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Mercenaries Garden   作者: ゆーやミント
ガーデン生活 初年度生編
7/87

〜決闘!!シラギ・スラティスタ〜

謹賀新年明けましておめでとうございます。


今年もMercenarys Gardenをどうぞよろしくお願いします。

紗季の些細な一言で怒りを燃やしたシラギは大広場の様な場所に暦たちを連れて来た。

周りの人達は彼の異常な殺気に身の危険を感じたのか、誰一人として近づこうとはしないので、三人だけが広場にポツンと佇む。


「一応聞こう、どっちが闘う?」

「私が...」

「勝負は俺がやる」


両腰に五本の鞘が十字に組み合わさった太い鞘を下げたシラギの問に紗季の言葉を遮って暦が答える。


「そうか、本当はそこの小娘を相手にしたかったんだが...まあいいだろう、許可する。決闘(デュエル)はしたことがあるか?」

「いや、初めてだ」

「なら説明してやろう。決闘は俺たちガーデンの者が揉め事を力ずくで解決する時によく使う割と平和的な方法だ。まずこいつを受け取れ」


暦が首を横に振るとシラギは説明を始め、一つのブレスレットを投げ渡した。


それは銀の単色で澄んだ緑色のクリスタルが一粒まっている。


「決闘時にはこのセーフティシールドの内蔵されたブレスレットを装着する。こいつは装着者の周りに薄いパワーシールドを展開して被ダメージを死なない程度に軽減させる。それと生命活動を細かく確認しているからイエローゾーンを超えそうになると強力な電磁バリアが発生して決定打を防ぐから殺せない仕様になっているという本気で殺る時以外には欠かせない物だ」

「少し俺にはデカイな」

「気にしないで着けろ」


上から目線に対する不満と不思議に思う感情を胸中で渦巻かせながら暦はやや大きめなブレスレットを装着する。

すると、手首の上でピッタリのサイズに自動で変化した。


感心しつつも手を動かして動きが鈍らないかを確認し、済ませると再びシラギの方を向き直す。


「今回のルールは至って単純だ。先にHPがレッドーゾーンまで...つまり電磁バリアが作動させた方が負けだ」

「解り易い事で」

「おい小娘、このコインを好きなタイミングで投げろ。こいつが地面に着いた瞬間スタートだ」


長い銀髪を後ろで一つに結わえて準備が完了したシラギは紗季に一枚の銀貨を指で弾いて渡す。


「ごめんなさいお兄ちゃん、負けないでね」


両者の間は約5メートル。

暦は柄に手を添えて鯉口を切り、シラギはただ立ったままで合図を待つ。

シラギの鞘からは柄は伸びていない。


やがて紗季がコインを弾き、数秒後地面に触れた。


「はっ!」


二歩踏み込みんだ後、一瞬で鞘から抜かれた刃がシラギの右腰を狙って迫る。


キンッと鋭い金属音が響いた。


いつの間にか抜かれていたシラギの剣は逆手に握られ、自身へ迫っていた凶刃を防いでいる。


暦はギリギリと金属の擦れ合う嫌な音に顔を顰めながらも腕の力を込め直す。


「ほぅ、なかなかいい動きをするじゃないか」


シラギは涼しい顔のままでそれを上回る力で押し返す。

暦は堪らず刀を両手で握った。


現在暦は両手で刀を握り、しっかりと踏み込んでいる。

それに対してシラギは片手剣を逆手に握り、態勢もただ立っているだけだ。

それなのにいくら暦が押しても根が生えた様に彼の体は微動だにしなかった。


長い鍔迫り合いの後、シラギは目を細めながらやや残念そうに呟いた。


「・・・なんだ、レベル1100だからと気合を入れていたんだがパワータイプのダメージディーラーじゃないのか。なら...」


この時暦はどうして言ってもいないのに相手に自分のレベルが知られているのだろうと思った。

が、直ぐにそんな不思議に思う余裕は無くなった。


空いたシラギの左手が黒いロングコートの右脇をまさぐり、刃の着いていない(つか)を取り出した。

それを十字の鞘の内、中央のものに添えるとカチンと何かが嵌る音がる。


そして、次に柄を引くとそこからは白く輝く刃が伸びていた。


「こっちはどうだ?」


シラギが楽しそうに残忍な細い笑みを浮かべたと同時に暦は強い殺気を右に感じて大きく後ろへと引き下がる。


それと一刹那遅れて銀の閃光がつい先ほどまで暦が立っていた場所を薙いだ。


(くそ、腕力が強い上に尋常じゃないくらい速い!なんだこいつは!?)


驚異的なシラギの強さに驚きと疲労を隠せない暦。

暦の心情を知ってか知らぬのかシラギは着々と鋭い斬撃を放ち彼を追い詰めていく。


「どうした小僧。これじゃまるで弱い者イジメみたいで俺の気分が悪くなる」

「あんたが強過ぎるんだよ!」


汗一つかいていないシラギに閃光と火花を散らしながら暦は必死に叫んだ。


(これじゃ下手なモンスターよりも圧倒的に強い...強い!)


振り下ろされた剣を鍔で受け止めながら意識の片隅で確かな高揚感を覚え始めた。


(ああ、この男は強い。俺よりもずっと強い!だから、楽しい!!)


今の世の中、対人で真剣を抜く事は少なくなってきている。

それでいてこのシラギという男は実に対人戦闘に熟れており、それが暦の中の戦闘本能を激しく刺激した。


目が慣れてきたのか次第に暦は迫り来る白刃を掻い潜り、攻めに転じ始める。


低姿勢でシラギの攻撃を躱すと、そのまま一気に刀を振り抜いて胴を薙いだ。


軽く歯を食いしばるシラギの顔が暦の視界に映る。

彼は剣で防いだようだが、少しだけダメージが通っていた。


踏み出した足を軸足にして半回転し二の太刀を打ち込むが、今度は二本の剣を交差させて防御されたため攻撃が通らない。


「目の色が変わった....という言葉があるが、今のお前はまさにそれだな」

「ああ最初は驚いたけど、久しぶりに強い人と戦えたから嬉しくなってきたものでね。血湧き肉躍る思いだ、刀も軽く感じるよ」


瞳を金色に輝かせ、頭の上で狐耳を立てた暦は楽しそうに笑う。

と、同時にシラギも細く微笑み目を閉じる。


「そうか、お前も業を背負っていたのか。どうりでガキの割に強いはずだ」


そしてゆっくりと開けられたその目は両眼ともに真紅へと変わっていた。


「....ほう、中に居るのは化け狐か」

「さっきから気になってたが、どうして言ってもいないのに俺のことがわかるんだ?」

「俺の目は相手の本質からレベルやHPまで全てを見通す、何人もこの目を前に隠し事はできない」


瞳の奥で光を揺らめかせながら剣を構える。


「言っておくが、もう手加減はないぞ」


ツツッと動いたシラギの身体が一瞬で暦との間合いを詰める。

同時に暦も動き左下段に刀を構えた。


火花が散り互いの剣が激突した。

右の剣で刀を受け止めたシラギは左で暦の脇腹に突きを放つ。


刀を片手で持った彼は素早く帯から鞘を抜き、それで突きを弾き返した。


「足が暇になっているぞ」


単純な蹴りが暦の鳩尾に決まり、それだけで彼を背後の壁まで吹き飛ばす。

大きな衝撃と小さな痛み、それ以上の息苦しさが暦を襲いそのHPを一撃で三分の二まで減らした。


ボヤけそうになった視界をプルプルと頭を振って戻すと、すぐさまシラギに詰め寄り、その懐に一太刀浴びせる。


その後は両者共もう剣で攻撃を受け止めない。

身体を伏せ、反らして刃を躱し、一瞬の隙に攻撃を打ち込んだ。


いつしか二人のHPは残り4割を切っており危険領域(レッドゾーン)の一歩手前だ。

大きなハンデを負っていた暦がここまでシラギを追い込めたのは暦自身の気迫にあっただろう。

斬れると思った時彼は実力以上の力を発揮していたのだ。


シラギが暦を強く弾き飛ばし、両者の距離が6m程開いた。


「ここまで俺が決闘で疲弊したのは久しぶりだ。どうだ小僧、次の一撃で決着(フィニッシュ)にしないか?」


ところどころに刃こぼれの目立つ二枚の刃を眺めるシラギが提案した。


「いいけど、あんた死ぬなよ?」

「誰にものを言ってると思っているんだ?」


シラギは小さく笑いながら質問に質問で返すと剣の柄にある突起を押す。

すると今まで装着されていた刃が外れて地面に転がった。


再び鞘に柄を重ね、引き抜くと先程とはまた違った刃が姿を現す。

今度のものは眩しい程に磨き込まれた薄い片刃の刃で峰が付いており、反りのない刀の様な形状だ。


「俺はマーセナリーズガーデン・高等兵団ドラゴン討伐部隊隊長だぞ。油断するようならば...削ぐ」


左の剣を逆手に握り駆け出すシラギ。

対する暦は中段に構えて心静かに待った。


やがて激しい金属音が鳴り響き、刀とシラギの左に持っていた剣の刃が宙を舞い、右の剣は暦の左肩に僅かばかり切り込んだ後に電磁バリアによって弾き返された。


「お前の負けだ。ミズカミ」


決闘の勝者はシラギ・スラティスタだ。



-------------------------M.Gメモ------------------------



決闘とは


マーセナリーズガーデンの者が主に私的なトラブルを解決する時に行うもので、開始前に装着するブレスレットのおかげで死亡することは無いので比較的に安全な方法とされる。(死なないだけで当然怪我は負う)


ルールは大まかに分けると3通りで、初撃決着、ハーフエンド、デスマッチとなり、安全なのはハーフエンドまでである。




高等兵団ドラゴン討伐部隊について


ガーデンの精鋭である高等兵団の中でも特に戦闘面で優秀とされる粒ぞろいが揃うドラゴンを討伐する部隊。

特別な装備品や権限を持つのでガーデン内外から羨望の眼差しを受けている。

人員は500名前後と少なめだが、彼らが戦えばドラゴンとて敵ではない。


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