い返し、祐雅は身震いした。歯がかちかち、と鳴り響いた。とにかく怖かった。第六階級の能力者。その各上の存在を相手に、祐雅は逃げたい気持ちでずっと一杯だっのだ。


「あの、古崎……さん」

 しかし、ある不安要素が祐雅を引き止まらせていた。

 ――声をかけてきた、日之衛旭奈。彼女を危険から遠ざける為、祐雅は最大限の勇気を振り絞った。結果として、相応の気力を払って月織は帰ってくれた。良かったー、と胸中で安堵してから、祐雅が旭奈の方へと顔を向ける。

「お前も大変だな。あんな女に絡まれて」

「へ? あ、いえ」

 旭奈が突然の同情に狼狽えた。彼女からしたら、祐雅は無関係な乱入者なのだ。様々な疑問を覚えているのは間違いないだろう。

 実は……。――待てよ。

 全てを洗いざらい喋ろうか。そう考えたが、心にしこりが残った。

 もう少し状況が良くなってから話してやろう。その方が彼女にとって安心しやすい。更には、自分の能力を発動させる条件が満たしやすくなる。


「ま、頑張ってくれ。いざという時は、俺がいるからな」

 どうせなら演技を通し続けよう、と祐雅は自分なりの気障な口調で勇気づける。

「は、はい」

 子猫を抱いた少女は唖然としながら、頷いた。みゃ、と猫が短く鳴く。ふわふわな猫耳が旭奈の胸を微かに波立たせていた。正直、羨ましかった。だが、せっかくの仮面を取り外すのも恥ずかしい。

 そんなこんなで、古崎祐雅は日之衛旭奈の窮地を救っていた。月織愛依華という敵意をむき出しにした少女から守ったのだ。

 ……それが更なる出来事を呼び起こすとは、この時の祐雅はまだ知らなかった。

主に主人公の祐雅はギャルゲー感覚です。前髪が異常に長いのもギャルゲー風主人公を意識しました。

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