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誰も俺の番じゃない  作者: 鈴田在可
オリヴィア中編

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20/62

19 監禁と妊娠

R15注意、監禁注意


婦人検診の内容あり


シド視点→三人称

 手術が終わりミネルヴァたちが部屋から出て行ってしまっても、シドはオリヴィアと営み続けていた。


 オリヴィアの鼻の粘膜は匂いを嗅ぎ取れないように焼かれて処置をされ、鼻を覆うように顔面には包帯が巻かれている。


 オリヴィアの焼けた肉の匂いが、室内にまだ満ちていた。


 シドは奪えなかった処女の代わりのように、嗅覚という獣人の大事な能力をオリヴィアから奪えたことに満足していた。


 行為を続けているうちにオリヴィアに対する怒りの感情も少しは落ち着いてくる。他の男に奪われてはいたが、これからはずっとオリヴィアはシドだけのものだ。誰にも渡さないしどこにも行かせない。


 シドはオリヴィアを監禁しようと決めていた。


 シドはそれまで、来る者は拒まず去る者は追わず奪える者は奪うという主義で、特定の番に対して特別な執着を見せたことはあまりなかったが、オリヴィアだけは特別中の特別だった。


 もう充分すぎるほどなのに、シドはオリヴィアを離さなかった。


 シドは、自分には一度も鳴っていない例の音を求めていた。


 けれどどこまで求めても、その音がシドの脳内に響くことはなかった。


 シドがオリヴィアだけにはこだわる処女ではなかったからなのか、それともオリヴィアへの愛が足りないのか、いや、自分を選ばなかったオリヴィアを恨んでいる気持ちがあるからなのか――――


 そこら辺はシドにもわからなかった。もしかしたらすべての理由が合わさってこうなってしまったのかもしれない。


 麻酔が切れてオリヴィアが目覚める。


 オリヴィアは鼻を焼いてもすぐにはシドに心を向けてこなかった。シドは泣いて嫌がるオリヴィアを力で押さえ付けた。


 込み上げる嗜虐心によって心の仄暗い部分をくすぐられたシドは、笑いながら彼女と関係し続けた。










 

 シドはオリヴィアのために里の中に一軒家を用意した。窓には獣人でも壊せない頑丈な鉄格子を嵌めて、唯一の出入り口には鍵を幾つも取り付けた。オリヴィアが絶対に脱走できないようにした。


 シドが付き添える場合のみオリヴィアを家から出して外の空気を吸わせたが、それ以外は家の中に閉じ込めてどこにも出さなかった。


 それまで番と共に商人として世界中を自由に飛びまわっていたらしいオリヴィアには、閉じ込めてられている状況はかなりの苦痛のようだったが、シドは自分を選ばない女にはいい気味だとも思っていた。


 オリヴィアはシドに恐怖を感じてずっと脅えていた。


 最初の頃こそ、オリヴィアは自分の番を殺して嗅覚まで勝手に奪われたことに腹を立てて、「この悪魔! 鬼! 鬼畜!」と叫びながらシドに物を投げつけるなどして発作のような怒りを見せることもあったが、反抗の度にシドも超ド級の殺気を滾らせて抑え込み()()()()()やると、そのうちに発作を起こすこともなくなり、代わりに悲嘆に暮れて泣くばかりの日々を過ごすようになった。


 身体から落とす作戦は徐々に効いていて、最初の頃はシドを恐れて嫌がるばかりだったオリヴィアも、シドの腕の中で深く幸福を味わうことも増えてきた。


 しかし真面目なオリヴィアはテオのことを思って自己嫌悪に陥ったり、他にも番がいて、何より親友であり義姉であるユリアの唯一の番であるシドと、毎日のように性交していることを受け入れ難く感じているようだった。


 オリヴィアが戻って来てからシドはオリヴィア以外の他の女と一切関係しなくなったが、特別扱いされているオリヴィアに嫉妬を募らせた何人かの番が彼女を害しようと動いたため、シドは見せしめのように問答無用でその女たちを粛清した。


 シドは自分たちの愛には邪魔な番たちを全員消そうかとも思ったが、計画を吐露した際に青褪めたオリヴィアに止められたことで思い留まった。


 塞ぎ込むオリヴィアを見て、「心が壊れますよ」と小賢しい女ミネルヴァが診察の度に何度も忠告してきたが、シドはその都度「別に構わん」と返していた。


 シドはオリヴィアの心が壊れて廃人になろうとも、自分のそばに居続けてくれればそれで良かった。


 もちろん精神がまともな状態であればあるに越したことはないが、オリヴィアと性交しないなんて選択肢はシドにはなかったし、自由に外に出した結果、再びオリヴィアを失ってしまう懸念に比べればマシだろうと思った。


 シドは、「またオリヴィアが俺の前からいなくなることがあれば、俺は世界を滅ぼすような気がする」と周囲には語っていた。


 むしろ、「オリヴィアの精神が壊れてくれた方が自分の思った通りに扱いやすくなって良いのではないか」とすらシドは思っていた。


 しかし監禁生活から数ヶ月後、歪んだまま完結してしまいそうだった二人だけの世界に変化が訪れた。


「ご懐妊です」


 オリヴィアに妊娠疑惑が浮上し、診察をしようとするミネルヴァと、女であってもそれは許さないと主張するシドとの間ですったもんだはあったが、とにかくオリヴィアの妊娠が確定した。


 診察の際、「俺ならできる」と自信過剰男シドはミネルヴァから道具を取り上げた。しかしそんな所の診察など初めてのシドは、あーでもないこーでもないとミネルヴァに様々指南されていた。


 オリヴィアは鼻を焼いていたために、通常獣人の検診では番以外に触られる苦痛を和らげるための眠り薬は省略されていた。


 その時ばかりは尊大男シドもミネルヴァの指示には従い知識を吸収していて、以降の診察もミネルヴァが立ち会う中シドが全部やることになった。


 妊娠がわかってからオリヴィアは変わった。


 それまではシドと心の距離を置こうとしていたが、受け入れようとする心境に変わっていった。現状に思うところはあるようが、子供の父親とは良好な関係でいたいのだろうと思った。


 シドに他の番がいることや親友ユリアと番を共有している形であることも、すべて飲み込んだようだった。


 元々子供の頃から気の置けない間柄ではあったから、オリヴィアとはすぐに互いへの愛を感じられる関係になれた。











******






 オリヴィアはシドと最初に関係した後くらいに一度月のものが来たが、元より周期は不順であり、血の量も少量で終わってしまうこともあった。


 まさか里に来てからの一度きりのその出血が、月のものではなく、単にシドが激しくしたせいだったなんて、妊娠発覚時には誰も思っていなかった。


 嗅覚が異常に発達しているシドも、ことオリヴィアの匂いは嗅ぎ取りにくかったこともあり、再会した時には既に身体に子が宿っていたことには気付かなかった。


 テオが死んでから時間が経っていたこともあり、シドは胎の中にいるのは自分の子だと信じて疑わなかった。


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