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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
オリヴィア後編

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45 闘病

闘病の内容があります

 オリヴィアを一番に愛し、オリヴィアと交われない時は他の番どもを相手にして適当に発散をしつつ、年月が過ぎていった。


 ある時、いつものようにオリヴィアの家に行って抱こうとした時に、触れた胸に違和感があることに気付いた。


 オリヴィア本人も気付かなかった程度のものだが、ミネルヴァに診せると良くないものが出来ていると言われ、手術で患部だけを取り去った。


 術後しばらくはオリヴィアを抱けなかったので、シドはミネルヴァの許可が出てから、その分を取り戻すかのようにオリヴィアとの淫蕩生活を送った。


 すると翌年、今度は胎の方に出来物ができてしまい、それを取り去る手術をした。またしてもオリヴィアに自覚症状はなく気付いたのはシドだったが、オリヴィアの匂い――特に体内の匂い――はシドでも探りにくく、もっと発見が遅かったら取り返しがつかないことになっていたと言われた。


 シドはミネルヴァの助言の下、オリヴィアとの性生活を改め、あまり激しくしたり無理をさせないようにすることにした。一歩遅かったら死んでいたなどと言われてしまえば、流石のシドでも胆が冷えた。


 シドにとってオリヴィアは自分の命の一部のようになっていた。


 オリヴィアがいなくなったら、自分は生きていけない。


 大事に大事に、真綿で包むように大事にして、それまでの監禁も緩め外の空気も頻繁に吸わせて気分転換もさせていたのに、今度は最初に出来物ができた胸とは逆の胸に病巣ができた。


 シドは自分の愛しい女の身体に巣食う病魔を憎々しいと思ったが、威嚇した所で病魔がオリヴィアの身体から逃げていくわけでもない。


 ミネルヴァは新しく病気の見つかった片方の胸を取るべきだと言っていたが、シドはそれを許さなかった。


 オリヴィアの身体はシドのもので、病魔などにくれてやるものかと思った。


 シドはミネルヴァや他の医師たちに何とかしろと凄んだり、人間社会でその分野に精通している医師を数人拐かして里に引き込んだりして、オリヴィアの治療に当たらせた。


 オリヴィアは胸がなくなってもいいから生きていたいと言ったが――それはシドのためではなくて幼いヴィクトリアのためだと気付いたが――そこら辺は無視して、シドの意向に沿う形で難しい手術が行われ、病巣は取り除かれてオリヴィアは回復の兆しを見せた。


 ところが、その大手術の翌年、またしても胸に出来物ができてしまった。今度は胎にも同時にできていて――――


 治しても治しても、オリヴィアをあの世へ引きずり込む意図があるかの如く、病魔がシドの愛しい女の身体を襲った。


 死んだらただ土になるだけだと思っているシドは、神も幽霊も信じてはいなかったが、この時ばかりは、オリヴィアの最初の番である憎き男テオが、自分の女を取り戻すべく、オリヴィアを死後の世界へと引きずり込もうと働きかけているのではないかと思ってしまった。


 治療は続けられたが、オリヴィアは段々と弱っていった。


 胸や胎だけではなく、身体の別の箇所にも出来物ができてしまった。完治は難しく、オリヴィアの余命を告げてきたミネルヴァを、シドは思わず殺しそうになってしまった。


 シドが手を振り上げた所でミネルヴァの番アギナルドが飛び出してきて守ったが、アギナルドは大怪我を負った。


 ミネルヴァを殺してしまうとオリヴィアを診られる腕の良い女医がいなくなる。シドはミネルヴァを殺さないでおくことにしたが、歯嚙みする思いだった。


 シドは医師たちに様々な手段を講じさせて治そうとしたが、既に手の施しようがなくなっていたことはシドも感じていた。


 シドが医師たちに「命懸けで治せ!」と発破をかけた効果もあったのか、オリヴィアは当初の予想よりも長く保ったが、それでもその時は否応なくやって来た。


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