最終話「二人の終着点」
本編最終話です!
楽しんで読んでいただければ嬉しいです!
愛奈が美香の家に行ってからしばらくして、愛奈は琴音の家に呼び出された。
深刻そうな顔をして、琴音は愛奈を見つめている。
琴音:愛ちゃん。呼び出された理由、分かる?
愛奈:皆目見当もつかないなぁ
琴音:分かってるくせに…………
愛奈:そんな事より、折角だからゲームしようよ。新作買ったんだよ~
琴音:愛ちゃん…………
愛奈:ね、ほら早くやろ~
琴音:愛ちゃん! ちゃんとこっち見て!
愛奈:なっ、なになに
琴音:愛ちゃん最近おかしいよ…………?
愛奈:私が? 琴ちゃんの勘違いじゃないの?
琴音:はぐらかさないでよ。美香先生と何か…………あったんじゃないの?
愛奈:本当に大丈夫だって…………
琴音:美香先生、私に聞いてきたよ? 愛ちゃんの事。
愛奈:っ!?
琴音:愛ちゃん、最近美香先生の事も避けてるじゃん
愛奈:大丈夫だから、ほっといてよ!
琴音:私は愛ちゃんが心配なの!
愛奈:なんで、琴ちゃんの方が怒ってるのよ…………
琴音:愛ちゃんから話してくれるのを待ってたけど、もう無理、もう見てられないの!
愛奈は琴音の本気の怒りに、隠していた気持ちを抑えられず、涙を流した。
そんな愛奈を、琴音は優しく抱きしめる。
琴音:ね? 良かったら、話してくれない?
そんな優しい言葉に、愛奈は静かに頷いた。
愛奈:私はね…………代わりでしかなかったみたい
琴音:どういうこと?
愛奈:先生の初恋の人と、私が似てたから優しかったんだ。それなのに私、勘違いしてた
琴音:つまり…………失恋?
愛奈:……うん。先生は私を通して、初恋の人の面影を追ってただけ
琴音:何それ、先生にそんな事言われたの?
愛奈:…………言われて…………、直接じゃないけど
琴音:それ、何か早とちりしてるんじゃない? そうじゃないなら、先生はクズになるけど
愛奈:先生はクズじゃない!
琴音:…………気持ちはまだ、先生の事が好きなんだね
愛奈:私が勝手に暴走して傷ついてるだけだもん
琴音:そっか…………
愛奈:本当は前みたいに戻りたいけど、今は先生の事を直視できない
琴音:じゃあ、気持ちが落ち着くまで、私が口裏合わせを手伝うよ
愛奈:ほんと?
琴音:うん。それで? 落ち着いたら愛ちゃんはどうしたい?
愛奈:そのあと?
琴音:そ。いつまでも宙ぶらりんじゃ、いられないでしょ?
愛奈:私は…………振られてもいいから、ちゃんと気持ちを伝えたい
琴音:よく言った! よし! 慰める準備はしとくから!
愛奈:ちょっと!? 私が振られる前提!?
琴音:あっ、ようやく元気出てきたじゃん
愛奈:あーもう! 今日はゲームとことん付き合ってもらうからね!
琴音:え~、もう。しょうがないなぁ~
その日二人は、夜が明けるまで一緒に過ごした。
十二月中旬、世間がクリスマスの準備をし始めた頃、愛奈は先生の家を訪れた。
今日この日に至るまで、結局愛奈と美香は最低限の会話しかしていなかった。
そんな愛奈は無言でインターホンを押す。
既に日は落ち、家々からは明かりが漏れていた。先生の家も、例外なく。
愛奈:…………でて、くれるかな?
愛奈の予想とは裏腹に、室内からは慌てたような足跡が響き、すぐにドアが開かれた。
美香:愛奈さん!?
愛奈:こんばんは。美香先生
美香:こんばんは。って、どうして…………?
愛奈:少し、先生とお話ししたくて
美香:…………私の事、嫌いになったんじゃ…………
愛奈:嫌いになんてなる訳ないじゃないですか。私が顔を合わせられなかっただけです
美香:本当に? 嫌われてない?
愛奈:はい。色々とお騒がせしました
美香:よかったぁ!!!! もうずっと悲しかったんだから、愛奈さんすーぐ逃げるし!
愛奈:先生だって似たような事してたじゃないですか
美香:うっ、何も言えない…………
愛奈:それでその、中に、入れてもらえませんか?
美香:えっ、中に…………?
愛奈:やっぱり、ダメ、ですよね…………
美香:いや! いい、良いけど…………
愛奈:何かあるんですか?
美香:いや、上がって上がって
愛奈:おじゃましまー……す…………ってきたなっ!?
美香:だから家に上げるか迷ったのよ
愛奈:動物園に逆戻りじゃないですか!?
美香:ちょっと!? なんで今日一の笑顔見せてるの!?
愛奈:だって、これこそが、私の中の美香先生なんだもん
美香:私にどんなイメージ持ってるの!?
愛奈:というか、この前私が居なくても何とかなるって、言ってませんでしたっけ?
美香:それは、その…………。あなたに嫌われたと思って、気力が起きなくて
愛奈:言い訳は見苦しいですよ~美香先生
美香:あれ? …………さっきのしおらしさはどうしたの?
愛奈:全くもう、私が居ないと先生はダメダメですね
美香:あれ? 私の言葉、届いてない?
愛奈:ほら、さっさと片付けましょう!
愛奈は手慣れたように、美香よりも先に部屋の奥へ向かった。
美香:何だかちょっと、嬉しいかも。もうこんな事、二人でしないと思ってた
愛奈:何か言いました?
美香:なーんにも? さ、片付け手伝ってくれる?
愛奈:先生こそ、片付けして逆に汚さないで下さいね
美香:愛奈さんの中で私の人物像はどうなってるの!?
二人はこれまでの様に片付けをし、すっかり綺麗になった部屋でくつろいでいる。
愛奈:やっと片付いた~
美香:愛奈さん、お肌ツルツルしてない?
愛奈:いや~、この達成感最高~! 先生はこれからもダメダメで居て~
美香:何その最悪な提案!? まぁ、でもやっぱり愛奈さんの手腕は凄いわね
愛奈:ふふん? 私を彼女にすれば、これぐらいいつでもやったげますよ~
美香:え…………? それはどういう…………?
愛奈:そのままの…………意味ですよ?
美香:冗談だとしたら、相当意地が悪いわよ?
愛奈:冗談言っている様に見えますか?
愛奈は先生の目をじっと真剣に見つめた。
愛奈:もう、先生のにぶちん。ちゃんと声に出さないと分からない?
美香:ちょっと待って、整理させて…………
愛奈:やだ。目、逸らさないでね?
愛奈は先生の頬に触れ、逸らしかけてた視線を無理やり自分に固定した。
美香:…………はい
愛奈:私、先生の事が好きです。…………付き合いたいの、好き、です…………
美香:っ!?
愛奈:ここ数か月間、ずっと先生の事だけ考えていました。大好きです。先生…………
美香:ちょっ!? いったんストップ!
愛奈:どうして? まだまだ、伝えきれてないんですけど…………
美香:その前に、愛奈さんは本当に私でいいの?
愛奈:先生じゃないとダメなんです
美香:まだ…………あの子に未練があるかもしれないわよ?
愛奈:私だけを見てくれるように、振り向かせて見せます
美香:先生と、生徒なのよ…………?
愛奈:そんなの関係ありません!
美香:…………じゃあ、返事の前に、私も一言言わせて
愛奈:な、何を言われても、覚悟はできてるから
美香:じゃあ言わせてもらうけど…………
愛奈:うん…………
美香:私の方が、愛奈さんの事大好きよ
愛奈:え?
美香:私が愛奈さんに向けてる感情の方が、絶対大きいもの
愛奈:え、え?
美香:向けてる愛の大きさなら、負ける気はしないわ?
愛奈:先生も、私の事が…………好きってこと?
美香:えぇ、あなたが思っている以上に
愛奈:でっでも、そんなそぶり一度も…………
美香:だって、私先生だもの。思ってても、悟られるわけにはいかないでしょ?
愛奈:…………じゃあ、両想いって…………こと?
美香:そうよ
愛奈:ほんとのほんとに?
美香:えぇ、間違いなく
愛奈:じゃ、じゃあ! お付き合いできるってこと?
美香:それは…………
愛奈:どうして!? 両想いならいいじゃない!?
美香:お付き合いを始めてしまったら、歯止めが利かなくなると思うから…………
愛奈:歯止めが?
美香:愛奈さん。私の愛を受け止める、覚悟はある?
愛奈:先生の愛なら、私いくらでも受け止める。だから、私の気持ちも受け止めて?
二人は、真っすぐにお互いを見つめあった。
美香:…………愛奈さん…………分かった
愛奈:ほんとに!?
美香:ね? 私からも、言わせて?
美香は愛奈の手を取り、顔を寄せる
美香:私と、付き合ってください
愛奈:はい、喜んで! 堕天吸血鬼美香エル先生?
愛奈:ちょっと!? 今その名前出す!?
愛奈は目元に薄っすら涙を浮かべながら、今日一番の満面の笑みを美香に向けていた。
お読みいただき。ありがとうございます!
このあとは、軽いエピローグを書いて、それが本当のラストになります。
二人のあまあま具合が書けて満足してます!
エピローグも、もしよければご覧下さい!