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22 お友達から始めましょう!

久しぶりの投稿になります。重要人物が登場します。

 翌日の放課後……



 恵子や榛名は足早に料理研究会に向かい、他の魔法少女たちもその後に続いた。クラスの生徒の殆どが部活動に向かったり、帰宅をして人気の少なくなった教室には、男女二人の生徒が残っている。


 この二人は、男子生徒がつるぎ たくみで、女子生徒のほうは服部はっとり 紀枝のりえという。二人は本日クラスの日直で、机を並べて日誌を記入している最中であった。本来ならば、紀枝とは違う女子生徒が当番であったが、欠席のため順番が繰り上がって、初めてこの組み合わせとなっていた。


 実は誰にも言ってはいないが、紀枝は密かに巧に好意を寄せている。普段中々話す切っ掛けを掴めない彼女にとって、今日という日はまたとない絶好の機会であった。



「これで日誌の記入は大丈夫ですね。剣君、何か記入することはありますか?」


「いや、特にない」


 せっかく訪れた機会だというのに、事務的な話しかできない紀枝は、心の中に焦りを募らせていく。



(どうしよう…… 日誌を職員室に持っていったら、こうして剣君二人っきりになるチャンスが終わってしまう。な、なにか自然に誘えるいいアイデアはないかな?)


 日誌は最後に二人の名前をサインすれば、記入はおしまいだ。紀枝が手にするペンが動く速度が、無意識にゆっくりとなる。



「あ、あの…… 剣君、よかったら一緒に駅まで帰りませんか?」


 異性に積極的に出られないタイプの紀枝としては、精一杯頑張ったつもりだ。だが……



「今日は用事がある」


 巧の素っ気無い返事に紀枝の顔が俯き掛けた。



「だから、途中までなら一緒に帰っていいぞ」


 てっきり断られたと思った紀枝の耳に、信じられない巧からの言葉が飛び込んできた。途中までなら一緒に帰ってもいい…… その言葉を聞いて、紀枝は内心飛び上がらんばかりに喜んでいるのだった。



「それじゃあ、私が職員室に日誌を提出してきますから、剣君は校舎の入り口で待っていてください」


「いや、どうせだったら、二人で日誌を出してこよう」


 またまた紀枝にとっては、喜びを倍増するような巧の返事が返ってくる。浮かれ切ったような感情のまま彼女は帰り支度をして、職員室に立ち寄ってから、巧と一緒に校舎の外に出て行く。並んで歩きながら校門を抜けると、紀枝が話を切り出した。



「あ、あの…… 剣君は私なんかと一緒で迷惑ではないですか?」


「特に迷惑だと感じたことはない。それがどうかしたのか?」


「い、いえ…… その、私はあまり目立たないし、人見知りであまり友達もいないので」


「そうか、それで俺にどうしろというんだ?」


「えっ! どうしろと言われても、急にはわかりません」


「なにか答えが見つかるまで考えてみろ」


 歩きながら、思わぬ形で巧から突きつけられた課題に、紀枝は言葉を失って考え込む。



(私はなんとなく剣君に好意を寄せているけど、実際この気持ちをどうしようかなんて、考えたことがなかった)


 紀枝にとってはそれは漠然とした憧れなのか、それとも好意が転じて恋心を抱いているのか、自分でも判断が付かない。だが、巧に『どうしたいのかはっきりしろ』と迫られているような気持ちになってきてしまう自分を感じている。その追い込まれたかのような感情が、ついに紀枝を突き動かした。



「あの、もし剣君がよかったら、お友達になってほしいです」


「その気持ちを肯定しよう。いつでも気軽に話し掛けてくれ」


 断られたらどうしようかという不安でいっぱいだった紀枝の表情が、ぱっと明るくなる。無駄な装飾などなくて、用件を端的にしか語らない巧ではあるが、こうして自分を友達として受け入れてくれた事実に感謝をしている。


 だが人見知りであまり積極的に話ができない紀枝と、まるでどちらかのA級スナイパーのように、必要事項しか口にしない巧では、会話など盛り上がるはずはない。しばしの沈黙が流れて、ようやく思い切ったように紀枝から口を開く。



「剣君、よかったらメールを交換しませんか?」


「メール? ああ、確かこの惑星の技術だったな。電子メールという機能は知っている」


(この惑星? 一体何のことかしら? 剣君はどこか浮世離れした人だとは知っていたけど)


 紀枝の頭には???が浮かんでいるが、こうして親しくなったチャンスを何とか生かそうとして、自分のスマホを取り出す。 



「剣君もスマホを出してください」


「スマホ? ああ、端末のことだな。これでいいか?」


 巧が取り出した物体は、確かに外見はスマートフォンと同じような形をしている。だが、その材質やスイッチ類は見たことがなかったし、どこのメーカーが製造しているものかさえ、紀枝にとってはさっぱりだった。



「えーと、これが私のアドレスです」


「わかった、そのフォーマットならば、読み取り可能だ」


 巧が端末を操作すると、端末の画面には一瞬で紀枝のアドレスが表示される。赤外線通信を実行した様子もないのに、どのような方法で自分のアドレスを読み取ったのか、紀枝にはまるっきり合点がいかない。



「空メールを送るから、返信してくれ」


「はい」


 こうして二人の間では、メールのやり取りが可能となった。不思議な点はあったものの、紀枝としては関係が一歩前進したことを、大きな喜びを以って受け止めている。



「この先に用事があるから、今日はここで別れよう」


「えっ! ああ、いつの間にか駅はすぐ近くでしたね。それじゃあ剣君、また明日!」


「ああ、また明日な」


 紀枝は手を振りながら駅へと向かう。それを見送りながら、巧は1本奥の通りにある例の廃ビルへと向かって歩き出す。その入り口の前に立って端末を操作すると、画面には明らかにこの場所に特異点の反応があると示している。



「どうやらこの場に、何らかの理由でダンジョンが発生したな。これはドレインミラーどころの話ではなさそうだ」


 何を隠そう、魔法少女たちを操っていた例の鏡を捕縛したのは、巧に他ならなかった。彼は普通の高校生として過ごしているが、その正体は銀河を股にかけるロッテルタ星の賞金稼ぎである。銀河連邦政府が手出しし難い惑星に潜入して、そこに潜んで悪巧みを働く宇宙のお尋ね者を捕らえるのが、彼の生業だ。



「すでにダンジョンとしてかなりの規模に成長しているようだな。待てよ…… 内部に誰か入り込んでいるようだ。こうしてはいられないな、まずは誰が入り込んで、内部でどうしているのか確認する必要がある」


 巧は意を決して、廃ビルに入り込んでいく。そして端末の表示にしたがって地下を目指すと、その壁にはダンジョンの入り口がぽっかりと口を開いているのだった。


 

 

ついにこの二人が登場しまして、これでようやく主要メンバーが出揃いました! この続きは、年明け頃に投稿したいと思っています。

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