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4 真打登場!

魔法少女たちの危機に剣を手にして敢然と立ち向かう岬、果たして戦いの行方は・・・・・・

 メイド服に身を包み右手には大剣を持つ三咲はそのまま魔法少女と使い魔の大群の間に自らその体を割り込ませて、体を大きく右に開きながら手にする剣を両手で真横に引いて構える。その構えだけでも傍らで見ている者には並みの人間には不可能な威圧感を周囲に撒き散らしている。岬が使い魔に向かう様子をを見て、その極めて危険な行動を制止しようとした愛美ですらも、その威圧感に飲まれて声も上げられなかった。



「空斬刃!」 



 気合一閃、三咲が剛力に任せて真横に振り切った大剣は、普通の人間にはあまりに早過ぎて見えない軌道を描きながら衝撃波を伴って空気を切り裂いていく。剣から発した空斬刃は、進路上にある亜空間に浮かぶ幻影のようなビルや家屋を切り刻んで薙ぎ倒しながら、魔法少女に向かおうとしていた使い魔に刹那の間に迫る。そして使い魔たちが声を上げる暇もなく、動物を乱雑に組み合わせたような体を空斬刃が真っ二つに切り捨てながら、後から襲い掛かる衝撃波がそのパーツをバラバラに引き裂いていくのだった。


 しかも衝撃波を伴った視認不可能な空気の刃はそれだけには留まらずに恵子が居る方向に集まっていた使い魔たちにも背後から襲い掛かっていく。1000以上の群れを成していた使い魔は岬の大剣のたった一振りで例外なく切り伏せられて、その姿は霧の中に溶け込むように消え去っていく。


 使い魔たちを全て切り捨てた空斬刃は使い魔を倒しても尚その勢いは衰えずに、今度は使い魔たちの群れに突進しようとしていた恵子に迫っていく。高音を鳴り響かせて自らに迫ってくる衝撃波の嵐に恵子は一瞬驚愕の表情を向けたが、すぐに戦う者の顔を取り戻して空気の刃に向かって左右の拳を連続で打ち放つ。



”ドドドドドドドドドガガガガガガガガガガガガ!”


 三咲の剣から発した空気の刃と恵子の拳から発した空気の弾丸が宙で衝突して、激しい爆発音を生じながら互いを打ち消しあっていく。ようやく数十回連続した爆発音が収まると、その場は音1つない静謐な空間の姿をようやく取り戻した。



「タレちゃん! 今のは何よ?! あんなのをまともに食らったら、いくら私でも危ないじゃないの!」


「恵子ちゃんすみませんでした。咄嗟のことだったので力の加減が上手くいきませんでした」


 恵子の大音声が空間に響く。彼女が大声を上げると大概の人は怒っているように受け取るのだが、それは地声が大きいのと言葉遣いが少々乱暴な点が影響しているのであって、当人としてはそれ程悪気はない。たった今もあわや同士討ちの危機だったにも拘らず、これでも三咲に対して特に怒ったような口振りではなかった。


 対して三咲の方もこの空間内での恵子の暴れっぷりから勘案して、多少の余波が彼女の所まで届いたとしても如何にでも対処してくれるだろうというある種の信頼感を持って、使い魔が一振りで全滅する途方もない威力の空斬刃を撃ち出したのだった。2人はこの戦いが始まってから瞬時に互いの力量を把握していたようだ。ある特殊な領域に達した者だけが分かり合える不可思議な感覚が共鳴しあったのであろう。



「まあいいわ。いい感じに暴れたし、この場所は嫌な予感がするから外に出ましょう」


「それが良さそうですね」


 こうして恵子は魔法少女たちや三咲が立っている場に歩み寄ろうとする。その時・・・・・・



「何この気配は?」


 恵子と三咲の活躍に茫然自失だった愛美の表情が一瞬にして曇った。ようやく危機を脱したかの思えたのが、再び新たな危険が訪れようとする不安に身を固くしている。彼女だけではなくて、他の魔法少女も同様の様子を見せているのだった。



 そしてその愛美の不安は的中する。彼女たちから見てこの亜空間の入り口の方向に黒い靄が凝縮したかと思うと、再びそこには1体の妖魔が現れた。その姿は人の体の上に牛の頭を持ち、背中からは黒い翼が生えている、さながら悪魔が具現化したような嫌悪すべき外見をしているのだった。



「不味い! 入り口の方にはまだハルハルが居るんだった!」


「すぐに助けに行きましょう!」


 恵子と三咲が入り口に向かって駆け出そうとする。だが2人は進行方向から響く声に足を止めるのだった。



「フフフフフ、ようやく私の見せ場がやって来ましたね。ここはこの私に任せてください。目覚めるがいい、我が身に隠された真の力よ! 大いなる神に祝福された偉大なる姿をここに顕現させよ! バトルスーツ展開!」


 やけに厨2っぽいセリフが春名の口から飛び出したかと思ったら、彼女の体が光に包まれる。その光はあたかも天から降された聖なる光を思わせるエフェクトを伴っている。



「まさか、もう一人居たなんて!」


「この光はもしかしたら天使でも降臨するのか!」


「なんだか凄い登場の仕方なんですが、やはりトリを飾るのが一番の大物ということでいいのでしょうか?」


「きっと純白のドレスか何かを身にまとって颯爽と登場するんだろうな」


 魔法少女たちも自分たちが体に負っている傷の痛みなど忘れたかのように、呆気に取られた表情で神々しく輝く光を見つめている。そして、ついにその煌く光から何者かが姿を現した。



「あれ? 予想外になんだかモコモコしたシルエットをしているな」


「純白という部分は正解のような気がしますけど、あの姿は如何なのでしょうか?」





 魔法少女たちが抱く疑問は至極もっともであろう。せっかくの神々しい演出を何もかも台無しにするかのように、そこに立っているのはイヌの着ぐるみに身を包んだ榛名だった。恵子と三咲はズコーーっという表情で2人揃って華麗にコケている。その見事にシンクロした動きはまるで榛名の登場を予期して打ち合わせでもしたかの如き見事な体捌きだった。



「おや、せっかく私がバトルスーツ姿で登場したのに、皆さんどうも微妙な表情をしていますね。向こう側では恵子ちゃんとタレちゃんが引っ繰り返っていますけど、一体何があったのでしょうか?」


 空気を読まないことには従来から定評のある榛名にはこの場のムードがどうなっているのかが丸っきりわかっていなかった。だが榛名のすぐ傍に姿を現して妖魔はまずは手近な標的として彼女に右手に持つ剣を振り下ろす。



「ハルハル、危ない!」


「榛名ちゃん、逃げて!」


 コケたまま立ち直れない姿で恵子と三咲が危険を知らせる声を上げているが、榛名は一向に構わず着ぐるみ姿で登場のポーズなどを取っている最中だ。当人は新たな妖魔が現れたことなどすっかり忘れ去っているのだった。どうやら榛名は頭の作りがお気楽この上ない出来であるらしい。知ってたけど・・・・・・


 そして妖魔の剣が榛名の頭上に迫る。魔法少女たちは着ぐるみ姿のまま彼女が妖魔の手によって一刀両断される未来を思い浮かべたのは言うまでもなかろう。



”ポフッ!”


 だが妖魔が振り下ろした剣は着ぐるみを着込んだ榛名の頭部に当たって間の抜けた音を立てるだけで、一向にダメージを与える様子はなかった。妖魔は如何にも弱そうな着ぐるみに自らの剣が効果を示さないのが納得いかない様子で繰り返し何度も剣を振り下ろす。だがその剣は榛名に当たって何れもポフッという音を立てるだけであった。



「もう、なんだかうるさいですね。折角私が登場のポーズを皆さんに披露しているんですから、あっちに行ってください!」


 榛名は妖魔の姿も見ないで邪魔なハエを追い払うように軽く右手を振るった。その右手が剣を盛んに振るう敵の脇腹に当たった瞬間、まるで背中にロケットでも括り付けられたような勢いで妖魔の体が宙を飛んで50メートル先のビルに頭から突っ込んでいく。そのままビルを突き破って更に隣の建物の外壁に足だけ残してめり込んで、ようやく妖魔の体の残骸と言うべき物体は停止した。妖魔が突き抜けたビルは巨大な音を立ててガラガラと倒壊していく。



「なんだか信じられないものを見てしまった」


「軽く手で追い払ったら、妖魔が吹っ飛んでいった」


「あれはヤバいんじゃないの?」


「私たちとは色々な意味で桁が違う」


「もうなんだか魔法少女をやっているのが馬鹿らしくなってきた」


 その光景を見てしまった魔法少女たちは変な汗をかきながら、言いようのない恐怖に歯の根をガチガチと鳴らすのだった。


 


次回、恵子に続いて大暴れをした三咲と榛名、2人の正体が明らかに・・・・・・ 続きは今日中に出来上がり次第投稿します。ストックが全然ない自転車操業なので、時間はまだ未定です。なるべく夕方までにはお届けできるように頑張ります!


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