お愛憎さま。平和バージョン。
バッドエンド回避。
妹が大好きだ。
優しくて、可愛くて、時に厳しく、思いやりのある子。
こんな僕に笑いかけて手を伸ばしてくれた子。
妹が大好きだ。
強くて、格好よくて、誰かを守れる、勇気のある子。
こんな僕を狭い檻から助け出してくれた子。
妹が大好きだ。
綺麗で、よく笑って、みんなに好かれる、愛ある子。
こんな僕を探し出して掬いあげてくれた子。
妹が大好きだ。
だから僕はこの世界が嫌いだ。
妹が大好きだ。
だから僕は世界から妹を守ることにした。
「だからってバ〇サンを無許可で使用するなこの馬鹿姉野郎!」
「だってりーちゃん、虫、嫌いでしょ!? おねーちゃんはね、りーちゃんのことを思って──」
「全力で換気しないと死ぬところだったし僕が寝てる間にしないでくんない!?」
「だってぇ」
「だっても何も無いわ! るーは本当にお馬鹿! バ〇サン買ってくんなよもう!」
「るーお姉ちゃんはね、りーちゃんを思ってね」
「ループしないでくれ、僕は怒っているのだ」
「……っていうか、バ〇サン、効いたのかな」
「……さぁ。でも昨日出たからな、例のアレ」
「黒いアレ」
「バ〇サンってよく分からないけど、嫌がるんだろ? 虫が……煙を」
「お姉ちゃん初めて使ったから説明読んでない」
「阿呆」
「痛い、頭叩かないで」
「るーの阿呆のお陰で、僕らはこの物置から出られないんだぞ、煙が全部逃げるまで」
「りーちゃんと一生一緒で楽しいぜ!」
「鼻もぐぞ」
「ごめん」
「まぁしかし……僕のためなんでしょ? それは、嬉しいよ」
「! でしょ! お姉ちゃんを褒めて!」
「よしよしいい子ですね〜。飴ちゃん食べるかい?」
「食べる!」
「うんうん」
「…………」
「…………」
「……不味い……」
「これが罰です」
「何味……これ……」
「というか、いつの飴かも知らん」
「これが罰かぁ……うぇ……」
「吐くなよ」
「はぁい……」
「そろそろ煙逃げたかな」
「わかんない」
「なんか怖いし、お兄ちゃんたち帰ってくるまでここに居る?」
「そうしよっか」
いつのまにか鞄の底の方に入っていた飴って、怖いですよね。