夏の思い出
カブトムシ君は森の中で元気に暮らしていました。
ある時、少年がカブトムシ君を捕まえました。
狭い虫かごの中に入れられたカブトムシ君は、最初は不満でした。
自然の中みたいに自由に飛べないし、得意の喧嘩だって、できません。
けれど、少年の優しい心に触れるに連れて、段々とこの生活も悪くないのではないかと思ってきたのでした。
少年はカブトムシ君を大切に飼育しました。
部屋の温度を適度に保ち、昆虫マットも定期的に交換しました。
でも、カブトムシ君の寿命はそう長くはありません。
身体はどんどんと弱っていきました...
そして、ついにその日は来ました。
少年は、心を込めて、カブトムシ君のお墓を作ってあげました。
泣いている少年を見て、カブトムシ君は思いました。
「僕を飼ってくれたのが、君で良かった」
少年との生活は、短い間だったけれど、カブトムシ君はとても幸せでした。