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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
ユリア前編
9/62

8 クライシス

⚠注意⚠ ヒロインへの酷い暴力があります


R15注意

 扉が開く。


 廊下からの光を受けながら、目を見開き青褪めた顔で立つユリアの姿があった。


 少女の声や物音が響いたのか、寝ていたはずのユリアが起きたようだった。


 シドはユリアが現れたことに気付いても、動くのを止めなかった。


 ふっ、とユリアの身体が傾いだ。顔色が悪いまま目を閉じているユリアは、シドたちの行為を目撃して失神したようだった。


 シドが動く。目にも止まらぬ速さでユリアの元まで辿り着き、腕の中で支えてユリアが床に倒れるのを防いだ。


 シドはユリアを抱き上げて寝台まで運んだ。


 シドは寝台の上にいた少女を蹴り飛ばして場所を空けると、他の女と使用した寝台の上にユリアを寝かせた。


 シドはユリアの夜着を乱していく。


 ユリアにはシドが睨んだ通り、少し被虐趣味があった。だからこそ自分のような加虐趣味のある男に惹かれたのだろうと思う。


 シドは片手でユリアの首をゆっくりと絞めた。


「うっ…… ううっ……」


 息苦しさを感じてかユリアが目覚める。起こすことが目的だったので、シドはユリアが瞼を開けた時点で首にかけていた手を離した。


 ぼんやりとしていたユリアの瞳が焦点を結ぶ頃には、ユリアも身の回りの状況を理解できたようで、再び顔色が青くなっていく。


 シドはユリアにのしかかり、強い力で押さえつけた。


「いやっ! やめてっ!」


 ユリアは恐慌状態になり暴れようとするが、シドの力には敵わない。


 番持ちの女の獣人にとって、番の身体以外のものは拷問に近い。


 ユリアにとってシドは番であり、本来であれば何の問題もないが、シドは他の女を抱いたばかりだ。


 獣人は番を決めたら番以外とは交わらない生き物なのに、あり得ないことが起こっていた。


 ユリアの頭の中はかなり混乱しているだろう。突き崩すなら今しかないとシドは思っていた。


 シドはユリアに他の女も抱くことを認めさせるつもりだった。ユリアは強く出れば言いなりになる。


 いつものように嫌と言いながらも期待を含む反応とは違い、ユリアはシドを本気で拒絶していた。


 シドはユリアの鼻をつまみ、一時的に匂いを嗅ぎ取りにくい状態にしてから関係した。


 ユリアは悲鳴を上げている。しかしシドを拒絶する心と、身体の反応は別だった。


「ユリア! 愛してる! 愛してる!」


 シドは叫ぶ。


 シドはユリアに愛着はあるし好意もある。愛していると言っていいだろう。


 ただ、唯一の存在じゃないだけで。


「ユリア、もうどうしようもないじゃないか! 俺が他の女と番った事実は消えない! お前は俺を受け入れるしか道はないんだ! こんなもの! 鼻を潰せばいつもと同じだ!」


 ユリアは床の上に転がる女がそうだったように、似たような反応を示している。


 女なんて全員同じだ。


「無理よ」


 ユリアが泣きながらそう言った。


「これから先、同じようになんてできない。あなたを愛せる自信がない」


「何だと?」


 ピクリと、シドの眉が不快そうに跳ねた。シドは全身から剣呑な雰囲気を醸し出している。


 ユリアはシドが気分を害しそうな時はいつも先回りをし、時には自分の意見も押し込めて、できるだけシドが快適に過ごせるようにと尽くしてきた。しかし、今回ばかりは怒りを隠そうともせず、シドを睨んでいる。


「裏切ったのはあなたじゃない! どうしてこんなことをしたの! あなたは獣人ではないの!? 獣人がこんなことできるはずがないのよ! あなたはおかしいわ!」


 反射的に手が出た。


 ユリアを殴ったのは初めてだった。


 寸前で顔に当てるのは避けたが、逸れた拳が肩に当たり、骨が砕ける音がした。


 明らかに痛みと苦しみにまみれたユリアの絶叫が、暗い室内に響き渡る。


 これ以上やったら殺してしまうと思ったから、二発目からは指先だけが背中を掠める程度にして、手を振るった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()くせに! お前がそれを言えた義理か!」 


 シドがそう叫んだ瞬間、痛みを訴えるユリアの声が一瞬だけ止まった。


 それ以降、ユリアはもう何も反論をしなくなった。


「俺は俺のやりたいようにやるだけだ! お前の指図なんか受けるか!」


 シドがユリアを折檻する音と、ユリアの叫び声がしばらく続いていたが、その声が聞こえなくなった時には、ユリアはまた失神していた。


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