第1話
高校2年の姉と中学2年の弟。
姉と弟の日常を描いた物語。
母「忘れものないー?」
明人「ないー。行ってきまー。」
今日から新学期。
神崎明人13歳。普通の男子中学生。
上白銀学園に通っている。学園は中高一貫校の共学で生徒数も1400人。
中高一貫校だけで珍しいのに…
夏美「遅いよっ。明人ー。」
明人「遅くねーよ。普通だって。」
同じ学校に姉がいるということだ。
姉の夏美は高校2年生。
新学期から生徒会に入り、今日は朝早く登校し挨拶運動をしていた。
夏美「あんたも2年生になったんだから、しっかりね。」
そう言いながらオレの襟元を直してきた。
明人「分かってるよ…あんまり…」
オレは姉から少し離れた。
夏美「はいはい。じゃあ、頑張ってね。」
明人「へいへい。」
弟のオレが言うのも変だが、姉は学校でも美人の部類に入るらしい…実際、学校でも何度か告白されてるみたい…
姉弟と知ってるのは一部の人だけ。変な噂が立たないとも限らない。
校舎に入り、掲示板に貼り出されている名簿を確認し教室に向かった。
教室に入ると、知ってる顔がちらほらといた。
拓馬「よお。また同じだな。」
明人「ああ、そだなー。」
石田拓馬。中1の時同じクラス。まぁまぁ仲が良い。
拓馬「また、姉ちゃんに絡まれてたなーw」
明人「見てたのかよ…。」
拓馬「あんな姉貴いたら毎日ムラムラ…」
明人「あー、はいはい。」
こういう輩は少なからずいる…いや結構いるか…。
日奈子「明人くん、おはよ。夏美、生徒会に入ったんだよね。」
明人「あ、うん。そう。」
西田日奈子。中1の時は別のクラスだが、よく家に来て姉と遊んでいる。まぁ幼なじみみたいな感じ…。
チャイムが鳴り先生が教室にやって来た。
出席番号順に自己紹介が始まりオレは普通にこなした。
それから授業が始まり、4時限目が終わった昼休みのこと。
自席で弁当を食べようとしていると、クラスの男子が話しかけてきた。
明人「…えっと…」
吉田「オレは吉田。まぁ1回じゃ覚えられないよな。…実はお願いしたいことがあって…」
明人「なに?」
吉田「これをお姉さんに渡してほしいんだ…」
吉田が渡してきたのは紙を四つ折りにしてテープで留めたモノ。
その紙の表面には「神崎夏美さん」と書かれていた。
明人「んー、せっかくなら自分で渡したら?」
吉田「…いやぁ、高等部って行きづらくて…」
明人「はぁ、分かったよ。返事は期待するなよ。」
吉田「う、うん。ありがと。」
このラブレターの受け渡しは去年もあった。
姉には全ての手紙を渡したが内容を見たか分からないが全部断わっている。
そして放課後。
掃除やプリントの運搬などを先生に頼まれた。
「神崎夏美の弟」っていうだけで真面目な優等生とでも思っているのか…
オレは先生からの用件を済ませ、ようやく校舎を出た。
校舎を出てすぐ、後ろからタッタッと誰かが走ってくる音が聞こえた。
夏美「はぁ、追い付いたぁ。」
明人「わざわざ走らなくても…」
夏美「走りたい気分だったのw一緒に帰ろ。」
そのまま姉と一緒に帰ることに。
夏美「どうだった?初日は?」
明人「ん。まぁ、普通。」
夏美「なにそれw」
少し間が空き、
夏美「…部活やらないの?」
明人「うーん…」
夏美「やってくれたら嬉しいけど、明人の決めることだしね。私は続けるよ。生徒会と兼用だけどね。」
明人「…そうなんだ。忙しいね。」
小学校の頃、姉と一緒にミニバスをやっていた。とはいっても一緒にやったのは1年ぐらい。
姉はバスケが上手く、オレは姉の姿に憧れで始めたような感じだった。
一緒に帰っていると馴染みの公園が見えてきた。
夏美「あっ。」
姉は何かを見つけ駆け寄った。
夏美「誰か忘れていったのかなぁ。」
公園の入り口で姉はバスケットボールを拾った。
公園には誰もいない。
夏美「ねぇ、ちょっとやってかない?」
明人「は?誰かくるかもしれないし、ってかそのまま(スカート)でやるのかよ?」
夏美「誰もいないから大丈夫って。」
姉はドリブルしながら公園に入っていった。
オレは姉に聞こえない声で、
明人「いや、オレがいるんだけど…」
公園の奥には今にも倒れそうなバスケットゴールがある。
バスケットを始めた時は姉とよく練習をしてた。
姉はブレザーを脱ぎ、鞄と一緒にベンチに置いた。
姉のやる気の姿にオレはやれやれと思いながらも鞄を置き、ディフェンスの姿勢をした。
夏美「じゃ、いくよー。」
姉はドリブルしながらジリジリと近づいてきた。
次の瞬間!姉はスピードを上げオレの左側を抜きにきた。
オレは姉のスピードに付いていけず、
明人(やば、抜かれる…)
オレは咄嗟に左手を伸ばした。
すると手を伸ばした先に姉の胸があり、一瞬だが姉の左胸を鷲掴んでしまい、
明人「…あっ‥。」
夏美「…っ。」
姉は少し怯んだが、そのまま強引にドリブルしランニングシュートを決めた。
姉が着地した瞬間、スカートがフワリと膨らみ白色のパンツがチラリと見えた。
夏美「へへーん。私の勝ち。」
オレは姉の胸を触ったことに動揺してしまい黙ってしまった。
姉は察して、
夏美「えっと、相手の身体に接触するのはよくあることだから。まぁ次は気を付けてね。」
明人「え、あ、うん。だ、大丈夫?」
夏美「うん、全然平気。ちょっとビックリしただけだから。はは…」
なんとなく気まずい雰囲気になった…
夏美「じゃあ明人、罰ゲームねw」
明人「え?そんな約束…」
夏美「勝負とはそういうものだよw」
姉の胸を触って少し罪悪感があり、しかたなく姉の罰ゲームを受けることに。
明人「はぁ…無理だったらやんねーからな。」
夏美「大丈夫。カンタンカンタン♪」
姉はオレに近づいてきて、
夏美「また…お姉ちゃんって呼んでくれる?」
明人「?…それだけ?」
夏美「そ。それだけ。」
予想外の内容にキョトンとした。
…でも、いつからだろ…お姉ちゃんと呼ばなくなったのは…
昔はよく「お姉ちゃん」って。姉の後ろに付いていってたな…
明人「お、お姉ちゃん……これでいいか?」
改めて言うと恥ずかしさが込み上げてきた。
夏美「え、うん…」
明人「なんだよその反応。自分から言い出したくせに。」
夏美「ごめん…なんか久しぶりに聞いたからさ。で、どうしたのかな?弟くん。」
姉がウザ絡みしてきた。
明人「ウザっw…。」
夏美「酷っw」
オレは鞄を持ち、
明人「あー、疲れた。帰ろぜ、夏姉。」
夏美「!…うん。」
夕陽のせいか、その時の姉の笑顔が可愛く見えた。
それにしても…
明人(…柔らかった…)
姉の胸の感触がまだ左手に…
帰宅後。
夏美「ただいまー。」
母「おかえり。あら一緒だったの?2人共遅かったわね。」
夏美「え、うん。ちょっと公園で…。」
明人は何も言わず、自分の部屋がある2階へ。
夏美「明人ー。手ぇ洗いなよ。」
明人「あとでー。」
私は洗面台で手を洗い、
夏美「母さんは今日早いんだね。何か手伝おうか?」
母「大丈夫よ。ご飯もうすぐだから着替えてきて。」
夏美「うん。」
母はパート勤務で、遅い時は19時過ぎくらいに帰ってくる。
遅い時は私が夜ご飯の準備をして、3人で食事をしている。
父は更に帰宅時間が遅いので、その日に顔を合わせないことはよくあった。
私も2階の自分の部屋へ。
バタンとドアを閉めて、ベットへ仰向けに倒れ込んだ。
夏美「はぁー。」
夏美(‥明人‥あれってワザとだったのかなぁ‥)
私は明人に触られた左胸に手を置いた。
一休みしたあと、私は制服を脱いで着替えを始めた。
鏡に写った下着姿を見て、
夏美(‥ちょっと大きくなった?‥太ったのかなぁ‥)
ブラジャーの肩紐をクイッと引き上げスウェットと短パンに着替え1階に降りた。
明人も降りてきていて、3人で晩御飯食べ始めた。
しばらくすると玄関のインターホンが鳴り私が出ようとすると、
母「いいよ。私出るから。」
夏美「うん。」
母は席を立ち玄関に向かった。
家に来たのは近所の人で、久しぶりに会ったのか母は世間話に花を咲かせていた。
すると、珍しく明人が話を振ってきた。
明人「さっきの公園…制服であんまりはしゃぐなよな。」
夏美「ん?なんで?」
明人「なんでって…スカートの…」
夏美「え?見えてた?」
明人「…ああ」
夏美「ホントに…?」
明人「ホントだよ。」
夏美「じゃあどんなだった?」
明人「どんなのって…白の…」
夏美「しっかり見てるやんw。明人のエッチィw。」
明人「誰が好き好んで見るかよ。そんな汚ねーの。」
夏美「酷っw。ってか汚なくないし。なんならもう1回見る?」
明人「は?見ねぇし…」
夏美「ホントにキレイなんだってぇ。」
明人「はぁ…わかったわかった。キレイキレイ…」
夏美「…よし。勝った。」
明人「なんだよ。このやりとりw。」
夏美「さぁw。」
不毛なやりとりをしてその日の晩御飯を終わらせた。
母はまだ近所の人と喋っていた。
夏美(ながっ!まだ喋ってる…)
明人は部屋に戻り、私も食器の片付けを終わらせ部屋に戻った。
私は部屋で宿題をしていると部屋のドアをコンコンとノックする音が、
夏美「なにー?」
ドアを開けて入ってきたのは明人だった。
てっきり母と思っていたので少し驚いた。
夏美「どした?やっぱりパンツ見たくなった?」
明人「ちげぇよ。…これ渡すの忘れてた。」
明人は折りたたまれた紙を渡してきた。
私は明人の顔を見て、
夏美「え?ラブレター?」
明人「オレじゃねー。…クラスのやつ。預かってきた…」
夏美「なーんだ。」
私は手紙を受け取り、机の上に置いた。
明人「…中見ないの?」
夏美「うーん…。そだね。やめとく…」
明人「そっか…」
少し間が空き‥
明人「…好きな人とかいるん?」
夏美「もしかして恋話?」
明人「茶化すなよ…。」
夏美「んー…いるような、いないような。」
明人「なんだそりゃw。」
夏美「……彼氏とか作った方がいいのかな?」
明人「知らねー。それぐらい自分で決めろよ。」
夏美「そだねwゴメン…」
明人は少し不機嫌そうに部屋を出ていった。
夏美(…好きな人…今は…まだいいかな…)
今は勉強に部活に生徒会とやることは沢山ある…明人のことも…
色々と思想して宿題が進まなかったが、明人と久しぶりにバスケできたことが堪らなく嬉しかった。