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愛はまやかし

読んでいただきありがとうございます。

真っ青な顔をしたリリーを馬車の扉を開けた御者が見つけた。

「お嬢様具合が悪いのですか、お部屋に入ってお医者様に診ていただきましょう」

「少し休めば落ち着くと思うわ」

とにかく一人になって自分を落ち着けたいリリーは御者に支えられながら馬車を降り自分の部屋に入るとベッドに飛び込んだ。



男ってやっぱり浮気をするのね、私だけだと言いながらあんなに綺麗な人とカフェに行っていた。婚約破棄したい。もう誰も信じない。一人で生きていきたい。マイナスな考えが次から次へと湧いてきて涙が止まらなかった。


メイドがドアをノックした。

「お嬢様、お食事の時間でございます」

「欲しくないわ」

「かしこまりました。後でスープでも持ってまいります。お医者様はお呼びしなくて大丈夫でございますか?」

「大丈夫よ、休んでいれば治ると思う」


ヨハンのことを忘れられるまでにどれくらいかかるのだろう。今回は婚約している。家同士の契約もある。あの一回だけでは浮気の証拠にはならないだろう。

幸い伯爵家だ、お金はある。探偵を雇おうかと思う。

けれど今は何も考えたくない。感情が底辺まで沈んでしまって浮き上がるまでどのくらいかかるのか見当もつかない。



暫くヨハンには会いたくなかった。




夜の帳が下りた頃母親が様子を見にやって来た。

「リリー、何があったのかは知らないけれどお食事は食べなくてはだめよ。スープでもいいからお腹に入れなさい。元気が出ないわ」

「ごめんなさい、お母様。何も欲しくありません」

「精神的なものかしら、そこまで追い詰められるということはヨハン君のことかしらね」

リリーは探偵を使って調べてもらうつもりだったので、重い心を押し殺しながら

帰りに見てしまった光景を話した。




「それは辛かったわね、でもそれが直ぐに浮気だと決めつけることはできないわ。これから調査をすれば直ぐにわかることだけど。本人の口から聞いた方がいいのよ」

「でもとても楽しそうな顔をしていたわ、私といる時には見たことがないような。その女性の腕がしっかりと纏わりついていたの。あれが浮気でなくても耐えられない」

「貴女は側を我が家の馬車で通ったのよね」

「はい、家紋入りの馬車で帰りましたので」

「そう、こんなに娘を泣かせた責任は取ってもらわないとね。貴女は暫く家で静養していなさい。向こうのお宅には疲れが出たようです、と言ってお邪魔が出来ないことをお伝えするわ。リリーは無理に結婚しなくてもいいのよ、私達が貴女用の財産を準備しているから、一生食べるには困らないわ」




こうしてリリーは体と心を休めることに専念した。


ヨハンは何度か花束を持って見舞いに来たようだった。

その度にまだ具合がすぐれないのでお会いできませんと断られていた。



✠✠✠✠✠



調査の結果が出た。ヨハンが一緒に歩いていたのは外国から遊びに来ていた従妹だったらしい。


十年ぶりに会ったらしく兄のように慕っていたヨハンにくっついて歩いていたらしい。婚約者のいる男性に必要以上に身体を密着させる意味がわかってやっていたとしか思えなかった。


リリーは決断を迫られることになった。従妹なら結婚も出来る。これが突きつけられた現実だった。





ヨハンと会って話をすることになった。いつまでも逃げているわけにはいかない。従妹ならまた会うこともあるだろう、その時に平気でいられるとは思えなかった。




お茶会はリリーの精神状態を考えて伯爵邸で行われた。

「元気になったかい?家の教育を詰め込みすぎたせいで倒れさせてしまってごめんね。ゆったりと進めるようにしなくてはと母上たちも反省していた」


「何度もお見舞いに来てもらってありがとう。会えなくてごめんなさい。

倒れた日に私貴方が綺麗な女性とカフェから出てくるのを見てしまったの。

こんなに私が勉強しているのに貴方は楽しそうだなと思ったら具合が悪くなってしまったの」


「申し訳なかった。でもあれは従妹だ。浮気をしたわけではない」


「とても嬉しそうな笑顔をしていたわ、私には見せたことのないくらいの。

私達上手く行っていると思っていたのだけど勘違いだったみたいね。

彼女と貴方を取り合って幸せになれるとは思えないから身を引くわ。どうぞお幸せになって」


「僕が好きなのは君だけだよ、リリー」


「無理をしなくていいのよ、従兄妹同士は結婚できるんですもの。どうして私に申し込みなんてしたの?友達のままで良かったのに」


「君が我が家で勉強してくれているのは分かっていたんだが、十年ぶりだからと言われて仕方なく街に連れて行くことになった。疚しさは少しもなかった。君なら分かってくれるという甘えがあったのかもしれない」


「カフェから出てきたとき我が家の馬車に気が付いていたでしょう?家紋が見えていたはずだわ。それなのに知らない振りをして腕を組んで歩いて行ってしまった。一言くらい何か言ってくれたら良かったのに。彼女が本命だったのね。再会なんてしなければ良かった。酷い人だわ貴方は、裏切らないと言ったくせに嘘ばかり。騙すのは楽しかった?もう二度と会うこともないわ、さよなら」


「違う、違うんだ。君を苦しめたかった訳じゃない。好きなのは君だけだよ。彼女は異常なんだ。自分以外が幸せになるのが許せないんだ。君に危害を加えられるのが怖くて言われるままに動いてしまった。結局、傷つけただけで守れもしなかった。ごめん」


「もういいわ、何を聞いても信じられない。あの時の貴方の顔幸せそうだったもの」


「ごめん・・・」

誤字脱字報告ありがとうございます。助かっています。

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