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推しの幸せシリーズ

ヒロインに転生したしたけど、推しが攻略対象外!〜ルートがないなら作ればいい!〜

作者: 雨の日
掲載日:2026/03/28


アンジェラ・カランデュラは困惑していた。


ここは、前世で愛読していた小説

『王立ダーストリアム学園』の世界。

そして自分は、そのヒロイン。


この物語のメインヒーローは2人。

勇者、ジン。

聖魔法使い、カイト。

どちらも輝かんばかりのイケメンである。


しかし、アンジェラの前世の推しは…

聖騎士、バードであった。


聖騎士バードは、短い白銀の髪と真紅の瞳をもつ厳つい無表情系騎士である。

その雰囲気と鍛え上げられたゴツい肉体で怖がられる事が多い、という設定だ。


小説がアニメ化した際、スラっとした分かりやすいイケメン2人の影に隠れ人気はイマイチであったが、“私だけが彼の良さを理解できるの”層の女子たちにハマり、密かな人気を集めていたキャラである。


前世のアンジェラも、その層の人間であった。



物語の展開としては、聖女アンジェラと仲間たちが悪を倒すために力を合わせる。という分かりやすい冒険譚である。


少女向けであったので、メインヒーローのジンとカイトとアンジェラの三角関係も描かれていた。

一緒に旅をするのに、バードだけ蚊帳の外である。

アンジェラとバードの関係は友愛の表現で終わっていたのだ。


しかし、ジンが闇落ちし、カイトに息の根を止められる。

という鬱展開後、アンジェラとジンへの罪悪感からアンジェラを遠ざけるカイトの恋愛模様が展開された時、一部の界隈はざわめいた。


ワンチャン、バードルートあるんじゃね?と。


ところがアンジェラは最終回の数話前に突然現れた新たな美形ヒーローの手を取るのである。


なんでだよ!と当時のアンジェラ(転生前)は盛大にツッコんだ。


カイトとの関係に涙するアンジェラをバードが慰める場面で

「バードと一緒になれたら、幸せなんだろうな…」

と言っていたのに!

あれは明確なフラグではなかったのか!



ねぇアンジェラ、ちょっと見た目の良い男が現れたからってそれはないんじゃない?恋愛脳が過ぎるだろう、と当時思っていたのだ。



そのアンジェラに転生しているのだ。

それを思い出したのは入学式の数日前、寮へ入寮するために学園を訪れた時だった。

アニメ化の際に何度も見た風景に、一気に前世の記憶が蘇ったのだ。




「ラミー!」

入学から数ヶ月。アンジェラは友の名前を呼び彼女の元へ駆け寄った。

「アンジェラ!」

と手を降る友人、ラミ・レミルバは子爵令嬢。男爵令嬢のアンジェラとは家格が近いのもあるが、共に田舎育ちという共通点で一気に仲良くなった。


ラミに駆け寄った勢いのまま、彼女の左腕に自身の右腕を絡ませる。

キラキラ煌めくラミの蜂蜜色の瞳が、仕方ないなぁと細められるのが、アンジェラは好きだった。


キャーっという黄色い声が聞こえ2人で振り返ると、そこにいたのはジンとカイトであった。

とにかく目立つ容姿の2人は、ちょっとしたことで女子達の黄色い声援を受けているのである。


「相変わらず凄いねー」


と他人事の様に言いながら、視線は違う場所を彷徨う。

黄色い声援と女子達の人混みの中でも、アンジェラは不思議と彼を見つけることが出来た。


(居た…!)


トクンとアンジェラの胸が高鳴る。

カイトとジンの友人として、共に行動しながらも黄色い声援の輪から外れているバードが、アンジェラにはキラキラ輝いて見えた。



「ラミ」

不意に側で聞こえた声に、右腕がグッと引っ張られた。

ジンがラミに絡みに来たのだ。


どういう流れでこうなったのか、ラミ自身も分からないらしいが、ジンは入学してしばらくしてから、こうしてラミにチョッカイをかけるようになった。


「ジン先輩!やめてください!ラミが固まってます!」

ギャーギャーとアンジェラはジンと言い争う。

その後現れたカイトの仲介によって、無事ジンから解放されたラミは、キラキラとした瞳でカイトを見つめ頬を赤らめている。

ふむふむ、ラミは王子様系のカイトがタイプなのね。と思っていると、不意にカイトが話しかけてきた。


「君も、いつもジンが友人に絡んですまない。さっきの様に遠慮なく言ってくれてかまわないから。なぁ、バード」

そう言って後ろに声をかけると、コクリと頷くバードが現れた。

「アンジェラ嬢、迷惑をかけるな」

渋いバリトンボイスがアンジェラの耳に響く。


推し様が!アンジェラの名前を認識していた!

いつの間にかラミに絡みつけていた腕を外し、アンジェラはフラフラとカイトとバードの側による。


「バード先輩…とカイト先輩。ジン先輩のあれ…何ですか?」

何とか推しとの会話を続けようと、必死に捻り出した話題は、やっぱりジンの事だった。

ラミに絡むのはいけ好かないが、こうした話題を提供したのだ。次回からは少しだけ優しくしてやろう、とアンジェラは思った。




事態が急展開したのは、目の前に落ちている紙を踏んですっ転ぶというドジっ子ラミの膝にハンカチを押し当てた時だった。

ハンカチを持つ右手が急に熱を持ち、眩しい光を発したかと思うと、ラミの膝の傷が完治していたのだ。


呆然とラミと見つめ合っていたはずのアンジェラは、気づけば教会に連れられて、きれいな透明の石に手を置くように言われていた。

そうして、石に手をかざしたアンジェラの右手が再び光を放った後、アンジェラは聖女と認定されたのである。

原作の予定より1ヶ月ほど早い展開だった。



聖女となったアンジェラの生活は一変した。しがない男爵令嬢が持て余すほど広い部屋を与えられ、皆が恭しく頭を下げる。

あの日、傷を治してから、ラミとはまともに顔を合わせていない。


「すっごい…寂しい…」


1人の広い部屋でポツリと呟いても、当然誰も答えてはくれなかった。


その時、コンコンと遠慮がちに扉が叩かれる。

はい、とアンジェラが答えると、扉が開き、バードが顔を出した。


「バード先輩!?」

驚きと嬉しさで、アンジェラはバードに駆け寄る。

「………平気か?」

労るような、優しい声だった。

そうなのだ、バードは見た目が厳つくて誤解されがちだが、とても優しく気遣いのできる紳士なのだ。

「あはは…まぁ、はい」

そう答える声が少し震え、アンジェラは下を向く。

「自分は卒業後、この教会の聖騎士として勤めることが決まっている。今後は、学園でも教会でも、自分がアンジェラ嬢の護衛に付くことになった。顔見知りが付いたほうが聖女も過ごしやすいだろうとの配慮だ」

その言葉に、アンジェラは顔を上げる。

それはつまり、推しが私を守ってくれるということ…?

そんな…そんなのって…


「最高だわ!」


思わず心の声が口から溢れ出し、両手で口を押さえる。


「アンジェラ嬢?」

「あっ、いや。最高な配慮だなと、はい」

「そうか」


コクリと無表情に頷き、「では、扉前に控えているので何かあれば呼ぶように」と言い終えると、バードは扉を閉めた。


その日から、四六時中バードと行動を共にするアンジェラは夢心地であった。

バードはとにかく気配りの出来る紳士で、アンジェラが部屋で1人淋しくしているのを察すると、扉の前で話し相手になってくれたり。

男子禁制の祭事の後には、自由時間があったから、と以前アンジェラが食べてみたいと言っていたスイーツを買ってきたり。


これで好きにならないほうが可笑しいレベルの気遣いであった。





おや?と思ったのは、横領罪により捕縛された人物が小説の黒幕にあたる人物と聞いた時だった。

なんでも黒魔術師としても才があったその男が、魔王を呼び出し操作し、王国を乗っ取る計画を立てていたらしい。と教会に捜査依頼が来たのだ。


かの人物の邸宅の地下には、確かに禍々しい魔法陣があり、浄化作業の為にアンジェラも派遣された。


そして思った。

これ、完全にフラグ折れてない?物語の導入が始まらない感じ?と。



捜査官に話を聞くと、真相を暴いたのはたまたま外遊に来ていた隣国の公爵令嬢と、カイトであるらしい。


そうして思ったのだ。

あっ、公爵令嬢、転生者だな、と。



しかしアンジェラは特に不満はなかった。

ジンはラミに絡んでくるいけ好かない男だが、死んでほしい訳ではなかったから。


というか、ラミに執着している様子を見ると、アンジェラに恋焦がれ闇落ちする要素は1ミリもない。

もちろんアンジェラも、ジンとカイトに挟まれて困っちゃう…なんて展開になる気は更々無かったが。



まぁ、つまり。

物語は始まらないのだ。

と、言うことは…このままバードルート開拓しちゃっていい感じだよね?

そう結論づけて、アンジェラはバードに振り返る。


「どうした?」

「バード先輩、好きです」


ガヤガヤと捜査陣が行き来していた地下室が、シーンと静まり返り、皆が動きを止めた。


全員の心はきっと同じ事を考えていただろう。


え、それ今言うことじゃなくない?と。



「……………。その話は、今じゃないと駄目か?」


無表情のバードが答える。その耳が赤くなっているのに満足したアンジェラは

「いえ、後でまた」

と微笑んだ。


その答えを待っていたかのように、再び地下室はざわめきを取り戻す。


「若いっていいねぇ」「青春だ」「俺も若い頃は…」


そんな会話を聞きながら、浄化を終えたアンジェラは地下室を後にした。





教会に戻り、女神様に祈りを捧げる。

これは毎日の日課であり、先ほど穢れを祓って疲弊した聖力を回復させるために必要な事だった。



祈りを捧げ終えて目を開けると、アンジェラの身体はキラキラと光を帯びている。

祈りの後はいつもこうなる。

聖力が満ちた証だ。


「いつ見ても神々しいな」


いつもは見守るだけで口を開かないバードがそう言った。


「ふふっ、ありがとうございます」


そう言いながら、スッと右手をバードに差し出す。

聖女の活動の際に着る白いシルクのロングドレスは、段差を降りる時にエスコート必須なのだ。



心得たように、バードは頷き自身の左手を差し出しアンジェラの右手に触れると…

そのままアンジェラの前に移動して跪いた。


「アンジェラ嬢…」

バリトンボイスにアンジェラの胸が震える。

「先ほどの話の続きですか?」

アンジェラが問うと少し顔を赤らめたバードが頷いた。



「自分で、いいのか?」

短い問いに

「貴方じゃなきゃ、嫌なんです」

と返した。


「生涯の忠誠を、貴方に誓います」

そう言って、アンジェラの指先に唇を押し当てる。

少しガサガサした熱さが、アンジェラの指先に広がった。









原作でアンジェラが結ばれる予定だった紳士

「俺には超絶美人の運命の人がいた気がしたが、そんな事はなかったぜ!!」

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