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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
キャンベル伯爵家編

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54 婚約式襲撃事件

R15注意、寝取り・寝取られ注意、一部グロ注意


三人称

 天候に恵まれたその良き日に、キャンベル伯爵邸では、キャスリンの孫であり家督を継いだばかりの少年伯爵フィリップ・キャンベルと、隣国の出身であるアリア・ミーラント伯爵令嬢の婚約式が執り行われていた。


 元々アリアは、今は亡きフィリップの兄フレデリクの婚約者でもあった。


 婚姻前にフレデリクが獣人との戦いで死亡した後、アリアはこの国の修道院に入っていたが、ぜひとも孫の嫁に、というキャスリンの要望を受けて、アリアは前婚約者の弟フィリップと結婚するために再びキャンベル伯爵家へとやって来た。


 若い二人を祝う身内だけのささやかな婚約式が行われていたが――――そこに赤い悪魔が現れた。


 単独で現れたシドは、婚約式が行われていたガーデンパーティの会場をめちゃくちゃにし、美しく着飾っていたアリアを攫った。


「アリアッ!」


「フィル! 違う! 森の方じゃない! 屋敷だ!」


 血相を変えてアリアを攫ったシドを追おうとしたフィリップを呼び止め、追うべき方向の違いを指摘したのは、伯爵家の私兵団長を務めるオルフェス・ロドニー十六歳だ。


 オルフェスは亡き伯爵イーサンが妾との間に作った私生児で、血筋的にはフィリップの叔父にあたるが、キャスリンが断固として夫イーサンの子だと認めなかったため、現状貴族籍はなく平民扱いだ。


 オルフェスは母親よりも父親似らしく、顔付きはもちろんイーサンに似ている。しかし男前だったイーサンに輪をかけ、美しさに数段の磨きが掛かっていて、抉り込むような美貌を誇っていた。


 オルフェスの漆黒の髪色と冴え渡る美しき碧眼アイス・ブルーはイーサンの生き写しとも呼べるものであり、おまけに声までイーサンにそっくりだった。


 キャスリンが認めずともオルフェスがイーサンの実子であることは周知の事実だった。


 フィリップとオルフェスが共に駆け出し、その後を伯爵家の護衛たちも追う。シドの行方を追う者たちの中には、フィリップの三歳下の妹フィオナの姿もあった。


「いけませんフィー様! お戻りくださいフィー様!」


 フィリップに良く似た灰色の髪と瞳を持つお転婆令嬢が動いたのを見て、キャスリンのそばでシドからキャスリンを守ろうとしていた、体躯の良い銀髪の青年ギルバート・ファレンシュタイン十八歳が叫ぶ。


 ギルバートはキャスリンのお気に入りであり、キャスリンの若いツバメ(愛人)ではないかと言われている見目麗しい使用人だ。


 ギルバートの制止も聞かずにフィオナは駆けて行く。


 キャンベル伯爵邸の中からはアリアのつんざくような悲鳴が響いてくるが、声は、なぜかキャスリンの寝室から聞こえてきた。


「アリア様!」


 最初に現場に到着したのは、フィリップよりも身体能力の高いオルフェスだった。


 オルフェスの眼前ではアリアのドレスが無惨なほどに引き裂かれていた。アリアは寝台の上でシドに✕されていて、悲痛な叫び声を上げていた。


 オルフェスはその光景を見て一瞬固まった。


 シドはちらりとオルフェスを横目に見てクスリと笑うと、アリアに種をまいた。アリアはその衝撃で気絶してしまった。


「貴様ァァァッ!」


 オルフェスの横を激昂するフィリップが駆け抜けて行く。フィリップの手には兄フレデリクの形見である細剣レイピアが握られていた。


 それは元々、フィリップたち三兄妹の父親と同様に、獣人に殺されてしまった母親の遺品でもあった。


「フィル! よせ!」


 オルフェスの制止の声も、加勢しようとする動きも、間に合わなかった。


 フィリップは攻撃を仕掛けたが、✕✕中にも関わらずシドに片手だけで細剣を奪われた。フィリップは直後に凄まじい膂力で身体を一突きにされ、背後まで吹っ飛んで、兄と母の形見の剣によって壁ごと串刺しにされた。


 張り付けにされたフィリップは、穢されてしまった愛する人の様子を、涙が浮かび始めた灰色の瞳で見つめ、激しく吐血していた。


「なぜこんなことを!」


 オルフェスはフィリップのそばに駆け寄り状態を確認しつつ、自分の上着を脱いで放り投げ、剥き出しのアリアの身体を隠した。


「復讐。ただそれだけだ。お前たちは愛する物を奪われる苦しみを、深く深く思い知るべきだ」


 シドはオリヴィアを失い日もまだ浅い頃だった。元はといえば、伯爵家が里への襲撃を企てなければこんなことにはなっていない、という恨みの感情は、シドの中では未だに根深かった。


 イーサンの孫が幸せになる道を歩もうとしていることを知り、全部ぐちゃぐちゃにして壊してやろうと思った。


()()()()()()()お前は、この程度で勘弁してやる」


 ずぶり、という音がオルフェスの脳内に響き渡り、同時に片側の視界が真っ赤に染まった。


 オルフェスもシドの動きに反応し、剣ではなくて咄嗟に掴んだイーサン()の形見の銃で迎撃しようとしたが、シドの動きの方が断然早かった。


 シドがキャスリンの部屋に置いていったイーサンの形見の二本の銃は、一本をキャスリンが持ち、もう一本はキャスリンによって、イーサンの妾に渡されていたが、オルフェスはそれを母から譲られ常に所持していた。


 シドは父親(イーサン)譲りのオルフェスの碧眼を抉り出すと、手の中でぐしゃりと潰してしまった。


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