第5話
早くからこのスペースが空くことを予測していた蕭智堯は、いつの間にか右後方から飛び出し、右ウイングよりも高い位置、よりサイド寄りの深い位置を取っていた。次にどうすべきか分からずにいた李向名は、ボールを呼ぶ声に反応して素直に右へ展開した。蕭智堯はボールを受けて右サイド深くえぐったが、左ウイングや他のフォワードがタイミング良く合わせて上がってきていないことも把握していた。
だが、李向名はペナルティスポット付近に現れた。近くにいた二人のディフェンダーよりも体半分ほど前に出ている。彼は何も深く考えず、この一連の動きをただの「ワンツー(壁パス)」の延長として捉え、完結させようとしていたのだ。
蕭智堯は迷わずボールを浮かせた。クロスはカバーに入った左サイドバックの頭上を越え、ゴールエリアの手前に絶妙な軌道で落ちていく。近くにいた二人のディフェンダーは、この「センターバック」が猛然と飛び込み、額でボールを叩くのをただ見送ることしかできなかった。ボールは乾いた音を立ててネットを揺らした。
「ナイスボール!」チームメイトたちが狂喜乱舞して駆け寄り、二人を抱きしめて歓声を上げた。このあまりにもシンプルで直接的な攻撃に度肝を抜かれたのは、対戦相手の英理の生徒だけではない。理善のチームメイトたちもまた、呆気にとられていたのだ。
そう、実のところ蕭智堯が強引に行こうと思えば、寄せてくるディフェンダーを一人残らず抜き去ることもできた。たとえ三、四人に囲まれたとしても、ほんの数タッチ余分に時間がかかるだけの話だ。
だが、それをやってしまえば試合は「一対十一」になってしまう。さらに、チームメイトに「自分たちは蕭智堯の引き立て役でしかない」という不信感を与え、当事者意識を奪ってしまうことになる。それは彼の望むところではない。
だから彼にとって、李向名との連携で敵の守備網を切り裂くことが理想的な結果だったのだ。これによりチームメイトに伝わるメッセージはこうだ。「基礎さえしっかり練習すれば、連携次第で誰でも同じことができる」。
英理の助教は言葉を失っていた。だが彼は知っている。蔡與榮が自分のチームがこのまま崩壊するのを黙って見ているはずがないと。このまま放置すれば、子供たちの自信は大きく損なわれてしまうだろう。
「俊緯にアップさせろ。」蔡與榮はもう一度深く息を吸い、感情を無理やり落ち着かせようとした。李向名がターンで二人のセンターバックをかわし、蕭智堯が右サイドのスペースに飛び出した瞬間から、彼はこの攻撃がゴールに繋がることを予感していた。
「あ……はい。」
『最後のあのヘディング、あんなリスクのある攻撃手段をこうも鮮やかに決めるなんて。あの13番は本当に……』
キックオフを待つために自陣に戻る途中、蕭智堯は英理のベンチに目をやった。予想通り、あの男が出てくるようだ。
司徒俊緯。
「え? あれって……あいつ英理に来てたのかよ?」
「誰だ? 司徒俊緯? あのU-13の……は? あいつとやるのか?」
香港の未来を担うと期待される新星、英理書院の最強の武器が、試合前には誰もが一方的な虐殺になると予想していたこの試合に、ついに投入される。
「ああ、昔小学校の時にやったあいつか。」議論を耳にした李向名は、ちらりと視線を向けた後、蕭智堯に言った。
「そうだよ。あいつ、最後は尚智小を率いて全港優勝までしたからな。」蕭智堯は苦笑した。
「あの試合で負けてから、老魚がしばらくシュート練習に打ち込んでたっけな。フン。」李向名は軽く鼻で笑い、センターバックのポジションへ戻っていった。
「センターバックに戻るのか?」
「ああ、この流れだとあいつもすぐに出てくるだろうし、後ろを手伝わないとな。」李向名は颯爽と手を振り、そのまま最終ラインへと歩いていった。
蕭智堯は止めなかった。李向名をフォワードに上げたのはあくまで奇襲であり、一度見せれば次はそれほど効果的ではないと判断したからだ。
それに司徒俊緯が出てくれば、中盤は間違いなく劣勢になる。その時、李向名が守備を安定させる方が理にかなっている。
この場にいる誰一人として知らない事実がある。十六年後、二十八歳になった司徒俊緯はすでに三年も香港代表キャプテンを務め、代表チームを偉業へと導くことになるのだ。
イギリス留学中に小学校卒業を待たずに帰国したこの司令塔は、最終的に海外リーグ挑戦という夢こそ叶わなかったものの、その実力は間違いなく香港サッカー史上最高の中盤選手の一人と呼べるものだった。
『問題は……』蕭智堯はピッチサイドで無表情に出番を待つ小柄なミッドフィルダーを見つめ、心の底から湧き上がる疑問を噛み締めた。『今の僕で、彼と渡り合えるのか?』
……
香港では長年サッカーの普及活動が強化され、クラブチームと連携した体系的なユース育成により全体のレベルは向上している。しかし、依然として学歴社会の圧力は凄まじく、多くの保護者が低学年のうちから過密な学界大会に参加させることに反対していた。また保護的な観点から、多くの小学校では五、六年生になるまでサッカーやバスケットボールの学校代表チームを設けていなかった。
三人は小一の頃から団地の空き地で知り合い、毎日サッカーをしていたが、小六になるまで正式に肩を並べて戦う機会はなかった。
当時、余仁海と李向名の二人は前線と後方を固め、小学校の大会で無双の強さを誇っていた。逆にドリブルを得意とする蕭智堯には活躍の場があまりなかった。なぜならチームの戦術方針は、「あらゆる手段を使って、一刻も早く余仁海にボールを集めること」だったからだ。
小学校の地区予選はノックアウト方式で、参加校が少ないため複雑なリーグ戦はなかった。最初の三試合を大差で勝利し、チーム全体に「俺たちは無敵だ」という空気が漂っていた。
「次の相手は尚智小学校だ。去年は全港ベスト4まで行って、深水埗でも何度か優勝している強豪だぞ。」体育教師が言った。
「へっ、強豪だ? 俺よりすげえ同い年の奴なんて見たことねえよ。」そう、余仁海は小学生の頃からすでに口が悪かった。
試合前、体育教師はさらりとある情報を伝えた。動揺させたくないが、知っておいてほしかったのだろう。「相手にはイギリスから戻ってきたばかりの天才選手がいるらしい。向こうでもちょっとした有名人だったそうだ。」
最初は誰のことかと皆思っていたが、その答えはキックオフの笛から一分も経たないうちに判明した。相手がいきなり中盤へパスを出すと、その選手はドリブルで英理陣内へ一直線に突っ込み、立ちはだかる全員を抜き去ってゴールを決めたのだ。
普段は明鏡止水のように勝ち負けに淡白な李向名でさえ、明らかに動揺していた。相手の中盤選手に、極めてシンプルなフェイント一つで完全に騙され、抜き去られたからだ。
相手の守備陣も余仁海のゴールを完全には防げなかったが、中盤を完全に制圧された状況では、数少ないロングパスから数点を返すのが精一杯だった。彼にまともなパスが供給されることはほとんどなかったのだ。
最終スコアは4-10。完敗だった。
ハーフウェーラインさえ越えさせてもらえない圧迫感。相手の中盤にボールを持たれた時の、掌の上で遊ばれているような無力感。蕭智堯は十六年後の今でも、それを鮮明に覚えていた。
後になって知った。その平凡な外見で、背も同年代より少し低い中盤の司令塔の名前が、司徒俊緯だということを。
彼はその年、尚智小を全港大会へと導き、破竹の勢いで勝ち進んで学校史上初のタイトルをもたらし、彼自身もU-13香港代表に選出された。
……
蔡與榮はサイドラインでいくつかのハンドサインを出し、最後のウォーミングアップをしている司徒俊緯に歩み寄った。キャプテンが見たところ、今の陣形と戦術を維持し、司徒俊緯が入ってから通常のスタイルに戻すという意味だろう。
「アップは念入りにやれ。手抜くんじゃないぞ。試合の勝敗はどうでもいいが、お前に万が一のことがあっては困る。」
「……分かってます。」
「味方が辱められているのを見て、早く出たいと思うのは分かる。だが感情的になるな。相手がお前と比べてどうであれ、彼には学ぶべきところがある。何事も謙虚に吸収する姿勢を忘れるな。」蔡與榮の視線はピッチ上の蕭智堯を追っていた。内心では、この13番の少年が司徒俊緯よりも優れていることを理解していたが、もちろんそれを口には出さなかった。
『蔡先生、内心では思ってるんでしょう……彼の方が俺より上だって?』
「……」蔡與榮は意外そうに彼を一瞥し、一瞬言葉に詰まった。「お前自身はどう思う?」
「全くレベルが違いますよ。ボール扱いの熟練度が俺より遥かに上だ。ビジョンも、デシジョン(判断)も、驚くべきレベルです。」司徒俊緯は地面に座り、無表情でストレッチをしながら言った。「去年対戦した時はまだ素人丸出しだったのに、この一年でどれだけ苦労したのか想像もつきません。」
「学問に王道なし(学海無涯苦作舟)。この年齢こそ吸収し学習する最高の時期だ。それだけ覚えておけ。」
「やっぱり、蔡先生も内心では彼の方が俺より上だって認めてるんですね。」司徒俊緯は珍しく微かな笑みを浮かべた。
「お前のプライドが高いのは知っている。だが隠すつもりはない。自分の長所と短所を知り、長所を伸ばし短所を補うよう努力する。それこそが真のスポーツマンシップだ。」
「分かってます。」
理善のフォワードが危険なエリアでスルーパスを受けた。半身になって強引にシュートを放ったが、体勢が崩れて修正できず、ボールは大きく枠を外れた。貴重な決定機を無駄にしてしまった。
蕭智堯は気にするなとチームメイトを慰めたが、内心ではこれがリードを広げる千載一遇のチャンスだったかもしれないと思っていた。
笛が鳴った。平穏な表情の司徒俊緯がタッチライン際に立ち、交代するチームメイトと手を叩いて入れ替わると、軽やかな足取りでピッチへと駆けていった。




