25年4月の日曜短文
3月は家族を亡くした苦しみで何も手につかないため更新できず。
4月は気持ちを切り替えようと日曜短文3本まとめました。
【ウルシマ危機一髪】
ツネタロウさんからいただいた土産を気に入ってたウルシマン。取り上げられそうになり必死に食い止める姿は、以前のウルシマンと大違い。
【日々の練習の賜物】
前のを読み返すと恥ずかしくなります。文中に市原◯人の名前が出てきます。誰でしょう。
エドには武家屋敷があり、大名家の上屋敷・中屋敷・下屋敷と上中下で屋敷が構成されており、その屋敷ごとに役割を担い担当する者たちもまたいた。
上屋敷には主人やその親しい家族が住む。城から近い。
中屋敷には隠居した身内や幼い子供などが住む。
下屋敷には基本人は住まず、贈り物や頂き物などを管理する倉庫のようなもの。また、その敷地内に家臣を住まわせる武家屋敷がある。屋敷には、客人を泊めることもたまにある。城からは程遠く下町にあることもしばしば。
下屋敷の担当をするウルシマの本来の仕事は、日々出入りする物品の管理と整理を主とする。
朝誰よりも早く起きて仕事を始めるウルシマに釣られて、他の中で働く台所の者たちも朝早くから働き始める。ウルシマが何も言わなければよいのだが、どうしても口うるさく仕切られるもので自然と朝早くから動き始めさせられている。
冬季は、寅の刻。夏季は卯の刻。現代で言うおよそ朝3時頃である。
主人たちが普段から出入りするわけではないため、それほど忙しく動く必要はないのだが、ウルシマの目を気にして働いてしまう。
ウルシマと他の従事者に雇用関係はない。そこに上下関係もないのだが皆が口にするのは「なんか怖い」単純に恐れられていた。二言目には「悪い人じゃないんだけどね」と取り繕う言葉でまとめる。
下屋敷では、誰が上にあるべきではなく、全員でやりなさいよ。という関係性。
ウルシマは一応元武士であるために、凛とした態度から上役のような雰囲気を醸し出す。
陽が高くなる頃から人と物の出入りがあり、陽が傾き赤くなる頃には人も物も出入りが無くなる。
ただ、ウルシマは念の為に亥の刻ころまで残る。現代で言う夜の8時から9時ころまで。急なことはまずないが念の為である。
ツネタロウたちのように、家臣を泊めるために下屋敷を使うことがある。
これは本当に稀であり、マサズミの家臣がエドに来ること自体が無いのである。
嫡男のマサカツは上屋敷の敷地内に住んでいる。城代家老はエドに来ることはなく、その他の家臣たちもエドに行く理由もなく。
マサズミの客以下が宿泊する程度。
そのため、ツネタロウが初めてエドに来て下屋敷で宿泊させてもらう際に遅れたことで叱責されたのは、予定時刻よりも遅れたことが原因であった。ツネタロウたちだけのために、夕方には家路につく下屋敷の者たちが帰れずにいた。田舎モンのツネタロウには理解しづらかった。
納屋のようなところに入れられたのもその腹いせも含まれる。
先日、いつものように物品の整理整頓をしていると、幕府を名乗る使者がやってきた。
ウルシマ「ですが、これは土産で頂戴した程度のもの。大げさではありませんか」
幕府の使者「使い込んでるようだが、土を落とせ。時がない。早くいたせ」
ウルシマ「ですから。ただの鋤です。だたの鋤でなぜ」
幕府の使者「時がないと言うておろう。では、こちらで処理致す。渡しなさい」
語気が徐々に厳しくなる。それでもウルシマは反対する。
幕府の使者「よい。ここでそなたを叩き切る。覚悟は良いな」
なぜウルシマは頑なに手渡すのを拒絶したのか。
初めて役に立つ土産を自身に頂戴したからである。それを奪われてしまうのかと思うと葛藤。
下屋敷の者たち「お待ちくだされ。後でお返しいただけるのであれば。ウルシマ様もそう頑なに断らなくても良いではないですか」
この一言で、手討ちは免れる。ウルシマは赤くなった顔と歯を食いしばる姿はいつものウルシマではなかった。
土がついたままの鋤を幕府の使者は持ち去った。
その日のウルシマに冴えはなく腑抜けな状態になってしまう。
誰よりも働き者のウルシマ。殿からの褒美は特になかったらしく、土産が褒美のように感じたのでしょう。知行持ちで重要な役職持ちのツネタロウは立場上上役になります。
屋敷の者たちから励まされる珍しい光景がそこにあった。
【日々の練習の賜物】
キンゴ「殿。これはなんの。おっと危ない!」
いつの日にか出てきたキンゴという近習歴3年のこの男。
キンゴがまだ2年目のこと。練習相手に近習が呼ばれた。
なんのことか分からず付き合うが、「ただそこに座ってろ」と言われるだけ。理解が出来ずに座っている。
もうひとりの近習は今は下男をしている。名前はえーっとなんだったか。とりあえずいまは下男である。
その下男に扇子をいくつか集めさせる。
扇子を投げていたのだ。
キンゴ「殿。待ってください。受け取ってもよいのですか?」
マサズミ「そうだな。受け取っても良いが壊すなよ」
投げてる時点で壊れるかもしれない。そもそも扇子は投げるものではなく扇ぐものである。
キンゴ「それで、あぶな。なんのために投げて遊んでるのですか」
マサズミ「いやな。昔まだお前くらい若い頃にな、扇子を投げるお方がおったのよ。それがまたキレイに飛んでな。投げられた側も側で、片手で親指を下にして挟むように受け取るんだ。あれをいつかする事があるかもしれないからな。無いでも良いんだよ。この投げ方が思い出せなくてな。どうも上手く飛ばんのだ」
それはいつだったか。184話にて、ツネタロウに扇子を投げるシーンがある。
練習の賜物そのものである。
ではどうやって上手に投げられるようになったのかをちょっくら覗いてみましょう。
マサズミ「すまないがキンキン、遠回りになるが河原に寄るからついて参れ」
キンゴ「はぁ」
マサズミから可愛がられているのか、キンキンと呼ばれている。
河原で適当に拾った石を投げる。上から投げたり横から投げてみたり。股の下から投げてもみた。
一番しっくりしたのが横投げである。武士で横投げをすることはまずない。書類を隣に渡す時に横に腕を振るくらい。しかし、いつぞや水を切って跳ねていく石を見た記憶がある。幼い頃かもしれない。父マサノブがまだ帰参し許されるするずっと前。父の帰りを待つ幼い頃。外で遊ぶ子どもたちと一緒に河原で石を投げる遊びをしていたのを思い出し練習として投げた結果。横から投げると3つくらいは飛び跳ねる。もっと上手に水切りができれば。
キンゴ「あーそういう遊びですか。それはですね。腕の振りも大事ですが、手首をこうクイっと投げる瞬間にクイっとすることでピュンピュンピュンと跳ねやすくなるんです。あーあと、低い姿勢からギュンと投げるともっとギュンギュンと飛びます。良いですよ。そうです。足をガッと大きく開いて。そう!あと石もベチャっとしたのがいいですよ。そうです。こう横に指をかけて。そうです。上手です」
できの悪いキンゴでも子どもの遊びには詳しい。
キンゴの特別指南により水切りの回数がグンと増える。
マサズミ「おおすごいぞ。六から八まで増えた!そうか。指に引っ掛けたのを指先で石を回すように投げればこんなに跳ねるのか!面白い。こうか?こうだな?」
子どものようにはしゃぎ水切りを楽しむ。
マサズミ「もう少し楽しみたいがまぁいい。陽も暮れようとしてる。帰るか」
帰り道でも何度も投げ方や手首の使い方を確認し、時折、キンゴに目を向けながらフォームの修正をしてもらう。
普段、座って難しい顔して仕事をしているマサズミにとって、ちょっとした娯楽となり気晴らしにもなったようだ。
キンゴ「殿。またですか!?取りそこねて壊しても知りませんよ?」
マサズミ「壊したら買い直すからあとで請求する」
キンゴ「そんなぁ」
下男は落ちた扇子を拾い集めマサズミの元へ戻す。
中腰は慣れているが、畳の上で何度も中腰のまま拾い集めるのは足元が滑りやすい畳では苦痛に感じる。それを顔に出さないようにするのも下男のつとめ。
キンゴ「だから、危ねえって!」
可愛がるキンゴ相手にも目の奥にある畏怖の念が溢れ出る。
仕事中の顔へ。それはそれは恐ろしいお顔。眉間に深いシワが見える。
マサズミ「今。なんと?」
いつになく声が低い。市◯隼◯のような溜めを作り問う。
下男「キンゴ代わりなさい」
キンゴ「ほんと危ねえからやんない方がいいって!ぜってえ」
気を取り直し、下男に向けて投げると動きをよく見ているからなのか僅かに浮き上がる扇子見定め、片手で受け取った。受け取ったその手首の形は、鶴の首のようである。
マサズミ「それだ!それをしたかったんだ!よく受け取ったな。褒美にその扇子をくれてやろう」
先のキンゴに向けられた眼光鋭い顔は、にこやかに終始笑顔である。
その時代の頂点にいた関白トヨトミヒデヨシが投げた扇子を片手で受け取る、稀代の傾奇者マエダケイジロウトシマスのあのシーンを真似してみたかったのだ。
このことを彼らに話したところで実感のない話に戸惑うばかり。下男は年齢的にもまだ生まれたばかりの幼い子ども。キンゴにおいては、生まれてもおらずヒデヨシの名を聞いたほどでしか知らない。
マサズミ「キンキン。さっきのは上手く行った記念に許す。次はキンキンが受け取ってみせよ」
そう言うと下男は拾い集める側に戻り、キンキンは受け取る。
たまたま上手く飛んだだけだったようで、キンキンに変わってからはまともに飛ぶことはなくその日は夜遅くまで続いたと記録されている。
【305話 予約】
すぐに別邸に戻りたい気持ちはあったが、せっかくのエドでせっかくの上屋敷にいるということもあり願い出る。
ツネタロウ「お願いがございます」
マサズミ「ん?どうした」
ツネタロウ「これまで一度もご嫡男のマサカツ様にご挨拶しておりません」
マサズミ「そうだったか?そうか。では、ウメとも会ってないか」
近習にマサカツの屋敷で空いている日時を聞きに行かせる。
マサズミに仕えるようになり一度もマサカツとは顔を合わせずに来てしまった。ありえないと思われるだろうが、とにかく接点がなくマサカツはマサカツで己の仕事をしているため顔を合わせる機会がなかった。
既に元服を済ませ、槍働きで勲功を上げる実績を持つ。
継母のウメは、元はイエヤスの側室で30代中盤の若さ。
15で奥勤めとある。
マサズミ「そうか。まだだったか。まぁ、マサカツは二十五。同じ敷地内に住んでるとは言え、一人前の男子だ。いつも儂の隣にいるような暇な仕事はしてはおらん」
ツネタロウ「槍で勲功を挙げられたお方。まだそのようなお方とお会いしたことがございません。どのようなお方なのか。いつかお会いできればと心待ちにしておりました」
マサズミ「ハハハ。そうか」
継室のウメとマサカツの年の差は、10ほど。親子とは呼びにくい年の差。
静寂に包まれた良い場所に上屋敷がある。庭の池の鯉が泳ぐ波の音までもが聞こえるほど。
しばらく地図を眺めながら待っていると。
マサカツの屋敷へ向かった近習が耳元で囁く。
マサズミ「そうか。いつまでエドにいるのだ」
ツネタロウ「謁見も終わりましたし近々の予定ではありますが、妻の体が戻るまでは残ろうと考えてます」
マサズミ「妻思いだな。では、明後日夕方前に来られよ。夕餉を共に囲もうと考えてる。あやつが珍しく日の良い大安でとのことだ。今日はいるようだが、もう昼を過ぎた。日が悪い(先勝は午前中が吉)と言うのだ。勘弁してやってくれ」
ツネタロウ「滅相もないございません。そのように気にしていただけ幸せものでございます」
もうしばらく、エドに残ることが決定した。
しばらく日曜短文まとめをサボってました。まだ、エドに2回目の滞在中の頃の話ですね。この滞在中でペースダウンするんです。書きたいことがいっぱいあって。気づいたらエドに何ヶ月おんの?エドを出てもまた長いんですよ。
書きたいこともあるんですが、オヤマ編をもう少し続けたくなったというだけなんです。ウツノミヤに行くというのが心配で。いくら歴史的資料が乏しい時代だとしても宇都宮市内に取材に行くとそれなりにあるんで怖くて怖くて。今の宇都宮市があるのは、圧倒的に本多正純によるものが大きいので。一気に近代化させた町並みですからね。
関係ありませんが、宇都宮家って栃木の宇都宮だけだと思ってません?意外と九州や四国などにも宇都宮家はあり、歴史上有名人も輩出しているので、宇都宮と聞いて栃木はちょっと安易かもしれないと覚えておいてください。
私の父方の名字も清和源氏系ですが、全国各地に有名人やその家系があります。元は山梨から派生し秋田・青森・関東・東京・山梨・長野・東海・近畿・中国・四国・九州北部など。
ほぼ全国ですが、名字ランキングではそう多くはなく、武家の時代になり全国に散ったことが大きいのではないかと思われます。
私のとこや宇都宮家みたいに全国にその名が轟いていることもあるので、一度名字で検索してみてもいいかもしれませんね。
5月の日曜短文はそのうち更新します
またみてね




