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8 鏡の正体

鏡が割れて闇が広がった先には・・・・・・

 鏡の破片から生み出された闇が空間に広がっていく。



「気を付けて! 何かが出てくるよ!」


「恵子ちゃんが考えなしに鏡を叩き割るからですぅ!」


「榛名ちゃん! 今は責任を問う場合ではないですから、戦闘準備を整えてください! それに恵子ちゃんの考えなしの行動は毎度のお約束のようなものですから、気にしたら負けですよ!」


「タレちゃん、わかりました! 要は恵子ちゃんがバカということですね! それでは私も準備をしましょう! さあ今こそ私の真なる大いなる力をこの場に召喚せる時が至り! 今こそここに発現せし我が力がこの世の数多の闇を撃ち滅ぼす時! 神が宿りし我がバトルスーツよ、この場に光臨せよ!」


「榛名ちゃん、先日に比べてバトルスーツを呼び出す前フリが一段とグレードアップしていませんか?」


「見せ場は積極的に作り出すタイプなので」


 どうでもいいかと首を横に振る三咲、彼女はすでにメイド服に身を包み手には大剣を握り締めている。その横には相変わらずモコモコした姿の着ぐるみ榛名が登場して、右目の脇に横ピースを決めるポーズを取るのだった。だが、着ぐるみの手はモコモコしたドラえも○の手のような形状であるので、たとえ横ピースをしようともただのイヌの手にしか見えなかったのはいかにも残念である。



「さあ、何が出てくるのかお楽しみの時間だよ! そこの魔法少女たち! 自分の身ぐらいは何とかしてよ!」


 恵子に急かされて呆然としていた彼女たちも大急ぎで変身して、色取り取りの艶やかなコスチュームに身を包んで立つ。そして春名をその姿を羨ましげに見ているのだった。



「タレちゃん、なんだか私の着ぐるみだけ大幅に浮いているように感じるのは気のせいでしょうか?」


「榛名ちゃん、気が付くのが遅いです」


「やっぱりそうだったんですね! 私も魔法少女の皆さんのような可愛らしい衣装が良いです!」


「でも春名ちゃんは気ぐるみがないと普通の人以下の力ですからその姿で我慢してください」


「仕方がないですねぇ。そうです! いい案が浮かびました! 次は魔法少女の着ぐるみを作ってみましょう!」


「出来上がりはおそらく ”ふなっしー” みたいになりますから、止めた方がいいですよ」


「デスヨネー」


 折角のアイデアが三咲によって一刀両断された榛名は、自分のモコモコした着ぐるみ姿を見て少々落ち込み気味だ。そこに恵子の鋭い警告が飛ぶ。



「闇が晴れてきたわよ! 何が現れるかわからないから注意して!」


 恵子の声とともに周囲の視界が晴れてきた。そこは先程のビルの一室とは相変わって無機質なコンクリートの床が周辺見渡す限り広がっている場所へと変化していた。だがその場は横の広がりはあっても高さは精々100メートル程度しかない世界、空に当たる部分には真っ暗な闇だけが広がるどう見ても人工的な空間としか思えない姿をしている。


 そして恵子たちが立っている500メートル先に空を形成している闇が渦を巻くようにして降りてくる。その姿はそこに巨大な竜巻が生み出されたように映るのだった。



「何か現れるよ!」


 恵子の目にはその闇の竜巻の正体が明らかになっていた。それは昨日目撃した妖魔が闇を集結させてそこから姿を現したのと基本的には同じであった。ただしその規模と密度が昨日とは桁違いであるのが唯一の相違点ではある。 


 そしてついに空から降り立った闇がはっきりとした形を成していく。それは恵子の異世界生活では何度も対戦したドラゴン、だがその体の大きさと胴体から長い首が3本伸びている点から言うとキングギド○という古い時代の映画に出てきた怪獣そのものであった。



「ハハハハハ! ついに私は鏡の世界から脱して現実の世界で行動する自由を得た! お前のような力を持つ者に鏡を割らせるのが真の目的であったのだ! 私を解き放った礼に順にお前たちの体を食らってやろう!」


 これが鏡に潜んでいた者の正体なのか! ドラゴンとなったそれは更に使い魔を呼び出す。空から闇が雨のように落ちてきて、夥しい数の妖魔となって恵子たちに襲い掛かろうと牙を剥く。



「なんという恐ろしい妖魔なの・・・・・・」


 愛美たち5人はその姿を見て絶句している。ドラゴンの圧倒的な魔力に満ちた姿が彼女たちの戦う気力そのものを根こそぎ奪っていた。それほど目の前に出現した妖魔は彼女たちの目には規格外の存在に映っているのだ。だがこの3人は全く別らしい。



「中々活きが良さそうじゃないの! こういう相手を待っていたのよ!」


「恵子ちゃんの言うとおりです! この着ぐるみが本気を出せる相手がようやく出現しました!」


「ドラゴンを3枚におろすのはメイドの嗜みですから」


「えっ! タレちゃんがドラゴンを3枚におろしたの?」


「あちらの世界ではここまで大きなドラゴンがいなかったので、真っ二つにしか出来ませんでした」


「ふーん、ドラゴンって真っ二つになるんだ」


 恵子と三咲の会話を聞きながら魔法少女たちは ”ならない! 絶対に真っ二つにはならない!” とガクブルしている。どうやら規格外はドラゴンだけではなさそうだった。



「タレちゃん、小物はいっぱいこっちに来るから任せていいかな?」


「お任せください。とはいっても今度は数が万を越えているようですから、久しぶりに奥義を出しましょうか」


「ええ! 昨日の空斬刃でも十分強力だったけど、まだ上があるの?」


「はい、それでは披露いたしますね。邪神をもその姿形をなくして天に帰っていった究極奥義! 神斬刃ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!」


「タレちゃん! それってヤリ過ぎだってばぁぁぁぁぁぁぁ!」


 昨日三咲が妖魔に放った技の数百倍の威力を誇る斬撃と衝撃波が地面のコンクリートの表面を削り取る濛々とした煙を巻き起こしながら使い魔を飲み込んでいく。そのまま3つ首のドラゴンに真っ直ぐ進んだかと思ったら、その巨体を切り裂いて真っ向から押し潰していった。



”ズズズーーーーーン!” 


 空斬刃よりも更に重低音の爆発音が周囲に響く。まるで核兵器がその場で爆発を引き起こしたかのような巨大なきのこ雲が巻き起こり、強烈な爆発の余波が恵子たちに襲い掛かる。



「これは危険です! 着ぐるみ流防御壁!」


 防御力が低い魔法少女を庇って榛名の着ぐるみが横にボヨ~ンと伸びて彼女たちの体を爆風から守る。こんな便利な使用法があるとは着ぐるみも中々侮れない。魔法少女たちを包み込むようにして春名の着ぐるみは彼女たちを守っていた。


 そしてようやく凶暴とも言うべき嵐を100倍ほど強化した爆風が収まると、そこには3つ首のドラゴンも使い魔たちの姿も何処にも見当たらなかった。



「ゲホゲホッ! タレちゃん、もしかしてたった一撃で倒しちゃったの?!」


「ゴホゴホッ! どうやらまた威力を間違えたようです。3枚におろす前に跡形もなく吹き飛ばしてしまいました」


 恵子のオリハルコン製の鎧も三咲のメイド服も爆発で巻き上げられた埃をモロに被って煤けている。だがどうやらここに居た妖魔はすっかり片付けたようだ。その証拠に空を覆っていた闇はすっかり晴れて、其処にはただのコンクリートの天井が存在するだけだ。



「呆気なく終わっちゃったわね。私は何もしなかったわ」


「恵子ちゃん、本当にすみませんでした」


 落ち込む恵子に岬が必死に頭を上げている。しばらくするとどうやらこの空間の出口らしき扉が現れて、一同はそこから外に出て行くのだった。だが当面は恵子の肩はガックリと下がったままであったのは言うまでもない。





 この光景を離れた場所で見ている者が存在する。それは恵子に叩き割られて粉々に砕けた例の鏡であった。すっかり元の姿を復元して先程までと同じ形で建物の北側の壁に据え付けられている。



「やれやれ、これであの者たちも納得して私を追い掛けるのは止めるであろう。いちいちあのような恐ろしい人間を相手にしていてはこちらの身が持たないわい。それにしても最も強力なドラゴン型の使い魔を失ったのは少々痛手ではあるな。しばらくは身を潜めて、再び我が手足となる魔法少女を集めるとするか」


 鏡の表面に映っているその人物はいかにも酷い目に遭ったと言わんばかりに独り言を呟いているのだった。その人物は恵子たちに一杯食わせて使い魔を鏡の本体だと思わせることに成功していた。当然彼女たちは本体を倒したものと満足してすでに帰路についている。



 だが自分しか居ないものだと安心し切っていたその鏡の中の人物は、突然掛けられた声にハッとして顔を上げる。



「ようやく居所を掴んだぞ。ドレインミラーことローラーハイド・アンダルス・ランペ-ジ、******第一級手配犯に間違いはないな」


「お、お前は何者だ!」


「******を股に掛ける賞金稼ぎだ。尻尾を掴むのに苦労したぜ。抵抗は無駄だ、素直に捕縛されるんだな」


「バカめ、こうして鏡の中に居る私をどうやって連行するつもりだ? 鏡を割ってしまえば私は何処か別の場所に転移するぞ」


「なに方法はあるのさ。鏡が割れない限りはお前は何処にも行けない。ならば鏡ごと収監すればいいだけの話だ。欲をかいてこの場に留まろうとしたのが命取りだったな」


 その場に現れた男はアイテムボックスから高性能のコンクリートカッターを取り出すと、鏡の周囲のコンクリートを注意深く切り出す。振動を与えて鏡が割れてしまっては元も子もないからだ。『ヤメローー!』と泣き叫ぶランページの声などあっさりと無視して男は淡々とした表情で作業を進めていく。


 やがて切り取られて壁から外された鏡は容疑者護送用の檻の中に仕舞われて、突然現れた男は何処ともなく去っていくのだった。




謎の男が出現! 彼は一体誰なのか?・・・・・・ しばらくはその正体や役割は伏せておきます。お気付きの方も居るかもしれませんが、ネタバレになりますのでどうか他言無用にお願いいたします。


おかげさまでちょっとずつブックマークが増えてまいりました! もっと多くの方々に見ていただきたいので、目標はまずローファンタジーランクの下の方に掲載されることです。


どうか皆様の応援の評価とブックマークをどしどしお寄せください。感想などもあれば作者が大喜びするのは間違いなしです。読者の皆様! お待ちしています。


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