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少年 ツネタロウ 番外編  作者: モーニングあんこ


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17/19

25年 マサズミの近習前後編

【前編】

日曜短文 マサズミの近習きんじゅう 前編をお送りします。


【後編】

謁見前々日の話。

290話の安堵の一時を参照ください。

近習はそこにいます。

【マサズミの近習 前編】

近習きんじゅうとは


 主君の身の回りで仕える家臣。


 俺等おれらは、小姓こしょうあがりの近習だ。小姓と聞いて思うのはたぶん可愛く幼い稚児ちごのようなものを思い描くだろうか。夢を砕いて申し訳ない。マサズミ様は俺等のようなムキムキでイカつい顔を好むらしい。マサズミ様はシュッとしたやり手なお方。それだけにひがまれることも多いようで、2年に一度近習の入れ替え試験をするのだ。必ず交代するわけではないからか俺は今年で3年目だ。優秀ってことだ。

 僻まれる方々は決まって、卑劣ひれつなことをしてくる。大男で囲みオラついたり、草むらから矢を放ち驚かせたり、かごを襲ったりするのだ。なんて卑劣な奴らだ。


  近習A「まだ名乗っていなかったな。さっきから喋ってる俺は、キンゴ。殿からは近習のキンゴでキンキンと呼ばれている」

  近習B「黙って聞く聡明そうめい担当の俺は、サクベエと言う。キンゴと違い口から生まれたような男ではない。殿からはゴサクと呼ばれているのはちょっとよくわからないが聡明な俺は、殿の愛情をひしひしと感じているので問題はない。ただ、他の者にゴサクと言われたら◯す。ちなみに俺は今年からだ」


  キンゴ「殿を卑劣な者から守るのが仕事だ。殿に嫌がらせをしようとしてないかいつも目を光らせている。お陰で今年はまだ一度も殿に嫌がらせをする卑劣な連中は怖気付おじけづいているようだ。はっはっは」

  ゴサク「と言うが、聡明な俺から見て奴らは卑劣を極めんとしてるだけあり、様子をうかがっているのだろう。やはりキンゴは賢さが足りない。これだから脳筋のうきんというのは」


 などと言っているが、彼らは警護担当でもあるがそれ以上に、マサズミの働きを近くで見て少しでも仕事の役に立ってもらおうと思っての人選である。ふたりとも立場を理解していない。

 特に、キンキンことキンゴは、賢さが足りないというのに口先で丸め込もうとするクセがある。口先9cm(三寸)は、賢さが足りないとただの戯言たわごとになってしまう。口先9mm(三分)になってしまう。そういうところが3年目の理由なのをキンゴ本人はなにも理解していない。


  キンゴ「では、我らの一日を見てもらおう」

 



とある日の近習の1日


 近習の朝は早い。殿が起きる1時間(半刻)前に起き準備をする。


  ゴサク「起きろって。キンゴ起きろ」

  キンゴ「うるせえな寝かせろよ」

  ゴサク「今日密着だろ?起きろって」


 3年目のキンゴは、夜遅くまでその日にあったことをまとめ5日ごとに殿に提出している。それがリーダー(近習頭)の務めであると彼は言う。


  キンゴ「やることやってから寝るからどうしても朝起きれない。だが、そこは今年から入ったゴサクの仕事。先輩を起こすことから始める。俺が入ったばかりの頃もそうだった。そうあの時h」


 提出させるのは、文章力を見るためであり、書物を読ませても枕にするような連中。それなら、その日の日記を書かせたら文章力が少しは上がるだろうと見込んでいる。文章力が基準値に上がれば、近習を卒業できるのだ。

 ゴサクに関しては、真似をして書いて居るようだがいまだ提出してくる気配はない。上手く書けていれば卒業しても良いと考えているのだが。


 密着取材の我らのことは壁のように空気のように思ってもらって良いと言っているのだが、さきほどから我らのことをチラチラと見てこられる。たまに口角が上がるのを確認。緊張しているのだろう。


 マサズミを起こしに行くのだが、関係者によると大概先に起きており起こすという仕事はしていないようだ。 

 曲げを整え着物を準備する。

 のだが、それも自身で着替え終えている。と事情通は話す。

 彼ら近習が来る頃には、落ち着き精神統一している頃である。


  取材班「マサズミ様お聞きしてもよろしいでしょうか」

  マサズミ「うむ」

  取材班「なぜあのような者たちを近習にしようとお考えになられたのですか?」

  マサズミ「光る原石。と言ったら良いかな。まだまだ不出来な者たちではあるが、なにかに秀でていると考えている。今はまだ腕っぷしでなんとかしようとしているが、その腕っぷしはあまり役に立たないのだと若いうちに教え込むことで、頭を使い生き残るすべを見つけてくれると信じて付けているのだ」

  取材班「今のところ三年目も一年目も大して差は感じませんが」

  マサズミ「そうだな。ちなみに昨年十年目を果たし農民になった者もいたな」

  取材班「十年ですか!?」

  マサズミ「自分の名前もロクに書けないというな。日記の提出をさせていたのを見てキンキンはかしらになれば書くものだと思い込んで今年から書いているんだ。キンキンは可愛いぞ。野良犬を見て可愛いがってたら手を噛まれて痛かったとか雲の形が魚みたいで美味しそうだとか。キンゴと呼ぶよりキンキンと呼びたくなるのはわかるだろ」

  取材班「そ。それは可愛い日記ですね。サクベエさんはどう見られてますか?」

  マサズミ「ゴサクか。あやつは口数が少ないだけあって、よく周りを見ている。見ているがどこを見ているのかと時折思うことがある。まぁまだ日が浅い。ゴサクはまぁこれからだよ。長い目で見てるさ」

  取材班「そうですね。まだ一年目。十年待てるのです。ゴサクの成長が楽しみですね」


 とマサズミ公への取材はまとめたが、なんとかものにならないかと期待しているのに反し、近習につく意味を理解してない若者たちの代表格であるということは、この取材によってあぶり出された。




【日曜短文 マサズミの近習 後編】

とある日の近習きんじゅうの午後


 城にお勤め中のマサズミから片時も離れず廊下にて待つ。


  キンゴ「あー腹減ったなぁ。あの池の鯉食ってもいいかな。食いてえな」

  サクベエ「おっ握り飯が来たぞ。メシだメシだ」


 力仕事ではない文官たちにも昼が出る。握り飯がひとり一つずつ配られる。皿に置かれるのだが、マサズミたち文官は書物に目を通すのに忙しく徐々に米が固くなっていく。一息つくのは、15時(八つ)の頃。茶を飲み表側がカピカピになったのを近習に分け与える。

 マサズミは元より昼食を取らないのだった。腹が膨れると眠気が出てしまい仕事に遅れがでてしまうとか。

 仮眠というのを取れば良いのだろうに。我らは仮眠という制度を知ってからはこまめに取るようにしている。おかげで仕事がはかどる。


  キンゴ「うめえ。米うめえ」

  サクベエ「まったく。落ち着きのない人ですね。もっとスマート(シュッ)とできないのですかね。まったく」


夕方


 通常の仕事では、陽が暮れる頃には仕事を終える。なぜか。それは、ロウソクや菜種油の消費を抑えるためだ。日中の明るい頃に仕事を終えるのが仕事のできる指標となる。


 しかしこの日は、マサズミらの老中のもとには、各藩からの要望などが立て込んでおり、ロウソクの出番がやってきた。

 明かりを灯し仕事に励む。


  キンゴ「まだかな。早く帰ってメシ食いてえ」

  サクベエ「口開けばメシの話ですね。確かにメシの頃か」


 とっぷりと暗くなり、一段落ひとだんらくしたということで老中たちは明日に持ち越すこととした。

 近習を連れて家路につこうとしたその時。事件が起きる。


 やぐら門をくぐるその時!


  キンゴ「危ない!!」


 そう言うとマサズミにタックル(体当たり)


べちゃ


 なにかが落とされたようだ。


  サクベエ「殿ご無事ですか!」

  マサズミ「よい。無事だ。が、臭い」


 月明かりのあるところへ戻り肩のあたりの着物に付着したのを確認すると。

 どうやらくそかれたようだ。固形ではない方の。


  サクベエ「なんて。なんて卑劣な!」

  キンゴ「クソがっ!くせぇ」


 怒りをあらわにするふたり。


  マサズミ「よい。大したことではない。脱げばよいのだ。手伝え」


 着替えの手伝いをし無事戻る。


 上屋敷に戻り客人がいることを知ったマサズミ。

 夜のとばりが下ってまで待ち続ける家臣のホマレダと言う男が来ていると聞き、何事かと控えの間に向かう。ふすまを開けようと近づいたその時、先に開くとそこにツネタロウがいた。声をかけようとしたところ安堵あんどしたのか。その表情のまま決壊けっかい。音を立てて決壊する音が聞こえる。汚してはならないと2歩ほど前に出てさらに。下には大きな池が出来た。


  マサズミ「ほう。おっと、誰か!」


 緊急性のあるその声に反応するキンゴとサクベエ。真っ先にキンゴが走り出し駆け寄る。


  キンゴ「殿!いかがあああああああ」


 大きな池に足を滑らせ背中から転倒。何が起きたのかとキョロキョロ。


  キンゴ「クサっ!!なんだこれ!!サクベエ(誰か)!掃除いたせ」


 共に駆け寄ろうとしたサクベエはその様子から少し手前で待機。キンゴにその場を任せる。


  マサズミ「キンゴ(お前)はもう良い。失礼だ。下がれ」


 キンゴを回収し他の屋敷の者に頼むサクベエ。キンゴの顔を見ると青白い顔色。殿から切り捨てられたような一言に何が良くなかったのかと自問自答さえも出来ないくらいの焦燥しょうそう感。とりあえず外の井戸に連れていき水をかけ汚れた着物を脱がせ同時に目を覚まさせる。


 屋敷の中は今もまだ人の動きが聞こえるほどザワついているのがわかる。しかし、役目のないふたり。井戸の前で、ただ水を被り汚れを落とすことに必死。

 心の汚れも一緒に落ちれば良いのにと願うのだった。


 濡れた身体のまま屋敷には上がれないため洗った着物をよく絞り体を拭き裏口から入る。着替えを済ませると今後の自分たちはどうなるのかと震えながら待つ。


  下男げなん「いいか。ちょっと手伝って欲しい」


 風呂に入ったツネタロウとコウキの着物を急遽きゅうきょ洗いたいからと呼び出され手伝う。

 この時に少し救われた気持ちになる。もし下男が声をかけてくれなければ、あのまま自問自答するだけの苦しい思いのまま反省していなければならない。こうして、体を動かすだけでも忘れさせてくれると。


 風呂から出た後に、下男からマサズミへ近習の2人に手伝ってもらったことを話す。

 下男の手伝いをしてくれた2人がいることをあんに伝えたもの。


 夕餉ゆうげには、キンゴではなくサクベエがく。

 ホマレダ流の夕餉に意味がわからず、他の屋敷の者たちも共に話をしながら食事をする。

 このやり取りに混乱し、食べた味がしなかったとのちに語る。


 キンゴは、近習の部屋に戻りひとり食事をし猛省もうせい


  キンゴ「豪勢ごうせいだな。うんまっ!」


 そうでもなかった。


  下男「元気出せよ。キンゴ。お前はまだ若いんだ。その調子でいてくれよ。そうでなければ調子狂っちまう」


 下男も過去には家臣で務めた後、家を守ることに専念したいと願い出、武士を捨て下男となった。

 御膳ごぜんにがっつくキンゴに優しい目で見つめる下男であった。

キンキンことキンゴとゴサクことサクベエの若い近習。いつかどういう試験で合格したのかを紹介してみたいものだ。

マサズミ公へ取材記録を出稿前にお見せし後日取材しました。


マサズミ「あはは。違うんですよ。キンキンと呼ぶようになったのは、ほらあの日記ですよ。野良犬に噛まれて痛かったというのを見て、脳筋のキンにキンゴのキンでキンキンと呼ぶようになったんですよ。脳筋って見てて面白いじゃないですか。力こそ正義みたいなことを真顔で言うんですよ。筋肉は裏切らないとか。もう。可愛いじゃないですか。そういう連中多く見てきたなぁ」


取材班「そのことは本人には伝えないんですか?」

マサズミ「知ったら恥ずかしく思って育たなくなるでしょ。儂の好みは、自分から仕事を探し動ける人材だ。キンキンもゴサクも成長する日が楽しみなのだよ」


取材班は、このことを本人たちが知ってはいけないことだと思い世に出さないよう記録としてまとめるだけとした。


【後編】

(色々あって)後編があったなーと思い出し緊急投稿となりました。

ちょっと汚い話ではありますが、見守って戴ければと思います。

近習はもう少し仕事のできる人が多いようですが、マサズミさんが仕事のできる人なため近習は修練の場と捉えてもらえると良いかと。

その出来なさっぷりがまた可愛くて。

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