神器の代償
神器の代償
「……お前俺の話ちゃんと聞いてたか?」
東京物産ニ階にある食堂。フロアがまるまる食堂となっている為まるでどこかしらのデパートのレストランフロアと化している。
社員食堂とは思えないほどの豪華な食事を安価で提供することで社員達はよくここを利用するのだが、満席になった事はかつて1度もない。
別段利用者が少ないという訳ではなく、あまりにも食堂が広すぎるのだ。
そこのとある食堂のテーブルに山王と冬花は向き合って座っていた。
冬花は生クリームのせプリンを頬張る。牧場から直送される卵、牛乳が使われておりこのツヤツヤとした光沢を放っているプリンを生クリームと一緒に口に運ぶ冬花の幸せ一杯といった表情は、このプリンがどれだけ美味しいかを物語っている。
その傍らにはマグカップが1つ。山王はそのマグカップにスティックシュガーが2本投入されていたのを見ていたので、この甘ささしかないテーブルを見て、自身が飲んでいるエスプレッソも何処か甘く感じていた。
そんな一人プリン祭りを開催中の冬花に山王は今まで話していた事の確認をしておく。
「えぇ、聞いていましたよ。神器と契約したら常に身体能力が向上し、武器を体内に隠し持つ事が出来る。だけど顕現する際にはそれなりに体力を消費する上に慣れていないと顕現に戸惑いその間に殺される事も多々ある……とかですよね」
「まぁ……そうだな」
「慣れ次第では戦闘を有利に運べる、しかし代償というものが存在し、契約した神器から離れすぎてしまうと個人差はあるが身体に様々な異常をきたす、ですよね」
「……あぁ」
授業中眠っている生徒に質問を投げつけ困らせてやろうと企んでいた教師が、意外にも模範解答を答えられてしまった時を奇しくも体験する事となった山王は取り敢えず目の前のコーヒーを口に運んだ。
「にしても雪音さんどこ行っちゃったんですかね」
プリンを食べ続けている冬花に先程までは雪音と山王とで説明をしていたのだが、冬花が3つ目のプリンを頼んだあたりからそそくさと退席していったのだ。
恐らく先日スイパラに行ったとか言っていたから、これ以上甘い物を食べる訳には行かない雪音にとって目の前で甘味を満喫しているこいつの姿が目に毒だったのだろう。
山王はそう推測し、しかしそれをわざわざ告げるほど無粋でもないので、さぁな、と首を小さく傾げただけであった。
冬花はまたルンルンとスプーンを動かし、そして満面の笑みを浮かべ次にカプチーノを啜る。
「にしても……そんな簡単に契約して大丈夫なのか?」
契約したのはつい先程の事である。山王からすると咲羅に無理やり言われて契約したと感じとっていたため、安直な判断だと思いそんな事を口にしてしまったが、
「……由真は契約をしているんですよね。なら私も契約しなければ由真は止めれないと思うんです」
真摯に、それは先程までプリンに現を抜かしていた女子高生の目ではなかった。
まだまだ拙いが殺し屋としての雰囲気がそこにはあった。
山王は自身の発言を、見かけで判断したことを恥じた。
「何なんですかこの空気。山王さん、何があったんすか。あ、これ一口貰っていい? ってうわっ、あっまっ」
いきなり飄々とした男が冬花の背後から話しかけてきた。そして冬花のマグカップをかっさらうや否や口に運びそして思いっきり顔を顰めた。
ヤケに馴れ馴れしく話しかけてくるから知り合いかとも思ったが、振り向いてもそこに見知った顔はなかった。というかここ東京物産で見知った男の人といえば目の前の山王という人物しか心当たりがない。
すらりと伸びた身長ににこやかな笑顔を浮かべている青年がそこには立っていた。
一見ただの大学生か何かに見えるが、しかしここ、東京物産にいる以上只者ではないのだろう。
「矢作か。辞めたお前がなんでここにいるんだよ」
露骨に山王は顔を顰める。どうやらこの二人は知り合いであるようだ。
「いやーまだ食券使いきってないんで……あ、これカプチーノのお礼。1枚あげる。麺固めっていうのがポイント」
束になっている食券から1枚もぎ取り、それを冬花に渡す。そこには質素にラーメンとだけ書かれていた。
そしておかしなことにラーメンの食券の束が2、3枚程重なっていた。適当に見積もってもこの男はラーメンを20杯は軽く頼める程食券を持っている。それはばっちりと山王にも見えたらしい。
「っ、お前あと何回この食堂に来るつもりだよ! その食券全部おいてけ!」
「えーそれはちょっと……なんかここに来づらくなっちゃうじゃないですか。それにここのラーメン結構気に入ってるんでしばらくは通わせてもらいたいですし。それでは失礼します」
そう言い残し矢作はふらりと食堂を後にし、その背中を山王は忌々しげに見ていた。
「あの、山王さん。あの人なんなんですか?」
まさかあの人もユーザーという訳ではないだろうと冬花は考え、しかし今までのユーザーを思い浮かべてみる。
黒砂一樹。私の兄であるあの人こそ殺し屋たる性格であったと思う。ユーザーであってもおかしくはない。
寒川由真。父親に指導されており、彼の努力の結果とでもいうのか戦闘スキルは私が1番よく理解している。
ここまではまだいい。だが、
黄村咲羅。おかしな性格。どこか常識人とは一線隔している彼女がユーザーと言われても首をかしげたくなる。
山王。性格には何の問題もなさそうな渋いおじさんだが、季節に関係なくアロハシャツを着ているのはどうだろう。
……これでは先程の男がユーザーである確率は高そうである。ユーザーはどこかおかしな点がある様な気がする。
「元、ここの社員。なんだかんだでそれなりの修羅場をくぐり抜けてきたユーザーだよ。見て分かる通り掴めねぇ男さ」
やっぱりか、と冬花は人知れず納得する。果たしてユーザーになるとネジが1本飛んで行ってしまうのだろうか。
「はーい冬花ちゃん! 初暴走はどうだったかい? あ、山王さん、咲羅さんは丁重にもてなして御引き取りして頂きましたよ」
食堂の入口から打瀬が手を振りながら入ってきた。いなくなっていたのはどうやら咲羅の応対をしていたからだったのかと冬花は遅れて理解した。
「あ、それとさっき食堂の入口で矢作君っぽい偽物がいたので少しボコっといたのですが何か問題ありましたかねぇ?」
「いや、ない。その偽物はこれからもここに来るらしいから見つけるたびボコっといてやれ」
「はいはい、了解です! まーったく、これじゃ何のために辞めたのか分かんないでしょうに……」
……一体あの矢作という男の扱いは何なのだろうか。何か辞めたと一口に言っても何やら色々な事情がからんでいそうな気が……。いや、私がそんな事を考えても意味はないか。
「んではでは。冬花ちゃん帰ろっか。疲れたし、プリンも堪能できたでしょ? ってうおっ! まさかここにある全部のお皿冬花ちゃんが食べたプリンのお皿!?」
こいつは私のスイパラでの記録を抜かれちゃったねぇ、などと抜かしているのは無視し、冬花は打瀬に対し首をかしげた。
「打瀬さん、確かにプリンはすっごく堪能できましたけど、全然私疲れてませんよ?」
「契約したから疲労もあんま感じなくなってるんだわ。でも神器の暴走も体験したんだ。契約してなかったら今頃無茶な運動をさせられた筋肉が悲鳴を上げてるだろうな。まぁ契約した初日なんだ。ゆっくり休んでろ」
山王にそう言われれば冬花としても休まない義理など持ち合わせていないので素直に帰って休むことにしたいのだが、ここでまた疑問が残る。
「わかりました……でも打瀬さん。私どこに帰ればいいんですか?」
冬花は黒砂のアパートで生活していたのだが、そこは由真に知られた可能性があり、危ないからと打瀬が急にやってきて東京物産に連れて来たのだ。
そして元々住んでいた寒川家の敷地にある自分の家も由真に知られている為帰ることは難しい。
まさかこれから毎日昨夜の様にホテル住まいというのにも行かないだろう。
その疑問は山王も抱いていたらしく、打瀬に視線を寄せた。
「へへー、今物産が冬花ちゃんの家を新しく手配しているのですがすぐには用意できないということでですね、用意できるまでは冬花ちゃんを私の家にご招待したいと思いまーす」
そこで冬花は不安を感じていた。
打瀬との付き合いは短いが、失礼ながらこの性格で部屋がきれいでした、というのはない気がする。
「あー打瀬。お前最後に部屋の掃除やったのいつだ?」
どうやらその認識は間違ったものではないらしく山王も同じ事を危惧しているらしい。冬花として聞きづらかった事をすっぱり聞いてくれた山王にこっそり感謝し、打瀬の返事を待つことにした。
「えー? えーっと……何年だったかな……」
……もう駄目である。まず単位がおかしかった。
何日、とかだったら失礼な認識を詫びていて、何カ月、とかだとあぁ、やっぱり、と冬花は思っていたが、ちらりと聞こえた単位は部屋が絶望的に汚い事を容易に想像させた。
「あぁ、わーったからそんな目で見んな。打瀬、悪いが雪音呼んできてくれるか?」
「えー冬花ちゃん私の家に来ないの? 寂しいなぁ……」
と打瀬がぼやいていたのは数時間前。今は無事雪音の手によって冬花は保護されている。
カードキー式の入口をくぐってエントランスを抜けエレベーターに乗り込む。手すりから都内の景色が一望できる程の高さにあるフロアのマンションの一室が雪音の部屋である。
冬花の目の前で、スーツ姿の雪音が鍵を挿し玄関の入口を開いた。
「さぁどうぞ。何もない部屋ですが」
照れたようにはにかみながら冬花の為にわざわざドアを開けてくれた。
「雪音さん、何かすいません。急にお邪魔しちゃう事になって……」
「いえいえ、別にいいんですよ。久々に誰かと暮らすと言うのも乙なものです。晩御飯はお肉が余ってるので……ハンバーグなんていかがですか?」
「ハンバーグですか! いいですね!」
心を弾ませながら冬花は部屋に入り――そして驚いた。
玄関の先は廊下があり、その両サイドにいくつか扉があり、そしてその廊下の突き当たり、そこは大きなリビングが広がっていた。
大きな窓ガラスからは人工のイルミネーションに象られた都内の夜景が広がっており、部屋は塵の1つでも落ちていないのではないかと思わせる程に綺麗に片付いてあった。
しかしそう感じさせるのは家具が少ない、といった理由もあるかもしれない。この広さは明らかに家族向けに作られている広さである。冬花はどこか寂寥感を感じた。
キッチンでは雪音が手料理を振るう準備を始めており、手持無沙汰となった冬花は大人しくテーブルに腰かけている。手伝おうとも思ったが、客人は席についておいてと雪音に優しく諭されてしまい、大人しくキッチンを後にしたのだった。
玉ねぎをみじん切りにしているのだろう、トントンと包丁がまな板を叩く音を聞きながら、ふとテーブルの上にある写真立てが目に映った。
その写真には女の子と男の子が仲良く寄り添い、その背後では子供たちより若干背の高い女の子と若い青年がこちらに頬笑みけていた。
「雪音さん……この写真は?」
なんとなく、完全に暇を持て余していたから出た質問。
一人は雪音、そしてもう一人は……恐らく今日出会った人物であろう、矢作の幼少期が映り込んでいた。
しかしこの背後の二人を冬花は知らない。もしかして山王かとも思ったが、どうにも似ても似つかわない雰囲気である。
「あぁ、それはですね。確か……ロシアで修行してた時にたまたま天堂さんの知り合いの写真家に撮ってもらったものなんですよ」
ロシア、修行、というキーワードも気になったが、それよりも天堂という言葉が冬花は気になった。
「天堂? 東京物産に勤めてる人なんですか?」
丁度フライパンが肉を焦がす音が聞こえ始めてきた。
「うーん、そういう事になるんでしょうかねぇ。何せ私が小さい頃に他界なされたのであまり詳しくはわからないんです」
その口ぶりは懐かしむような、けれど淡々と語っていた。
「そうだったんですか……すいません興味本位でこんなことを聞いてしまって……」
「いえいえ、気にしなくてもいいんですよ」
冬花としても聞くべきではない事を迂闊に聞いてしまったのを後悔し、しばらく二人の間に沈黙が広がった。
二人で生活するにしても広すぎるリビングを肉が焼ける音だけが支配する。
雪音が口を開いた。
「そこに女の人が写っているでしょう?」
恐らくこの天堂の横に立っている女性の事だろう。冬花は、はいと返事をする。
「そこにいる女が天堂さんを殺したんです」
「え……?」
一見仲がよさそうに写っている写真なのだが、何か事情でもあったのか。冬花は思わず聞き返す。
「その女は死んだ事になっていますがまだ生きてるはずです……いえ、私がやる前に死なれていては困るといいますか……」
冷たい空気が肌に突き刺さる。この空気を冬花は知っている。
優しそうな見た目に惑わされていたが、彼女もれっきとした殺し屋なのだと冬花は知っている。
冬花は恐る恐る質問を口にする。
「やるって何を……ですか?」
雪音はきょとんとした表情のまま首をかしげる。何故分かりきった事を聞くのだろう、表情はそう物語っていた。
「殺しですよ? それしかないじゃないですか。天堂さんを殺したあの女を……ぐちゃぐちゃにするまでは……私は……」
そうか、と冬花は心の中で思った。
ただ殺し屋という職業についている訳なんてないのだ。何かしらの理由をそれぞれが抱えている。
冬花としてもただ単にユーザーになった訳ではない。由真を止める為に、その為に力を得た。
打瀬が言っていた殺す覚悟というのはまだあるか分からないが、この人にはそれが明確にしっかりとあるという。
私は今由真と対峙したらどうなるのだろうか。今ユーザーとしての力は得た。だがかといってそれだけでは決して敵わないだろう。
……考える事は多々あるがまずは――
「……雪音さん……何か焦げ臭いです!」
「え、あ、あああ! ど、どうしましょう!」
晩御飯の支度を再度考える事を冬花はすることにした。
家族向けに設計されているこのマンションの浴槽は当然広い。ここしばらくボロアパートの御風呂ばかり使っていた冬花は久々に足を延ばしてゆったりとお湯に浸かっていた。
「はぁ~、気持ちいいなぁ~」
いつもならトイレが目に入る中、更に身体を縮こまらせて身体を洗っていたのだが今日はそんな事もなく、自然と出てくる鼻歌交じりに目を閉じ極楽を体感する。
だが不意に鼻歌はとまった。
湯船に浸かった掌を見てみる。
ここから私が訓練を積めば今にでも鑓が出てくると言う。未だに信じられないが、全て嘘ではない。
父親が死んだ事も。由真が私を殺そうとしている事も。由真が殺人鬼になっている事も。
そして私がユーザーになった事も。
「…………」
神器という物がどの程度の凄さなのかを実感していない身としては正直このような気持ちになるのも無理はないだろう。早くこの力を試したい気持ちと、そしてその力を振るうのは怖い事だと思いながら、ただぼんやりと冬花は掌を見つめるのだった。
どことなくアンニュイな感傷にも浸りながらボーっとしていると急に入口のドアが開いた。
「冬花ちゃん? 折角だし一緒に入りましょ?」
意外にも雪音の乱入である。
「え? あ、えっと……あ、は、はい」
打瀬ならともかく、まさかこんな事をしそうにない人だったので冬花としては混乱し、そしてうっかり承諾してしまう。
……分かってはいたが同性も羨む体系がそこにはあった。手で隠されているその乳房は形としては理想形であり、また見事に曲線で形成されているそのボディラインは彫刻品が色づけされて動き出しているかの様でもあった。彫刻品と違う点はその肢体の上にはモデル顔負けの綺麗な顔があるという点か。
「それじゃあお邪魔します」
呆気に取られていると雪音も湯船に浸かってきた。広いといっても流石に浴槽に二人も入ると狭い。
その証拠に手と足が少し触れており――。
「ちょっ、ちょっと雪音さん!? どこ触ってるんですか!」
「どこって……狭いから仕方ないじゃないですか」
「それにしてもこの手の動きは明らかに狭いからって理由じゃ駄目で――ひゃ、あっ」
「あらら、いい感じじゃないですか? ここは……?」
「あっ、ち、ちょっ……っ!」
「ふふ、あ~楽しいですねぇ? 冬花ちゃん」
冬花は思った。
やっぱりこの人もどこかおかしな人である、と。
◇
「んーあの時のおじさんどうやってやってたのかなぁ」
少年は試行錯誤する。その身体から黒色の物体が歪に生えている。いや、生えているという表現では適当ではないかもしれない。黒い物体が身体に絡みついている。
「んー、こうかな? あ、できた! こうか、これでできるのか」
その人影は最早人の形はしていなかった。それはまるで鎧を身に纏っているかのような影。
「……にしてもこの特訓はやけに疲れるなぁ。お腹空いた。……でももう少し早く出来るようにしなきゃ駄目だよなぁ。それが出来たらご飯を食べようかなー」
その少年の足元にはひとつの死体。ただの丸腰ではなく片手に不気味なほどにどす黒い武器を手にしたまま絶命していた。
それは少年がユーザー相手に傷ひとつ負うことなく勝利している事を示している。
(由真、ここから少し離れた先にユーザーの反応がありますよ)
「ん? そうなんだ。んじゃあその人で練習すればいいかー」
たちまち黒い物体は少年の身体に溶けてゆき、普通の人間へと戻った。
そこには強敵と相まみえる事を嫌う、というのは最早存在していなかった。
――少年は人知れず進化していく。
◇
2010年9月
冬花は久しぶりに学校に来ていた。しかし来ていた、という訳ではなく夏休みが終わった為無理やりにでも来なくてはいけなかったというか。
あれから数日間雪音と共に生活をして、それなりに仲良くなれた気がする、と冬花は思う。
一緒に生活していて思った事だが、雪音さんには何処か百合っぽいところがあるらしい。
普段の生活の中でもやたら肌を触ってきたり、お風呂には必ず一緒に入ってくるし、1番やばかったのは雪音さんが酔っ払った時に布団に押し倒された時だなぁ。あの時は運よく眠ってくれたからよかったけど。
……しかしこの様な事があっても、冬花は別段嫌な気持ちにはならなかった。
同性でも惚れてしまいそうな美しさ、でもちょっと時々可愛いところがあるというか。性格も固そうに見えるけどお茶目なとこもあったりで、更には浴場で見たあの体つきも文句の言い様がなくなる程である。私が男なら間違いなく惚れていたであろう人、そうはっきりと言える。だから特に不快感は……。
まさかこれは私、既に百合の世界に毒されているのだろうか、いや、違う。ただ仲良くなっただけよね。
そう、色々な所にも連れて行ってもらえたし。
東京の美味しい洋食屋に連れて行ってもらったり、美味しいスイーツがある場所に連れて行ってもらったり……
あぁ! そう、お洒落な小物屋さんにも連れて行ってもらったではないか。
ふと思い出してみて、行った場所が全て食べ物関連だけ、というのは何か嫌な気持ちがするので、小物屋の存在を覚えておいてよかった、と冬花はひっそりと思った。
うん、なんとなくお姉さんって感じかな。神器と関係を持ち始めてから嫌な事も多々あるが、こうして家族が増えるというのもなかなかいいものだな、と思う。
これは当然冬花が勝手に思っているだけの事なのだが、それでも冬花はこっそりと幸せを噛みしめるのである。
「朝からなにニヤニヤしてるの? 冬花」
「え? あ、おはよう飛鳥」
朝のHRを上の空で聞き流し、気付けば友人の一人である飛鳥がおよそ2メートルの距離を経て冬花の席に遊びに来ていた。
「そんなにこれからある身体計測が楽しみだっていうの? あぁ……僕はもう心配で心配で朝を抜いてきたというのに」
ちなみに1人称が僕、などと抜かしているが一応女である。そう、ちょっと痛い友人という奴だ。
ちなみにちなみに、所謂腐女子であるが……それは割愛してもいいだろう。
……って、え?
「今……もしかして身体計測って言った?」
「あれ? もしかして忘れてた? 夏休み始まる前に僕と、夏休み後半はお互い絶食しようね、なんて誓い合ったのを忘れたっていうのか!」
いや、そんな誓いはどうでもいいとして……。
冬花は最近の出来事を思い出す。
美味しいオムライスに、雪音さん手作りケーキも食べた。物産では毎日欠かさず日替わりスイーツを食べていたし、打瀬さんが買ってきてくれたチーズレモンカスタードシフォンパイも雪音さんと半分ずつにするつもりが、残さず頂いてしまった。素直に謝ると、
「いいんですよ。また今度買ってきてもらいましょう」
と、あっさり許してくれたのは記憶に新しい。流石は雪音さんである。私だったら多分今すぐにでも食べた人に買いに行かせるぐらいはしないと気が済まなかっだろうに。
まぁそれはおいておくとして。
……体重に関しては嫌な予感しかしない。
「飛鳥! 下剤持ってない!? こうなったら脱水症状になるまで――」
「おい冬花! 花も恥じらう御年頃の女子高生がそんな大きな声でその続きを口にしたら軽量計どころではない、大事な何かが壊れてしまうぞ!」
「っ! いくらなんでも軽量計が壊れるほど太ってないわよ!」
失礼な! いくら悪友といえどもそこまで太ってる発言をされたらうっかり神器を出してしまいそうである。……出したことないけど。
そこまで行って冬花はまた頭を抱えて、大げさにはぁ~っと息を吐いた。
「冬花……息を吐き出したところで体重は軽くならないぞ? 22,4L吐きだすともしかしたら28,8グラム軽くなるかもしれないけど」
「もううっさいあんた。今のは別件の溜息よ」
「別件? なんだ、また弟君にぼこられでもしたか」
「……まぁそんなところ」
実際は違うのだが。
実は契約してから神器が体内に入ってから、冬花は1度も顕現に成功していな
いのだ。
山王、雪音が交代で稽古をつけてくれるというのだが、肝心の神器がない為、予定どまりとなっている。冬花としても申し訳ない気持ちで一杯なのだが、どうにもうまくいかないのだ。
これでは契約した意味が、そしてもっというならば神器を持った意味がまるでないことになっている。
それがうまくいかないから自棄になっちゃって色々食べすぎちゃったんだろうなぁ、等と冬花は思い、そして頭を振る。
違う違う。こんなのは言い訳だ。たかが食欲すらも自制できないから神器も顕現できないのよ! でもなぁ……。
山王さん曰く、体内の血液を1点に集中させる感じだそうだ。力は入れずに、だけど自然と力が滾ってくるような。男だったら分かりやすく説明できるんだがなぁ、と言っていたがその意味は教えてくれなかった。
そして雪音さんは契約をしていないのであまり顕現についての話は聞けなかったが、どうやら雪音さん曰く、神器というのは最早自身の肉体の延長線上の物であるという認識だと教えてくれた。つまり神器を身体から出すのではなく、身体から身体の1部を取りだすイメージだということらしい。
どちらも顕現には欠かせないアドバイスであり、しかしそれを以ても顕現できないとは……。
始業のチャイムが鳴り、飛鳥は席に戻っていき、まずは1時間目の数学が始まる。そして問題の身体計測は2時間目に始まるらしい。
少女に今出来る事はなく、ただ上の空で高校生らしく数学の授業をうけていた。
「……体重、61,0キロです」
――冬花の魂は半分近く口から出かけていた。
そして体重を測定した保健室のお手伝いさんもその数字には驚きを隠せていなかった。
「冬花……この夏休み何をやればここまで体重を増やす事が出来るの? これなんかやばい病気かなんかじゃ……」
友人の飛鳥の声で冬花は正気を取り戻した。だがまだ正気と言えるかは怪しい。
「そ、そんな訳……訳ない……な、なんで……」
この保健室には同性しかいないのだ。いざとなれば一糸纏わぬ姿になるのも厭わないと覚悟していたが、最早その程度の軽量では意味をなさないレベルの体重であった。
「確かにおかしいわねぇ。でも故障でもないみたいだし……」
冬花が降りれば服の分の体重が差引された値に戻る。決して故障などでは――。
――!!
「すいません。放課後また来て測り直してもらってもいいですか?」
心当たりがある。そして改善できれば私の体重はもっと軽くなるはずだ。
「別にいいですけど……」
お手伝いさんもやや困惑していたが了承してくれた。それもそうだ。放課後までの短期間で何をするつもりなのかというところだろう。
測定が終了し、教室に戻ったところでまだ2限が終わるまでには時間がある。
「ちょ、冬花どこにいくのさ!」
友人の存在を無視して冬花は授業中の他の教室を横目に廊下を通りぬけ、人気のない屋上まで通じる階段まで走った。屋上は出入り禁止であり、ある種の物置きと化していたのでここの階段は普段誰も近寄らない場所となっている。そこで冬花は携帯を片手に持つ。
「もしもし?」
『はい。なんでしょうか冬花ちゃん』
かけた先は雪音の携帯。2人で暮らしている時に番号を交換した賜物である。携帯の扱いを全くと言っていいほど分からず、主に掛って来た電話を取るぐらいにしか使えないらしいが、取り敢えず無事にでてくれたことに安堵し冬花は肝心の質問をする。
「神器って身体に入れていたらその分体重って増えるんですか?」
『そうですね。増えますよ。冬花ちゃんの場合鑓ですからね、かなり増えてるんじゃないでしょうか』
やっぱり!
「なるほど、わかりました。ありがとうございます。お仕事中にお邪魔してすいませんでした。では」
そして冬花は携帯から耳を放す。その行動には急いで放課後までに顕現が出来るようにしないといけない、それと仕事の邪魔をしてはいけない、といった焦りから来ていた。だから雪音の
『あ、でも――』
という発言は冬花には届く事はなかった。
授業中。
「集中して……」
国語の時間。登場人物の心情を汲む事無く集中する。
「身体の1部を動かすイメージで」
情報の時間。掌はキーボードを打つ事無く、ただじっと冬花に期待の眼差しをむけられたまま、しかし何も起こる事がなかった。
「……冬花、普通に食べるんだね。これから絶食でもするのかと思ったけど」
昼休み。飛鳥の言葉も無視し、コロッケパンを片手にイメージする。いつもならそろそろ諦めてる時間だが、今日ばかりは諦める訳にはいかない。
「飛鳥。こう、力を入れないけど、力をいれる感じ。ってどんな感じか分かる?」
「いきなりどうした我が友人よ。……まぁわかんないけど――」
「あ、できた……」
「っておいぃ! こういうのって友人の何気ない一言から進展するんじゃないか?返して! 僕の友人ポジションの存在意義を返して!」
飛鳥弥生。やっぱり面白い友人である。私もそれなりに漫画に精通している方だから何が言いたいかは分かる。
主人公が苦悩している時に友人の格好良い台詞から主人公はまた新たに成長をする、という漫画のお約束がある。
「でも飛鳥……あんたは勘違いしてる」
「な、なんだ、僕が友達じゃないとでも言うのか……?」
「んーん、……私は主人公とかじゃないってこと」
「あ、そうだね」
「納得するのはえぇー」
そう言ってゲラゲラと笑う。
真面目に悩んだ所で結局はこんな馬鹿話に発展するのが関の山である。
……まぁ結局顕現はできていない。
でも学校で友人と馬鹿をやる時間というのも必要だろう。お陰で少し気が晴れた。気持ちを切り替えて、なんとか次の体育の時間でコツが掴める事に期待するとしよう。
なんというか、意外や意外。体育の時間でそれは成功してしまった。
苦労を重ね、やっとの思いで出来た! という感動的なものとは残念ながら違った。
言ってしまうと、本当にくだらない事で悩んでいたのかと鬱になりそうだが、それでも言ってしまうと、バスケットでインターセプトをする際に、もう少しだけ腕が伸びれば、と思った瞬間それは出た。
鑓の先端部分。日常生活には似つかわしくない不吉な黒い刃物が伸び、ボールを破裂させてしまった。
一瞬呆気に取られ、しかし大事になる前に、急いで誰からも見られない速さで体内に戻した。神器を収める事は初めに一度体験しているだけあって何の苦労もなく出来たのが唯一の救いであった。
ボールが唐突に破裂したことによりコートが騒がしくになっている混乱に乗じ、先生に見つからないように体育館を後にした。
向かう先は屋上まで通じる階段である。
そしてついさっき感じた感覚を忘れないうちに、もう1度実践して――。
「っ、は、はは。できた! できた!」
掌からは鑓の一部がのぞいている。更にその調子で体内の神器を顕現させ、やがてゴトリ、と音を立ててそれは床に落ちた。
見かけ、そして落下音から物凄く重たい物だとも思えたが、持ってみるとプラスチックでできたものの様に軽かった。
「……これが神器……いたっ」
針状の部分を手でなぞるとそれだけで皮膚に赤い線が走り、そこから血がぷくりと出てきていた。
鋏、包丁、今まで接してきた刃物という刃物のどれも、この様に力も入れず触れただけで肌を裂く事などなかったというのに。神器というのはどれ程現実離れした凶器なのだろう。
久々の再会とでも言うのか神器を目にしたのは数週間ぶりである。何度か顕現が全くできず、契約なんてしたのは夢だったのでは、等と思ったが、目の前のこれはしかし何処までも現実的であった。
手に持ってみて、そして少し構えてみる。鑓の形状をした武器なら何度か使ったこともあるし、多少は勉強している。構えもなんとかだが様になっているだろうと自負していた。
しかしここはあくまで階段。悠々と振るにはあまり適当な場所ではないだろう。
「取り敢えずここに置いておこう……」
文化祭のどこかの団体が作ったまま処分されなかった置物などが乱雑に散らばっているここになら鑓がこっそりあっても誰も何とも思わないだろう。
というかこんな生徒の立ち寄らない場所に何があっても問題にはならないだろう。
「これで……よし。放課後の身体測定はばっちりね……」
にしても身体が重い。全身がだるい。つい先程までは感じなかった疲労感が何故か今身体中を支配している。
と、そこで思い出した。顕現には神器の大きさに応じて体力を消耗する。確かに山王さんが言っていて私も暗唱してみせた中にその様な1文があった。
……契約をしているユーザーの人達はみんなこの様な状態で戦っているのか。まだまだ私なんかでは戦う事すら満足にできそうにない。
果たしてこんな事で由真を止められるのだろうか。由真は初めてあの銅像を顕現した時には普通に動いていた。だが私はまだまだ走る事もできそうにない。
このまま保健室に行って、身体がだるいからと言って休ませて貰おう。
冬花は鑓をその場に残し、そして保健室へと足を進めていった。
無事に保健室にたどり着いて、ついでに体重の測定もし直して貰い、全てが丸く収まった。ちなみに体重は案の定増えていたが気にしない。というかできる状態ではなかった。
「どう? 具合の方は」
「……」
「寝てるのかしら。もう、最近は保健室を仮眠室だと勘違いしてる人が多いんだから……」
喋り返す程の気力もない。それ程までに冬花は衰弱しきっていた。あれから一向に体力が回復しないどころか、むしろ疲労感が増してきているかのような錯覚すらも覚え始めている中、冬花はただカーテンに囲まれたベッドに体操服のまま横になっている。
熱もないものだから保健室の先生も仮病だと勘ぐっているだろうが、今はそんなことどうでもいい。冬花は何か思考することも放棄し、ただ横になる。
「失礼します。冬花はいますか?」
急に聞き慣れた声がして、冬花の意識はその声に向く。
「あぁ、保護者の方ですか? そこで眠っていますよ。恐らく疲れていただけだと……ってちょっと」
その保護者は保健医の忠言に耳を貸すことなく、そして唐突に冬花のいるベッドのカーテンを開けた。冬花はおぼろげな瞳のままその闖入者を見やる。
「雪音……さん?」
険しい表情のまま雪音は後ろ手でカーテンをまた閉めた。そしてその背後には以前見た布の袋が目に入った。
「これをしまって」
その声は今までになく落ち着いて、そして緊迫した事態を窺わせる静かな声色であった。
袋から手に取りだしたのは冬花が契約している神器。それは今、屋上近くの階段に潜ませているものであるそれであった。思考する余裕もない冬花は取り敢えず言われるまま神器を掌から収納する。
「……良かった。とりあえず今日は帰りましょう。冬花ちゃん」
よいしょっと、といって雪音は冬花を抱え上げる。体操服のまま、大人の女性に抱えあげられる女子高生。
その持ち方は何故か御姫様抱っこという奴である。なんだろう、ユーザーの人達はお姫様抱っこがデフォルトなのだろうか、そんな事がちらりと冬花の脳裏によぎる。
この体操服で、そしてこの生足を晒したまま、更にこんな二の腕を晒されたまま歩き回るというのもなかなかの羞恥である。
カーテンをピシャリと開け、雪音は冬花を抱きあげたまま、そのまま保健室を後にしていた。
保健医が驚いたような呆れた目で雪音を見送ったのを冬花は目撃した。
それもそうだ。挨拶もなく、急に保健室に入ってきたのかと思えば、生徒を抱きあげそして何も言わず去っていくのだ。それに肩には長物が仕舞われている袋を担いでいればそれは怪しい目で見送るというものだ。
いや、それとも案外雪音という人物に目を奪われているだけかもしれない。
「雪音さん、あの、恥ずかしいんですけど……」
できるだけ周りを見ないよう、また見せないよう顔を雪音の胸に埋める。体操服姿のまま学内を、しかも御姫様抱っこのままうろつかれるのは冬花としても今後の学生生活に支障をもたらす程の恥をさらしているのでは、と不安に駆りたてられながら、しかし自分で歩く元気もない。取り敢えずは声だけで抗議をしておく。
「……」
雪音は無言のまま学校の敷地を後にする。冬花としては教室に置きっぱなしになってあるカバンやらまた制服の回収をしたかったのだが、今の雰囲気に口を挟むのはできそうになかったので、大人しく雪音が降ろしてくれるのを待つ事にした。
御姫様抱っこはある種のトラウマになりつつあると思いながらしかし意外にも心地いいこの抱擁に身を任せ、冬花は目を閉じる事にした。
いつの間に眠っていたのか、冬花は見慣れた部屋のベッドの上で目を覚ました。
夏休みが終わる前、物産が新しく由真にばれない住居を用意してくれるまで御世話になった雪音のマンションである。
「冬花ちゃん……気付いて本当に良かったです……!」
雪音はずっと横で見守っていたのか、冬花が身体を起こすとすぐさま横からタックルよろしく飛びこんできた。
「あ、すいません。私眠っちゃってたみたいで……」
身体にある倦怠感は驚くほどに消えており、冬花は夢でも見ていたのかとも思ったがそうでもないらしい。
その証拠に冬花は体操服のまま、ベッドに横たわっていた。
「冬花さん、神器と契約した以上、離れすぎると今回の様に衰弱して、下手をすれば命も落としかけない事態になります。よく覚えておいて下さい」
「命、ですか……」
「今回はそうでもありませんでしたが、もう少し遅れていたら大変な事になっていました。気をつけてくださいよ?」
どうやらこの人は本気で私の事を心配してくれているらしい。一緒に生活している時からそれは知っているが、わざわざ学校まで駆けつけてくれるとは思ってもいなかったので、その心遣いが素直にうれしい。
「にしても……どうして鑓を隠してる場所が分かったんですか?」
確かに生徒が近寄らないのは当然、部外者はその存在すら知らないだろう場所だと思っていたのだが。
「これも慣れが必要なんですが、神器からの声、まぁ匂いと表現する人もいますが、それが聞こえたからです。努力次第ではすごく離れた場所にある神器の居場所が分かる事もできる……そうですよ。本部の人達は最低でも10キロメートルは離れた場所の神器も感知できる、とか言ってたかな……」
本部、と言われて冬花が真っ先に思い当たったのが先日お世話になった黄村咲羅である。
……本当にあの人ができるの?
あの謎の人が?
「何はともあれ神器の顕現おめでとうございます。冬花さん」
「あ、はい! ありがとうございます!」
そうだ、今はそんな黄村などというショタコンなんてどうでもいい。そして体調もよくなったのだ。これから神器の修行がやっとできるようになるという訳だ。
「そんな冬花ちゃんにはご褒美が必要ですね? ほら見て下さい。特製ケーキですよ」
冬花ちゃんが起きてこなかったらそのまま御供え物になるとこでした、と冬花にしては笑えない冗談を呟きながらケーキをわざわざベッドのある部屋まで持ってきていた。
チョコレートクリームで塗りたくられたスポンジ、薄くスライスされたチョコレートでケーキの表面はコーティングされており、赤く形の整ったイチゴがいくつも載せられている。
きっとフォークを入れれば柔らかい感触、そして断面はチョコレートとスポンジの綺麗な層が隠されているのだろうが、冬花はそれを見て、
「……いえ、お気持ちだけで結構です」
なんということか断った。
仮にお腹が一杯でもう食べられないとしても今までの冬花なら、明日食べるので絶対に残しておいて下さい、などと言っていた冬花が無条件に断るというのは珍しい事である。
というか雪音は冬花が甘い物を断るのを初めて耳にした。
「冬花ちゃん……今日体重測定があったんでしたっけ? そんな事気にする必要ないですよ?」
「ってちょっと雪音さん! お腹触らないで……かといっておっぱいも触っちゃ……っ!」
「いいでしょ? 久々に冬花ちゃんが来てくれたという事で、ね?」
「あ、だ、んっ、――っ!」
「あぁ~やっぱり冬花ちゃん可愛い! どう? やっぱり私の部屋で一緒に生活しませんか? 甘い物も食べ放題ですよ? 少しぽっちゃりしてる方が私好みですよ?」
……。
ユーザーにおいて。
やはりまともな人格者というのは存在しないのだ、期待するだけ無駄だ、と冬花は胸に強く誓ったのであった。
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@追記:改行が変になってたので直しました。