表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

25年1月と2月の日曜短文

25年の1月と2月に投稿した日曜短文になります。

1本目は1月の26日に投稿。

『女中たちの会話』

2本目は2月9日に投稿。

『ある日の下男の仕事』

3本目は2月23日投稿。

『颯爽』


~女中たちの会話~


シマダ屋敷内にて


 女中仲間での会話


  女中壱「婿さま素敵なのよ」

  女中弐「どうしたの?」

  女中壱「それがね」


 先日のツマミのことで、泣いて引き留めようとしたのに効果なしだったときのこと。


  女中弐「ほんと?大変だったのね。それでどうなったの?」

  女中壱「キヌさまの手にまんまとやられて泣いてたら、しばらくすると婿さまがキヌさまをお連れして来られたのよ。泣いてる私なんぞに」

  女中参「なんぞに?」

  女中壱「涙をお拭き。って言ってこの布を貰ったの!!」

  女中参「なにそれ!そういうこと言える人だったの?」

  女中壱「そうなの!もう。かっこよくて。大事にしまってるの」

  女中弐「羨ましい。見てみたかったわ」

  女中参「殿はご立派な方だけど、他の男達ときたら」

  女中弐「よしな。誰に聞かれてるかわからないわ」

  女中参「そうね」

  女中壱「豆腐を四つに切り分けてさらにひとつを半分にと」

  女中弐「だから、豆腐が変な数だったのね」

  女中壱「残してもらえたのと、器に入れ替えてる間に、婿さまがおひとりでミョウガの古漬けを一つかめから取り出して刻んでるの。手つき良いのよ。流れるように刻んでたわ」

  女中参「あら。そんなことまで出来るの?ますますいい男ね」

  女中壱「その刻んだミョウガを豆腐にのせて」

  女中弐「美味しそうね。それで、さっきから何してるの?」

  女中壱「婿さまとキヌさまからご飯を炊くのに入れてほしいって言われて」

  女中参「だったら少し水は多めにしないと」

  女中弐「そっか。でも変わったこと色々あるものなのね」

  女中壱「ミョウガの古漬けはそのまま出してたからね。私達もまだまだだわ」


 塩でミョウガの水分がよく出ておりその漬け汁もご飯を炊くのに使う。炊き上がり蓋を取ると香りもよく米がより茶色くなり茶飯のよう。


  ツネタロウ「あれ?布がないな。どこやったっけ。無いから着物で拭いとこ」



~ある日の下男の仕事~


シマダ屋敷


 とある日のシマダ屋敷にて、下男の仕事に密着してみました。

 下男の仕事は朝が早い。夜が明ける前までには起きる。


 ◆おはようございます。起きれなかったことはありませんか?


  下男「ははは。ないですね。朝は、交代制なのでぐっすり寝てますし4時(寅の刻)頃までには仕事を始めています」


 なんと、朝4時までには働いていると。


 ◆まずなにから取り組むのですか?


  下男「前日までに準備してある薪をかまどにくべます。たまにですが、急遽湯を作らねばならないことがありまして。すぐに対応できるようにと、薪をくべまして種火をつけて置く必要があります。火事が怖いので、女中からひとりが見張っています」

  女中「種火の見張りと兼ねて朝餉の準備にとりかかります」


 ◆連携が取れてるのですね。すばらしい


  下男「火事は怖いですからね。次に、井戸の水汲みをします。力仕事や汚れ仕事は下男の仕事でもありますからね。タライいっぱいに水汲みをします。あとは女中の手伝いになります」

  女中「タライに水を汲んでもらうと食器の洗い物や調理に使えます。足りない分は、自分たちで水汲みをします。その頃には遅番の女中たちが来ますので汲んでもらいます」


 ◆他に力仕事や汚れ仕事はどのようなのがありますか?


  下男「水汲みは他にもありまして、風呂の水汲みもいっしょにやってしまいます」


 ◆風呂でしたら、先に湯を抜いてからでも良いのでは?


  下男「湯を抜くのは最後ですし女中が使い終えてから抜きます。洗濯は残り湯を使います。洗濯は、風呂場で行うので捨てる湯がだいぶ減ります。残り湯で風呂を洗いますし単純に捨てるようなことはしません。もったいないですからね」


 ◆先もって水を汲むことでどんな効果があるのですか?残り湯を抜いてからでも良いと思います


  下男「10時頃(巳の刻)頃には、客人や業者の出入りが激しくなりますので、それまでに水を汲んでおくことで手間を減らせます。かめにいくつも入れておき風呂場に運びます」


 ◆あの風呂場にある瓶がそれですか


  下男「瓶を運ぶ頃には、休憩を挟みながら運べます。天秤棒てんびんぼうを使い一度に二つ運べる場所はありがたいですね。12時頃(午の刻)なので客人はほとんど来ません」


 ◆体の負担が大きいですがどう癒やしてますか?


  下男「いや、特にはないですね。家に帰って息子に踏んでもらったりするくらいですかね。食事はしっかり取れますしたくさん寝てますからね。それに下男は他にもあとふたりいます。交代しながらなので思ったほど大変ではないのですよ」


 ◆風呂を沸かすのはそれからということでしょうか


  下男「客人などの対応には、他の下男にお願いして今日はわたしが風呂を沸かします。余裕ができたら風呂を沸かすのに手伝ってもらいます。ひとりで風呂を管理するのは大変ですからね。たわしで浴槽を洗うのでひとりでは厳しいですね。洗い場もあります」


 ◆おひとりではないのですね。安心しました。


  下男「さすがにひとりでは手が回りません。洗い終えたら瓶の水を張ります。ここで汗を掻くので心地よいですよ。暑い季節は水を扱うので汗を書いても水汲みしながら汗を流せます。寒い季節は、体を動かすことで熱くなります。楽しい仕事なんですよ」


 ◆意外ですね。もっと苦痛を伴うのかと思ってました。


  下男「苦痛なんてとんでもない。寒い季節の汗を流したのを拭き取ってから火起こしします。そのままだと寒くなって体が動かなくなってしまいますから。体がすぐに動けるようにしないといけませんね。日中なので、火起こしがしやすいので、寒い季節は火にあたるので寒さも凌げます。もっとも、それまで動いているのですぐには寒くなりません」


 ◆風呂沸かすのに下男さんのお仕事に苦労があったのですね


  下男「ん?苦労は特にないですよ。他の家には無いことなので楽しいですよ。湯船のある家はほとんどありませんからね。貴重な経験です」


 ◆失礼しました。つまらないことを言いました。他の家から聞かれたりしませんか?


  下男「ありますよ。中はお見せできませんが、外の火起こしだけお見せしてます。そこから考えてもらうんです」


 ◆湯加減はどう決めるんですか?


  下男「手の空いた下男か女中に湯加減を見てもらいます。手を入れて確認します。確認後は、木のフタを半分ほど閉めることでぬるくならないようにしています」


 ◆フタを閉めてたのですか?ツネタロウさんたちが入る頃には湯気で充満してますが


  下男「フタをすべて閉めないことで湯気が出やすくなってます。入ると言われましたら先回りしてフタを開けて湯を少し沸かし、かき混ぜています。そうやって充満させるようにしています」


 ◆手間がかかっていますね。連続で入ってもらうと助かりますか?


  下男「まぁそれはありますが、家臣の方々が入られるのでほとんど連続で入ってもらってます。一度に入れる人数に限りがあるので、待ってから入ることもあるんです。もちろん、殿や身内の方々を最優先になりますが。待機場所は、空いている部屋がほとんどです。汚れがひどい場合は、外で水を被ってから屋敷に入ってもらいますので、屋敷の中で泥が落ちることはまずありません」


 ◆寒い季節の水をかぶるのは水垢離みずごりみたいですね


  下男「ハハハ。仕方ないですね。風呂の湯を外に出すわけにもいきませんから。水垢離ですか。ははは。願いが叶いそうですね」


 ◆なにか願い事などありますか?


  下男「この生活がずっと続きますように。でしょうか。下男には下男の仕事があり、下に見られることがありますが、わたしにはこの仕事が向いています。妻と子と暮らすことができるほどのお給金をいただいてます。贅沢はできませんが、日々の暮らしは充実しています」


 ◆風呂の他にありますか?


  下男「あとは、片付けと翌日の薪の準備などをして帰ります」


 ◆帰るのはいつくらいですか?


  下男「22時頃(戌の刻)くらいでしょうか。他の下男もそれくらいですね」


 現代だと完璧にアウト。19時間拘束労働。ただ、ほどよく休憩を挟みながらなので。早番は最後まで残るため長いようですが、遅番だと13時間拘束労働だと。


 最後に、時間別にまとめます。ある日の下男のお仕事でした。


寅の刻 出勤、薪の準備

卯・辰の刻 水汲み

巳の刻 風呂の水汲み

午の刻 休憩と昼食を取りつつ風呂の清掃

未の刻 風呂を沸かす。その間に、早めの夕食をとる。

申・酉の刻 風呂の湯の熱を安定させる。湯を足す。汚れがあれば洗い流す。

亥の刻 明日の準備が完了次第帰宅




~颯爽~


 片付けが終わる頃合いを見て厨房へ向かう。

 颯爽と現れたツネタロウに女中たちは手を取り合う。


  ツネタロウ「そろそろよろしいでしょうか」

  女中頭「お待ちしておりました」

  ツネタロウ「では身はどちらに」

  女中頭「いたまぬように酢で締めておきました」

  ツネタロウ「どれ。うん。あまり匂いませんね。ではこのイワシの皮と身をがします」

  女中「難しいですね」

  ツネタロウ「キレイに剥けなくても良いですよ。慣れれば上手くなります」

  女中「はい。がんばります」

  ツネタロウ「剥がれた身を叩くのですが、はじめにいくつか身を切ります。そのあと、縦にトントントン。包丁を横にトントントン。これを何度か繰り返します。ここで細かく何度も叩くとしっかりとした団子になります。大体で団子にするとほぐれやすくなります。これは、父上の好みに合わせてもよいでしょうし、鍋のようにするならばほぐれにくい細かく叩いた団子が良いでしょう。色々と試してみてください」

  女中頭「それだけですか?」

  ツネタロウ「はい。簡単でしょ。手間はかかりますが、手間がかかった料理ほど美味しいものはございません。疲れて帰ってきた父上は癒やされること間違いありません。ぜひお試しください」


 あっという間に終わってしまった。女中たちはどことなく淋しげ。


  ツネタロウ「そうそう。団子にするときには、塩を入れて良く練ってくださいね。身だけでは団子になりにくくなります。練るのは手でコネながらよーく練ってください」


 大事な部分を聞き忘れていた。


  女中頭「なるほど塩で団子にするのですね。ええと他に」

  女中「でしたら、余った皮はどうするのですか?捨てちゃうんですか?」

  女中頭「口の利き方!」

  ツネタロウ「良いですよ。ほとんど家族なのですからね」

  女中頭「家族だなんて恐れ多い」

  ツネタロウ「それで、皮ですが生米なまごめをすり鉢でこなにしたのを皮にまぶして揚げるとカリっとした煎餅せんべいが作れます。暇な人に時々生米を粉にしてもらうと良いかも知れませんね」

  女中「そっか!美味しそう」

  女中頭「言葉!形が崩れても良いのでしょうか」

  ツネタロウ「良いでしょうね。父上が好まなければ、皆さんの菓子にしてもらえばよいのでは?父上は食材の無駄は嫌うかもしれませんが、菓子としてみなさんが楽しいと思うひとときがあれば喜んでくださると思いますよ。何事も相談ですよ」


 ぱぁっと明るい雰囲気と笑顔が花咲く。


 つみれ団子の作り方と余った皮の行方が決まったことで、別邸へと戻る。


 これらのやり取りを陰ながら見届けるトシマサ。

 覗きはよくないよ。


この頃は、隔週だったんですね。現在は、1日2本投稿することが増えました。

1本目は女中たちの体験談。シマダ屋敷の女中たちは人数が多いためか会話が弾む。仲良く働いていて良い職場ですね。女中の中で、ツネタロウの株が上がっていく段階の話。


2本目は、とある下男のインタビュー形式。

妻子のいる下男さん。贅沢はできなくても今の仕事に誇りを持ち楽しい日々を送っているという。仕事に誇りを持てるというのは良いことですよ。


3本目は、ツネタロウさんが女中さんに料理指南する。

なんてことない料理指南。高いところから塩を振るようなことはしませんが、高身長の男性が女性に混じって料理をするのってなんかカッコいいですね。私は好きです。特に後ろ姿は萌えますね。

若い女中さんの馴れ馴れしさ。鼻につくかもしれませんが、女中頭の「言葉遣い!」を言わせたくて何度か登場。


3本投入しても4400文字と短文らしさが出ていますね。


ではまた来月お会いしましょう

おつ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://narou.nar.jp/rank/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ