7 鳴らない祝福の音
浮気回
R15注意
宴会の席では旅芸人の一座が余興を披露していた。シドの目の前で、身体の線を強調するような薄い衣装をまとった女たちが楽器の演奏に合わせて踊っている。
族長のシドは宴席の一番良い位置にいた。シドはそこから後方で踊っている十代前半ほどの銀髪の少女をじっと見つめていた。
人間でも獣人でも、銀の髪色をしている者は珍しい。
ユリアはシドが抱き潰してしまったため、現在二人が暮らしている家で寝込んでいる。その宴会には不参加だった。
シドは女たちが舞い終えた直後にやおら立ち上がると、その銀髪の少女に歩み寄った。
シドはその少女をいきなり自分の腕の中に抱き上げた。
少女は突然のお姫様だっこに驚いて悲鳴を上げているし、周囲の者たちも、シドの突飛な行動に何事かとざわめいている。
シドは降ろしてほしいと訴える少女の意見を完全に無視して、少女と二人で宴会を途中退席した。
シドが向かうのはユリアと二人で暮らしている家だ。家に来るまでに少女が泣いてうるさいので、「静かにしろ、殺すぞ」と一言脅すと、ピタリと大人しくなった。
寝室ではユリアが眠っているので、一階の客間に向かう。寝台の上に少女を放り投げてから明かりをつけようとして、ふと、顔が見えない状況の方が滾るなと思い直して手を止めた。
窓から入る月の光によって、銀色の髪の縁が輝いて見えた。暗闇の中で一部の嗅覚を遮断すれば、顔の造形はわからなくなる。顔の見えない銀髪の少女の姿を見ているだけで、宴会の最中から爆発しそうだった思いが膨らむ。
シドはニヤリと笑った。
そして、震えながら声を殺して泣く銀髪の少女に襲いかかった。
その少女は他の男の匂いがほとんど付いていない生娘だった。殺されるよりはマシだと思ったのか、少女はさしたる抵抗はしなかった。
けれど身体はガチガチに硬くなりずっと涙を流している。シドは銀髪の少女を苦しめたいのではなくて愛したかったので、彼女の身体を優しく撫でさすり、「愛してる」と何度も囁やきながら口付け続けた。そのうちに彼女の緊張も解れてくる。
シドはそろそろかと思った。
ユリアのことは全く頭の中になかった。
シドは彼女と一つになった。
だが、いや―――― やはり、と言うべきか、確実に番になったという状態なのにも関わらず、シドの頭の中で通常獣人が番を得た時に鳴るはずの音は鳴らなかった。
最初に女を抱いた時――ユリアを抱いた時――もそうだった。
シドは予め知っていた知識との差を感じて妙だと思い、ユリアに「音はしたか?」と聞いた所「音はした」という返事が返ってきた。
ユリアには鳴った、獣人にとっては祝福とも呼べる音が自分には鳴らなかった。
その後繰り返しユリアを抱くも音は鳴らない。ユリアのことは好きだが、ユリアは自分の本当の番ではないのだろうとシドは感じた。
ユリアは自分の真の番ではないのだ、と気付いた時から、シドは他の女ならば音がなるのか試してみようと決めていた。
たとえそれでユリアを泣かせることになったとしても。
たまたま目の前に情動が動いた女がいたので、抱いてみただけだ。
だが、ハズレだった。
けれど営みは問題なくできた。
シドは、番となるはずの最初の女以外を抱ける自分が、獣人としては奇異であることを自覚した。
それと同時に、番ではない女たちでも喜びを得られることに気付いた。
シドは声を立てて笑いながら少女の身体を弄んだ。
何も知らない無垢だった少女の身体が、自分の手によって侵略されて狂っていく。シドは獣人にとって至高の存在である「番」を得られない苦しみを、肉欲と征服欲で誤魔化すことにした。
シドはこの楽しい時間をまだまだ続けるために行為を続行した。