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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
キャンベル伯爵家編

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55 あの瞳

R15注意、暴力表現注意、無理矢理注意


フィオナ視点→シド視点

 フィリップの妹フィオナが部屋に駆け付けた時、既に状況は惨憺たるものだった。


「フィル兄様…… アリア義姉様……」


 肺のあたりを刺し貫かれてゼイゼイと呼吸しながら壁に張り付けになっている次兄フィリップは、意識はあるようだが吐血も含めた出血が酷く、命に関わる状況だとすぐにわかった。


 キャスリンの寝台の上で気絶しているアリアも、綺麗に整えられていたはずの髪型は崩れ、化粧も涙で濡れて全部ぐしゃぐしゃになっていて、何より、オルフェスの上着で際どい所は隠されていたが、破けたドレスからその下の白い肢体があらわになっていて、乱暴されたことが一目で丸わかりだった。


「逃げ、ろ……」


 声は床に倒れているオルフェスからだった。オルフェスの閉じられた片目からは際限なく血が流れていて、まるで血の涙を流しているようだった。


 オルフェスは片目以外にもシドに全身を痛め付けられていて、動けずに倒れていた。オルフェスのそばには彼の父――フィオナの祖父――の形見の銃が落ちていて、手首をあり得ない方向へ捻じ曲げられているオルフェスは、もうその銃を握れないようだった。


 オルフェス以外にも床には部屋に駆け付けた護衛たちが倒れていて、返り血は浴びていても全く無傷である様子のシドに、全員倒されてしまったようだった。


「逃げ、るんだ、フィー…… 俺たちじゃ、シドには、勝てない……」


 雷で打たれたように衝撃を受けた表情で立ち尽くすフィオナに、オルフェスが再び声をかけて逃げろと促す。


 言葉を発することが困難になっているフィリップも、視線だけで妹に逃げろと強く訴えていた。






 けれど、フィオナは前に向かって一歩踏み出した。











******






 シドは最初、用件は済んだとばかりに窓から退出するつもりだったが、近付いてくるキャスリンの孫娘に興味を引かれ、部屋の入口に向き直りフィオナの一挙手一投足を観察していた。


 フィオナは瞳の色こそ違うが、強い怒りと復讐に燃える、伯爵イーサンによく似たあの瞳――眩しく輝くような激情を宿したあの瞳――を、シドにぶつけてきた。


 幼いがドレス姿で美しく着飾っている凛とした佇まいの令嬢が、床に落ちていたイーサンの銃を拾い上げ、殺気まみれでシドに銃口を向けてきても、シドは真正面からその殺意を受け止めるつもりで微動だにしなかった。


 発砲音が続け様に放たれる。弾道は確実にシドの心臓を捉えていたが、シドはそれをひらりと躱し、そのまま一足飛びでフィオナの正面にストンと降りた。


 面白い獲物を見つけたと思ったシドは、フィオナを捕まえようと手を伸ばした。ところが――


(何だ、勘違いか……)


 シドがすぐそばに来たと認識するや、フィオナの表情は強張り、色素の薄い灰色の瞳に怯えと怖れの色が宿った。


 果敢にシドに向かってきた、貴族令嬢らしからぬあの気概と勇ましさは、すっかり消え去っていた。


(だが、まあいい…………)


 フィオナは、シドが愛したキャスリンをそのまま少女にしたような容貌をしていた。顔付きはもちろん、光を当てれば銀色に輝く灰色の髪もキャスリンそのもので、シドの好みだった。まだ子供だと思い見逃していたが、連れ帰って番の一人にするのも一興かと思った。


 シドはフィオナを抱き締めて捕まえた。


「「フィー!!」」


 床に転がるオルフェスと、苦しそうにしながも妹の危機に目を見開くフィリップの呼び声が重なって、部屋に響いた。


 フィオナの瞳が大きく見開かれる。シドはフィオナに噛み付くようなキスをしていた。口内を蹂躙されているフィオナの瞳から、ポロリと涙が一筋落ちた。


 シドが✕✕を服の上からフィオナの腹に擦り付けた、その時だった。


()()フィー様に何をしているんだこの腐れ外道がぁぁぁぁああッッ!!」


 仕事道具の斧を手にした銀髪翠眼の美丈夫――――キャスリンの愛人だと()()()()()()使用人ギルバートが、部屋の入口に現れた。


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