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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
サラカヤ後編

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42/62

41 俺の勝ち

【注意】ヒロイン死亡注意


見殺し、クズ注意

 サラカヤへの殺意が芽生え始めるが、しかし、シドは部屋に留まり続けた。


 サラカヤの様子がおかしいことに気付いたからだ。


 本日は灼熱の太陽が照り付けていて気温も高く、森の中は樹木に覆われているとはいえかなり蒸し暑い。


 いつしかサラカヤは大量の汗を書いていて、少しふらつき始めていた。具合が悪くなったようだが、それでも里に帰ろうとする素振りは全く見せない。


(カヤ……)


 シドは自分に対するサラカヤの拒絶を知り動けなかった。


(馬鹿だ。戻ってくればいい。今俺に助けを求めればすぐにでも駆け付けてやるのに――――)


 シドの思いとは裏腹に、サラカヤは振り返らなかった。命の危機が自分と腹の子に迫っていることには、もしかしたら気付いていないのかもしれない。


(カヤ、頼むから振り返ってくれ………… 俺を頼ってくれ…………)


 シドは、サラカヤ以外の見知った匂いが森の中からすることにも気付いていた。


 ロータスだ。


 なぜ今この時に帰ってきたのか。


 ロータス自身は里の中にまで入ってくるつもりはないようだが、疲れた様子で森の中にじっと留まっていた。


 最初サラカヤとロータスの距離はかなり離れていた。


 ロータスが森の中にいることにはシドは早い段階で気付いていたが、どうでもよかったので放置していた。サラカヤとのいざこざが発生しても、特に関係ないだろうとも思っていた。


 けれど、ロータスが座り込んでいる場所まで、サラカヤが段々と近付いていく。


 シドは、二人がまるで運命の糸によって引かれ合っているかのように思えてしまった。


 シドの身体に、嫉妬でジリジリと身が焦がれるような感覚が走った。


(二人まとめて殺すか)


 物騒な考えが頭をよぎったが、二人を同時に殺せば、それはそれで「同じ時と場所で死ぬ」という運命を、二人に与えてしまうようにも思えた。シドはあの二人の間に運命があることを否定したかった。


 ふと、サラカヤの運命の相手は()()()だったのか、シドはまたサラカヤに対して試したくなった。


 愚かなサラカヤは、自分の具合が悪いことには気付きつつも、それが深刻なものであるという自覚はなさそうだ。誰も手を差し伸べなければ、暑さにやられてそのまま死ぬだろう。


 サラカヤの運命の相手がやはりシドで間違いなければ、シドに見捨てられた形のサラカヤは、シドの子供と共に死ぬ。


 サラカヤはシド以外の誰の男のものにもならず、その命や人生はすべてシドに捧げられた状態で終わる。


 それも悪くない。


 この時点でシドはサラカヤが死んでも構わないと思った。


 シドの悪行を確信したサラカヤは、もう二度と以前のようには自分を愛さないだろう。


 自分に、ただひたすらに真っ直ぐな愛をぶつけてこなくなった女など、最早いらない。


(賭けるか)


 もしもサラカヤの運命の相手がロータスだったならば、二人はこの森の中で再会できるだろう。


 そうなれば賭けはシドの負けだ。ロータスの元に辿り着きさえすれば、それでサラカヤの状態が回復できるかは不明ではあったが、そこで生き延びられる可能性があるなら、見逃してやってもいい。


 それに、サラカヤは純潔ではない。いくら運命だったとしても、ロータスはサラカヤとは番えない。シドのように獣人であっても複数と関係できる特異体質であれば話は別だが、シドが見る限りロータスはそうではない。


 あとはロータスが鼻を焼くことだが、里を出て常に命が脅かされる環境の中で、獣人の最も重要な能力である嗅覚を失うことは、死活問題である。


 二人が結ばれる道などこの先どこへ行ってもない。


 サラカヤが人間男のものになる可能性ならあるが、これから生まれる獣人の子供を抱えたまま一緒になることを了承する人間男もいないだろう。正義感の強いサラカヤが自分の子供を捨てることも考えにくい。


 十歳のロータスがサラカヤと赤子を守りきれるとも思えなかったし、どうせすぐに人間どもに狩られて全員死ぬ。


 シドは何もせず、()()()を待つことにした。そして――――――


 シドの口元に喜色の笑みが浮かぶ。


 サラカヤはロータスの元まで辿り着くことができず、ロータスもサラカヤの存在には気が付かなかった。


 サラカヤは道の途中で意識を失って昏倒し、そのまま死んだ。


(俺の勝ちだ!)


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