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覚悟

さっさと本題入れって人がいると思う



覚悟とは何か。


それは人を殺す覚悟だろうか。


それとも、現実と直面する覚悟だろうか。


もしかして、自分の現実を壊す覚悟だろうか。


どれが正しくて、どれが間違っているのか、そんな事すらも彼女は教えてくれない。

それでも覚悟を持てというのなら。


先程までの風格が嘘のように怠けた顔をして眠る彼女は、一体何を覚悟したのだろうか。











【覚悟】










チャイムが鳴った。


キーンコーンと、何時までも変わらない音が二度なり、廊下から賑やかな声が消え、静かな空気が部屋の中を占める。


既に5限目が始まっているだろう時間、そんな時間に和は保健室で考えていた。


自分が一体何をしたいのか、そして何が嫌なのか。


自分には何かを捨てる覚悟はあるか?


自分には傷つく覚悟があるか?


―――いや、ないだろうな。


と、自分で思い至るのに時間はかからない。


そんな覚悟があれば昨日の時点で考えは決まっていた筈だ。


現実を捨てる覚悟なんて出来ない、出来るわけがない。


しかしそれでも、そんな現実が嘘だと言われてしまえば、今までの思い出が作り物だと言われれば、戻りたいとは思えない。


矛盾した我侭な感情、それは本心であり、逃げでもある。


これが逃げだという事は分かっている、分かってはいるのだ。


けれど今までの現実を捨てたくは無い、だけど機械にはなりたくない。


そんな相反する二つの考えが和の思考を空回りさせていた。



「……一体どうすりゃ良いんだよ」



嘆くように、諦めるように溢れた言葉は行き場をもたない。


どうすれば良いのかを知っている人はいない。


どうするのが最良なのかを教えてくれる人もいない。


でも、と和は彼女を見る。


布団の上、そこに眠りスヤスヤと寝息を立てる先輩。


彼女、一ノ瀬柿音は知りたいことを知っている。


知りたい事も、知らないといけない事も、知っているからここにいる。


そんな彼女は言った。


知りたいのなら覚悟しろ、と。


安全がない、危険だとも、怪我をするかもしれない、と。


それは一体どんな覚悟だろうか。


どんな覚悟を持ち何をすれば怪我をするのだろうか。


分からない事が多すぎる、けれど知るには覚悟を決めるしかない。


堂々巡り、まさにそれだろう。


知りたければ覚悟を決めなければならない、覚悟を決めるには詳しく知りたい。


終わる気がしない考えの連鎖、しかし放棄するには大きすぎる問題。


考えれば考えるほどに深い沼へと沈んでいくような感覚がする。


深く、深く、考えるほどに抜けられない沼。


そんな考えから逃げる事は出来ず、気がつけば、キーンコーンと、五限終了の合図が鳴り響いた。


そして、



「学校終了!さて、移動するよーん」



柿音が飛び出るように布団から飛び出し、こちらへとウインクする。



寝起きの行動とは思えない


「……起きてたんですか?」


「いや、今起きたとこだよ」


「その割には動きが冴えてますね」


「眠気なんて自由に変えられるからね、寝たい時に眠たくなって、起きたい時に眠気を消すよ」



普通は逆なんだけどな、と和は思わず苦笑を零し、


そして、そんな現実的ではない事を言われて納得出来るほどに理解を示している自分に少し驚く。


最初はあれだけ戸惑っていたのに、今となっては苦笑出来るほどに慣れてしまっている。


慣れるのが早い、そんな一言で済ませられない異常な速度。


何だかんだと言いつつ心の内では、何時の間にか認めていたのかもしれない。


そう思うと少し前向きに考えられた。


世界の見方が変わるような問題にも、気づけば慣れているのだ。


だからきっと、もう少しすれば考えも纏められるだろう。


ほんのささやかな希望、しかしそれは思考を落ち着かせる事を可能とした。


「それって、俺も出来る様になるんですか?」


「結構難易度高めだけど、暫くすれば簡単に使えるようになるよ」


「他にはどんな事が出来るようになるんですか?」


「色々出来るよ……そうだ、今日は能力を見せようか」


「―――は?」


「うん。そうだ、そうしよう。何が出来る様になるかも分からないんじゃ、何ができるかも分からないしね」



ちょっと待って、そんな言葉を言うよりも早く、彼女は行動に移していた。


ポケットから携帯を取り出し、電話をかけ始める。



「……あ、先生?今日なんだけどさ、彼に出来る事を教えたいから、ちょっと演習所使ってもいいかな?」


「……あの、先輩?」



取り付く島もない、まさにそう呼べるのだろう。


こちらの意見は耳にすら届かず、柿音は話を進める。



「うん、丁度良いから今から行こうかと思ってるんだけど……え、サボってないってば」



楽しそうに話す彼女、そんな姿だけを見れば、彼女は間違いなく美人。


癖のある髪の毛も艶があり、整えてしまえば綺麗に映える。


瞳は理知的で、スタイルも良い。


化粧もヘアメイクもしていない素の状態でも映える彼女は、飾ればもっと綺麗になるのだろう。



「うん、じゃあ今から行くからさ。準備よろしくねー」


「…………」



しかし、そんな美人相手にも普通に話せているのは、その相手に殺された覚えがあるからか、それとも彼女の性格か。



「よし、じゃあ行こうか。カバンとって来て5分後に校門集合ね」


「……わかりましたよ」



ため息を吐きつつも断れないのは、やはり同じ理由なのだろうか。






テスト終了・・・・・・次は入試


時間が欲しい、才能が欲しい、発想が欲しい。


そんな今日この頃、遅い更新でありました。

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