7/7
越境
橋は永遠に遠ざかる一つの境界線
そこを踏み越えれば
憤怒と倦怠は散逸し
寂寥と郷愁は忘却される
魔術的な光の街
失われていた視力も回復し
幻覚と象徴は形相を得る
この街の道をゆく人々は
歩きながら立ち止まり
立ち止まりながら歩きだし
横断歩道で歌を歌う
また取引をする人々は
声や肉体を売りながら
採算度外の値引きをしながら
詩幣の上で歌を歌う
とある会議の参加者も
長い議論を経た後で
意見がまったく一致せず
苦笑しながら歌を歌い
横切るふたりのカップルは
互いのことを何も知らず
互いに名前も呼び合わず
歌を歌いつつ別れ去る
そして公園のテラスでは
十四歳のひとりの少女が
ロートレアモンを読みながら
微笑みながら歌っている
歌は風を巻き起こし人々の上に降り注ぐ