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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
オリヴィア後編

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43 不快な生き物

 サラカヤ死亡後、あれほど大切にしていたのに殺すとは―――― と、シドの番たちや、惨事に慣れている臣下たちですら、シドに対して恐れの情を抱いていたようだったが、シドに表面上の変化は特になかった。


 シドにしてみれば、いらなくなったから捨てただけのことだった。


 むしろ、明日は我が身と思って、周囲者たちがシドに変わらない忠誠を違うのであれば、サラカヤの犠牲も意味があったかと思えた。


 嫁という特別がいなくなっても、自分にはオリヴィアがいる。より大切で特別な存在がいるのだから、女の一人や二人いなくなった所で何の問題もない。


 ユリアの家を焼き払って以降は、シドを責めてくるあの嫌な夢も見なくなった。シドは、何にも囚われずに自由に女たちを――特にオリヴィアを――愛せればそれで良かった。











「パパ」


 オリヴィアの家の扉を開けると、シドが近付いてくる匂いに気付いていた様子の、不快な生き物が玄関先で待ち構えていた。


 姿形はオリヴィアの幼い頃にそっくりだったが、ヴィクトリアは自分からオリヴィアを奪い、託卵までしてきた憎き男の子供だ。


 しかし、ヴィクトリアはオリヴィアによって「シドがパパ」だと噓を教え込まれていた。オリヴィアはそれで押し通すつもりらしい。


 ヴィクトリアが娘と認められることで、シドに害される可能性を少しでも減らしたいのだろう。


(くだらん)


 子供を守るためなら真実を捻じ曲げることも厭わない母親という生き物は、つくづく業が深い。


 シドはヴィクトリアの匂いを常に遮断して嗅がないようにしていた。


 シドの登場に、ヴィクトリアは遠慮がちではあるがこちらに呼びかけてきて、何かを期待するような目をシドに向けていた。


 ヴィクトリアはシドに父親からの愛情なるものを求めている様子だが、シドがそんなものを与えるわけもないので無視して進んだ。


 シドが歩き出すと、無視された形のヴィクトリアは悲しそうな表情を見せたが、シドと一定の距離を保ちながら後ろをトコトコとついて来た。











「ヴィー、アルお兄ちゃんと遊びに行ってきて」


 シドとの営みを娘に見られたくないオリヴィアは、シドが来たことに気付くとヴィクトリアを家の外へ出そうとした。


 アルというのはミネルヴァの末の息子であるアルベールの愛称だ。


 アルベールはヴィクトリアより二歳上の性悪小僧だ。ヴィクトリアは母親のオリヴィアと共に暮らし出すまでは、ミネルヴァの家でアルベールとも一緒に暮らしていた。


 アルベールはヴィクトリアに気があるようで、よくオリヴィアの家のまわりをうろうろしている。


 しかしシドに「オリヴィアと一緒の空気を吸うな」と厳命されているため、アルベールは戸を叩くこともできず、ヴィクトリアが嗅覚で自分の訪れに気付くようにと、まだ幼児なのに不審者さながらの動きをしていた。


 しかし、ヴィクトリアはアルベールが来たことに気付くと、外には出ず家の中に籠もって会おうとしない。


 ヴィクトリアはアルベールが嫌いらしい。


 ところが、オリヴィアにとってのアルベールは、「まだ一歳で赤子同然の娘を、誰かに預けたい時にちょうど良くそこにいて預けられる相手」という認識のようで、少し嫌そうな顔をしているヴィクトリアに、「アルお兄ちゃんと一緒にミーネの所へ行って」と言葉を添えてから、外に出した。


 ミーネというのはミネルヴァの愛称だ。ミネルヴァは現在、シドに行動を制限されているオリヴィアの数少ない話し相手だった。


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