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異世界フルオフライン  作者: 玄界魚


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第6話 電気の本

 昼、村の中を少し歩いた。


 昨日は状況を把握するので精一杯だったが今日は余裕がある。

 何人かの村人に声をかけ生活のことを聞いてみた。


 話はどれも似たような内容だった。


 日が昇れば畑に出る。

 日が沈めば家に戻る。

 夜は基本的に何もしない。


「暗いですからねぇ」


 そう言って皆同じように肩をすくめる。


 この村には電気という概念がない。

 改めてはっきりと分かった。


 夜の明かりは火だけだ。


 自分たちで起こすか、

 それが難しければ――


「ああ、あの人に頼むんですよ」


 村人が指差した先には少し離れた場所に建つ小屋があった。


「魔法使いのハタケヤマさんです。火だけは上手で」


 どうやら簡単な火起こしの魔法が使えるらしい。

 ただし常に頼れるわけではない。


 体調が悪い日もあるし機嫌が悪い日もある。

 万能な存在ではないようだ。


 話の流れで俺は聞いてみた。


「夜に作業できる場所ってありますか?」


 一瞬、村人たちが顔を見合わせる。


「空いてる小屋は少ないですね」

「でもあの人なら……」


 再び名前が出る。

 魔法使いのハタケヤマさん。


 紹介されて小屋を訪ねた。


 年配の男で無精ひげを生やしている。

 見るからに研究肌という感じではない。


 事情を話すとおじさんは少し考え込んでから言った。


「一晩だけならいいですよ」


 条件は簡単だった。

 物を壊さないこと。


 それだけ。


「助かります」


 深く頭を下げるとおじさんは面倒くさそうに手を振った。


「夜は暗い。灯りの火は使っていい」


 その一言で十分だった。


 夜になり借りた小屋に腰を下ろす。


 外は真っ暗だ。

 だが、誰にも覗かれず邪魔も入らない。


 作業できる環境がある。

 それだけでありがたかった。


 ノートPCを慎重に取り出す。


 目的は一つ。

 電気の知識を確認すること。


 電気・工学フォルダを開き最初のファイルをクリックする。


 電気工学基礎


 画面に記号と数式が並ぶ。


 V=IR

 P=IV

 抵抗、電圧、電流……


(……なんだこれは)


 頭の中で単語が跳ね回る。

 単位、概念、式の意味。


 すべて理解できそうで、理解できない。


 次のページを開く。


 エネルギー変換工学


 人力、熱、風力のエネルギー変換。

 図と数式がびっしり並んでいる。


 人力で発電する場合の出力計算。

 摩擦、抵抗、損失。


 式自体は見たことがある。

 だが条件が多すぎる。


(……む、無理だ)


 正直心が折れそうになる。

 今の環境ではとても再現できない。


 しばらく考えた。


 知識は確かにある。

 だが、理解できたとしても今すぐ使えるわけではない。


 ここで深追いすればバッテリーだけが減っていく。


 冷静に判断する。


 今日は確認だけ。

 夜はこの小屋で休む。

 電気は後回しだ。


 知識は確かに手元にある。

 しかし今すぐ使える道具ではない。

 これは長期的に使うための設計図だ。


「……よし、段階を踏もう」


 リュックにノートPCを戻し息を吐く。

 今日の作業はここまでだ。

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