第三話「先生の家、再び」
これで二度目(三度目)の先生宅への訪問です!
さて、前回と比べ、二人の間にはどんな違いが出てきたでしょうか?
最後の良い雰囲気のシーンまで、ぜひお楽しみください!
愛奈の、再びノートが見たいという要求から二週間後、その願いが叶う時が来た。
愛奈:美香先生、居ますか~
美香:…………
愛奈:美香先生~、可愛い代表の愛奈が来ましたよ~
美香:……………………
愛奈:あれ? いないのかな? 堕天吸血……
その瞬間勢いよく扉が開かれた。
愛奈:おはようございます~。そんなに慌ててどうしたんですか?
美香:近所に聞こえるでしょう!? その呼びだし方は肝が冷えるから辞めて頂戴!
愛奈:そんなに言うなら、もっと早く出てくださいよ~
美香:ぐぅの音も出ないわね…………
愛奈:それで、何してたんですか? 今日私が来るのは言ってましたよね?
美香:その…………ちょっと片付けを…………
愛奈:片付け!? あの美香先生が!?
美香:ちょっと、失礼じゃない?
愛奈:いやいや、自分のこれまでを無い胸に手を当てて考えてみてくださいよ
美香:私だってやる時はやるのよ? というか胸の話はしないで
愛奈:ちょっと楽しみですね。最初から綺麗な先生の部屋なんて、初めてですし
美香:あっ、そのことなんだけどね?
愛奈:じゃあ、早く見たいのでお邪魔しちゃいますね?
美香:ちょっと待って!?
愛奈:えぇ? なんで拒むんですか?
美香:いや、ちょっと弁明させて欲しくて…………
愛奈:弁明することなんてあります?
美香:いやね、片付けようとしただけっていうか? ね?
美香が目を逸らして何か小声で喋っている隙に、愛奈は玄関の中を覗き込んだ。
愛奈:美香先生? 全然片付いてないように見えるんですけど…………
美香:だから、片付けようとしたとしか言ってないじゃない!?
愛奈:つまり、手を付けていない、と…………
美香:…………そうよ
愛奈:はぁ、じゃあ今日も私が片付けますよ。ほんとしっかりしてくださいよね
美香:…………本当に助かるわ
愛奈は、夏休みよりかは少しだけましな室内に、足を踏み入れた。
愛奈:おじゃましまーす
美香:今日は本当にお邪魔しに来たものね
愛奈:そんな事言うなら片付けしてあげませんよ?
美香:さぁ、いらっしゃい? 今お茶出してあげるからね?
愛奈:うわ、露骨な手のひら返し。というかこの部屋は人を歓迎できる状態じゃないし
美香:…………今は愛奈さんの実力を信頼しているわ
愛奈:いやな信頼だなぁ。まぁ、ちゃんと片付けますけど。ノートは見せてくださいね
美香:…………やっぱり見せないとダメ?
愛奈:掃除と交換条件です
美香:はぁ…………どうせ見せないとバラされるだけだし、分かったわ
愛奈:それじゃ、さっさと始めますよ? やり方もついでに覚えといて下さい
美香:勉強させてもらうわね
愛奈:…………意外とドジなんだから、やる気の空回りだけは辞めて下さいね?
美香:せっかく人がやる気出してるのに、水差さないで!?
その後二人は、ゴミまみれの部屋を掃除し始めた。
流石に三回目ということもあってかなり効率的に進み、片付けはすんなりと終わった。
愛奈:ふぅ、やっぱりやりごたえがありますね~この部屋は
美香:そんな、動物の小屋を掃除し終わったかのような満足げな顔しないでよ
愛奈:いや、事実じゃないですか
美香:どこが!?
愛奈:まぁ冗談は置いといて、等価交換忘れてませんよね?
美香:うっ、分かってるわよ
美香は教材を置いていた棚から、この前のノートを引っ張りだしてきた。
愛奈:あっ、ちゃんと反省して見つけられないような場所に隠してる
美香:どこかの誰かさんに勝手に見られないようにね
愛奈:どこの誰なんでしょうね~
美香:あなたよ、あ、な、た
愛奈:私? 私は勝手に見るなんてことしませんよ~。ほら、今回は許可をもらって見るんですから
美香:誰のせいでこうなってると…………
愛奈:ほら、はーやーく~。音読はしませんから
美香:写真撮るとかも禁止だからね? …………少しでも馬鹿にしたらすぐ回収するから
美香の手から、愛奈にあのノートが渡された。
愛奈:これこれ、先生ありがとう
美香:全く、何が目的なのよ…………
愛奈:ただ、面白いからですよ~。それ以上も以下もありません
美香:一番厄介な理由だった…………!
愛奈:まぁ、それだけなので、誰かに言うとかの心配はしないでいいですから
美香:本当に? 琴音さんあたりと共有したりしない?
愛奈:しませんよ~。私だってそれぐらいの分別は付きますって
美香:そう……見られてるのは恥ずかしいから、少し向こうに引っ込んでるわ。満足したら教えて頂戴
愛奈:はーい、分かりました~
美香:(普段はお茶らけてるのに、超えちゃいけないラインはしっかり見極めてる。やっぱり、見た目だけじゃなくて内面も、初恋のあの子にそっくり…………。それにしても、少し疲れたな)
愛奈:(言えるわけないじゃない…………。もしかしたら両想いかもしれないだなんて。それに、二人だけの秘密って特別感あるじゃない?)
愛奈は日記を読みながら、一人綺麗になった部屋で見悶えていた。
一時間ぐらいで、愛奈はノートを堪能しつくした。
愛奈:おーい、美香先生。もう出てきていいですよ~
美香:……………………
愛奈:美香先生、いや堕天吸血鬼美香エル先生~
美香:……………………
愛奈:あれ? おかしいな、これ言ったら飛んでくると思ったんだけど
美香:…………
愛奈:扉開けますよ~、先生
美香:…………
愛奈:開けちゃおう
扉を開けると、そこにはベットの上で布団に包まった美香先生が居た。
愛奈:なぁんだ。寝ちゃってたのか
愛奈:いつも先生してて、気を張り続けてるもんね
愛奈:それにしてもぐっすり眠ってるなぁ。こんなに無防備に寝ちゃって…………
愛奈:私が男だったら確実に襲われてるよ?
愛奈:…………すぐ起きないと、イタズラしちゃいますよ~
愛奈の呼びかけには一切答えず、美香先生は眠り続けていた。
愛奈:イタズラしちゃいますからね!
愛奈は、先生の頬を人差し指でつついた。
愛奈:うわ、ぷにぷにじゃん。
愛奈:やっぱり…………先生ってすごく可愛いんだよなぁ
愛奈:私が女じゃなければ、絶対にほっとかないのに
愛奈:…………大好きだよ、先生。いつもありがとうね
美香先生は寝返りを打ち、愛奈とは反対の方を向いた。
愛奈:先生が起きるまで、此処で見守ってようかな
結局美香先生が起きたのは、それから一時間後だった。
美香先生がイタズラされてすぐ起きていた事なんて、愛奈は知る由もなかった。
さてさて、先生は愛奈さんの好きをどう解釈したのでしょうか?
想いが通じて結ばれるのか、はたまたすれ違ってしまうのか?
まだまだ更新していきます!
もしよければ、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!