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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
サラカヤ前編

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31/62

30 特別

注意:ほんのりガールズラブ(セクハラ風味)あり

 シドは「嫁」認定してからサラカヤを良くそばに置くようになった。『狩り』に人間を同行させるのは危険なので留守番だが、里の中、とりわけ族長の館(自宅)においては、常にサラカヤを侍らせていた。


「嫁」という単語に、獣人の番どもは過剰に反応していたが、ただの愛玩動物(ペット)的な意味しかないと思い込ませるように動けば、人間を下に見ている番も多かったこともあり、サラカヤはシドのただの召使いか小姓のような存在だと捉えられていた。


 人好きのする元々の天真爛漫な性質も手伝ってか、サラカヤが嫉妬に狂った者どもの攻撃に晒されることもほぼなく、むしろ番たちに可愛がられていた。


 嫁サラカヤは可愛い。シドだってサラカヤを視界に入れるたびに、彼女の身体中にキスしたくなる。


 オリヴィアの家に行く時も、シドはサラカヤを連れて行った。


「オリヴィア様! キスしたかばい!」


 獣人に囲まれると、普通は感じる恐ろしさよりも、美形に近付けたことを喜ぶ面食いのサラカヤは、美貌のオリヴィアに会うといつもデレデレになっていた。何度目かにオリヴィアに会わせた時、サラカヤはいきなりそんなことを言い出した。


 サラカヤはオリヴィアに抱きついた格好でおねだりをしている。対するオリヴィアは、子供然とした見た目のサラカヤを胸に抱きしめて、頭を撫でていた。


 オリヴィアは現在愛娘(ヴィクトリア)と離れて暮らしているので寂しいのか、甘えてくる子供(サラカヤ)を突き放せないようだ。


「オリヴィアは俺の特別だから駄目だ」


 たとえ相手がサラカヤでも、シドはオリヴィアを誰かと共有するつもりはない。


「好意は嬉しいけど、びっくりしたわ。今はお腹に赤ちゃんがいるから、安静にしていないといけないのよ」


「赤ちゃん…… 王様の…………」


 サラカヤは呟いて、オリヴィアの膨らんだ腹を見つめていた。











「あ…… ユリア様と、ロータス君…………」


 オリヴィアの家から帰る途中、陽気なサラカヤを肩車しながら歩いていると、離れた所を歩いているユリアとロータス母子を、頭上のサラカヤが目敏く見付けた。


 サラカヤはユリアたちをじいっと見ているようだが、その視線や、サラカヤの紡ぐ「ロータス君」という言葉に、恋慕の情が乗っているように思えてしまい、シドの額に青筋が浮きかける。


 息子(ロータス)はシドとは違いユリア譲りの金髪で喧嘩もクソ弱いが、顔だけはシドに生き写しかと思えるほどに良く似ていた。シドに惚れているサラカヤは、当然ロータスの顔もかなり好みのようだ。


 サラカヤよりも二、三歳年下のロータスはまだほんの子供だが、年齢の釣り合いはシドよりもよほど取れている。


 もしもサラカヤが「ロータス君とキスばしたか!」などと言い出したら、どうしてくれようと思っている。


「王様、お願いがあるがよかと?」


 愛しい嫁の声を受けて、いよいよ、ロータスを婿にくれとかそんな話かと、シドは振り返ってサラカヤを強く睨んだ。 

  

 シドの人を殺せそうな視線は気の弱い者なら泡を吹いて倒れそうなものだが、シドに全幅の信頼を寄せ恐怖の感情など全く抱いていない様子のサラカヤは、シドの苛立ちを意に介さない。


「ユリア様とキスしたかばい!」


 そっちか、と、サラカヤが()()他の男に興味を引かれていないことに、シドは安堵した。


「あいつは駄目だ」


 ユリアはサラカヤ(シドの嫁)とのキスなんて到底受け入れられないだろう。


「ユリア様も王様ん特別なんか?」


「いや、違う」


 シドは即否定で返した。






「ユリアは、俺の特別ではない」


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