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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
キャンベル伯爵家編

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57 禁忌の子

⚠【注意】⚠ 近親交配注意、倫理観崩壊注意

「待ってたよ、父さん……」


 シドがその部屋に侵入した時、そのくすんだ朱色の瞳を持つ少年は、まるでシドが来ることをあらかじめ予期していたかのように、全く動じることもなくシドを迎え入れた。


 少年の髪色は本来シドと同じ赤髪であったが、彼は自分の母親と同じように、髪を染料で黒く染めていた。


 シドが少年の首に手をかけても、少年に抵抗する素振りは一切なかった。自らの運命をすべて受け入れるかのように、少年はそっとその瞼を閉じた。











******






 シドの両親はオリヴィアが行方不明になったあの襲撃の夜に死んだし、生き残った兄弟たちも、シドと衝突した挙げ句に殺されたり里を追い出されたりしていて、現在シドが居場所を把握している兄弟は、ララだけだった。


 窓を破って部屋に現れたララは、身体中に鎖を巻き付けていたが、それはただの鎖ではなかった。キャスリンが国に交渉してもぎ取った、武器庫に置いてある爆弾を幾つも括り付けた鎖だった。


 オルフェスがララを見て愕然としているのは、まるで死地にでも赴くような母親のとんでもない格好を見たこともあるが、それだけではない。


「シドっ! お前ぇぇぇッ! よくも! よくも()()! 俺のキルファを殺したなっ!」


 叫んだのはララだ。ララはシドに似て気性が荒く苛烈な人物であり、自らを「俺」と呼称する変わり者だった。


 キャスリンは、獣人とはいえ曲がりなりにも貴族の血を引いているオルフェスが、母親の影響で乱雑な言葉遣いや振る舞いをするようになっては堪らないと思ったらしく、早々にララから赤子のオルフェスを取り上げて、キャスリン自らがオルフェスの養育に当たっていた。


「そ、んな…… キルが…………」


 オルフェスは血色の悪い顔をさらに青白くさせながら呟いている。


 同じ獣人でも意識が朦朧としているギルバートは気付いていないが、オルフェスは今のララの発言に加えて、ララの身体から漂う、自身の異父弟キルファの亡骸を抱えて号泣しているララの匂いの痕跡を察知して、弟が既に死んでいると確信を得たようだった。


 オルフェスにとって異父弟キルファは、心の拠り所とも言うべき存在のようだった。


 キルファはイーサン亡き後に、ララが別の男の種で妊娠した子供だが、父親が誰かは不明とされている。


 そこには、ララが獣人であること以上に公表できない事情があった。


 イーサンとララは子を成したが、実の所二人は✕✕✕✕していない。最初はイーサンもそのつもりだったようだが、自分の最愛の女性を奪ったシドに似た顔の女では、✕✕ものも✕✕なかった。


 そこで思いついたのが、異国で方法が確立されたばかりの人工授精だった。イーサンは✕✕ならば問題なくできたので、()()()()()()()()()()()()()()をこの国まで招き、ララを妊娠させた。


 ララは現在でも鼻を焼いていない。ララが関係したことがあるのは後にも先にも、息子と同じ名を持つ最初の番キルファだけである。


 ララは博士が去った後に自己流で行なった人工授精で奇跡的に子供を身ごもった。ララは生まれた次男に自分の最愛の番と同じ「キルファ」という名前を付けた。


 ララの息子キルファの父親はシドだ。


 ララはシドに夜這いされた直後のキャスリンを何度か訪問し、嫌がるキャスリンから無理矢理シドの種を採取していた。


 ララは、自分と最強の男シドとの子供であれば、シドを上回る強さを持ち、憎き仇を必ずやぶち殺して復讐を果たしてくれるのではと、イーサン以上に狂気じみたことを考えていた。


 しかし、生まれてきた息子キルファはララの予想を大きく外れ、病弱な身体で生まれてしまった。


 キルファの失敗からララは二度とシドとの子供を作ろうとはしなかったが、偶然にもキルファがララの亡き番キルファにどこか似た面影を持っていたため、ララはキャスリンに取られてしまった長男オルフェスは放置して、次男キルファばかりをそれはそれは溺愛していた。


 そんな愛するキルファを殺したシドがララは許せない。


「なんでキルファを殺したんだよっ!」






『待ってたよ、父さん……』






「あいつが死にたがっていたからだ」


「そんなわけあるか!」


 シドはキルファを殺す際、目にも止まらぬ速さで首への一撃を入れていた。攻撃されたことを感知する前に絶命させることもできるシドの神業によって、キルファは苦しみを感じることなく安らかに逝った。


「お前、相変わらず馬鹿だな」


「何だとォォォッ!」


 シドの言葉にララはわかりやすく激昂する。馬鹿な奴ほど何とやらというが、シドはララのことが好きだったし、大事に思っている部分もあったので、自分との子供が欲しいのならば好きにすれば良いと、禁忌の子供を作り出す行動を止めもしなかった。


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