表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界フルオフライン  作者: 玄界魚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/40

第38話 見張れない

 翌朝。


 広場には誰もいなかった。


 村はいつも通りに動いている。

 畑に向かう者、川へ行く者、子どもたちの声。

 昨日の余韻はすでにない。


 俺はその場所に立ったまましばらく動けずにいた。


(冷やした)


 川の水は確かに冷たかった。

 腐りはしなかった。

 だが――守れなかった。


 匂いに寄ってきた獣。

 夜の間に減っていた中身。


(干した)


 表面は乾いた。

 触れば割れるほどだった。


 でも中は湿ったまま。

 朝にはカビと虫。


(温めた)


 毎晩火を通せばいいと思った。

 理屈は合っていた。


 だが人が持たなかった。

 夜は眠いし続けるほど負担になる。

 毎日は無理だった。


(全部やった)


(でも残らなかった)


 頭の中で失敗を一つずつ並べていく。

 やり方は違う。

 原因も違う。


 でも引っかかるところは同じだった。


 ――夜だ。


 昼はなんとかなる。

 人がいる。

 目が届く。


 でも夜になると手が離れる。


 見られない。

 気づけない。


「夜は寝るもんだ」


 誰かが言っていた言葉を思い出す。


 当たり前だ。

 誰も悪くない。


 俺たちは「どうやるか」ばかり考えていた。


 冷やす。

 干す。

 火を通す。


 でも――


「夜の間どうなっているか」


「目を離しても大丈夫か」


 そこをちゃんと考えていなかった。


(人が起きてない前提の方法じゃないと)


(そもそも続かない)


 ハタケヤマさんの顔が浮かぶ。

 無理をして笑っていたあの顔。


(助けてもらった)


(でも、頼り切る形じゃだめだった)


 俺は、ゆっくり息を吐いた。


(やり方が悪かったわけじゃない)


(頑張りが足りなかったわけでもない)


(夜を考えてなかった)


 広場を見渡す。


 昼の光。

 人の動き。

 生活の音。


 でも夜になれば、

 全部が一度止まる。


(夜の間でも大丈夫な仕組み)


(誰も見てなくても大丈夫な状態)


 それがない限り、

 また同じ失敗をする。


 俺は小さく呟いた。


「……先に考えるべきことが、あったな」


 火の使い方でもない。

 保存の工夫でもない。


 その前に――

 夜をどう乗り切るか、だった。


 まだ答えは見えない。


 でも。


 何が噛み合っていなかったのかははっきりした。


 また一つ、

 できなかった理由が増えた。


 それでも――

 確実に前には進んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ