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21 訓練を終えて

恵子と三咲によってボロボロにされた魔法少女たちは・・・・・・

 2時間近い訓練が終了して、離れた場所で魔法少女たちを相手にしていた恵子と三咲が戻ってくる。その後ろからはボロ雑巾のようにされた5人がフラフラの状態で這うようにして美香の元に帰ってきた。その様子を見かねた美香がアイテムボックスから何かを取り出す。



「これは初級ポーション。安全性には問題はない。体力が回復するから飲むといい」


「私は全然疲れていないわよ!」


「誰が恵子のために準備したと言った! これは魔法少女たちが飲む物!」


 透明なガラス瓶に入った青みがかった液体を美香が各自に手渡していく。魔法少女たちはワラにも縋る思いでポーションを一気にあおる。



「不味いぃぃぃぃぃ! この味だけでも安全じゃないぃぃぃ!」


「これは青汁の方がマシ!」


「変な苦さが口の中に広がって消えないぃぃぃ! それになんだか臭いし!」


 揃いも揃ってその味を酷評している魔法少女たちは、大袈裟ではなく全パーツが中心に集合する勢いで顔を顰めている。ここまで粘り強く幾多の死線を超えてきた彼女たちにとってもこの味は我慢出来ない代物だった。だが彼女たちはさっきのボロボロな状態よりも少しだけ元気が出てきた事実に気が付いた。



「不味いけど本当に体力が回復しています!」


「異世界にはこんな便利なものがあるんだ! 味は本当に最低だけど」


 彼女たちの様子を見て美香は真っ黒な笑みを浮かべながら満足そうに頷いている。



「原料になっている薬草のためだから味は仕方がない。それよりも本当に効果があって一安心」


「美香、一安心ってどういう意味?」


「こんな時のために不慣れな錬金術で昨夜のうちに作ってみた。初めて作ったにしては上出来の効果」


「この子達はモルモットかい!」


 美香の表情は相変わらず真っ黒だ。毒にはならないとわかっていたが、どの程度の効果があるのかは確証はなかった。だがこうして実際に何も知らない魔法少女たちに飲ませてみて、ようやく効果が確認された。



「私が渡った世界ではこの味を何とか改善するのが錬金術師の腕と言われていた。だが私は錬金術は専門ではないからストレートな味付けになっている」


「聞きたくはないけど、げ、原料は何?」


「ドアリンの葉とダクドミの葉。臭いのはドアリンで苦いのはダクドミの影響」


「ドリアンとドクダミかい!」

  

 恵子のツッコミ通りに美香が渡った世界ではドアリン草は強烈な臭いで知られていた。同様にダクドミ草も誰もが顔を顰める苦さで有名だった。しかも味には手を加えないとくれば、これは罰ゲームに等しい仕打ちであろう。



「ところで美香、ハルハルが痩せる薬はないの?」


「存在しない。同時に恵子の頭が良くなる薬も何処にもない」


「恵子ちゃん! 私に痩せる薬なんか不要です! それよりも美香ちゃん、早く恵子ちゃんに頭が良くなる薬を作ってあげてください!」


「その場合榛名が一番バカになる」


「美香ちゃん、やっぱり作らなくていいです。恵子ちゃんには一番バカというポジションがお似合いですから」


「一番デブポジションが何か言っているわね!」


「誰がデブですかぁぁぁぁ! こう見えても私は着ぐるみのせいで太って見えるだけで、本体はとってもスタイルがいいんです!」


「榛名、見栄を張るにも限界がありそう」


 美香に止めを刺された榛名はそれ以上何も言えなくなっている。その姿を横目で見ている恵子はメシウマ顔をしている。この2人は互いの不幸が心からの喜びになっているのだろうか?



「それよりも魔法少女の訓練はどうだった?」


「美香、それは聞くだけ無駄よ」


「残念ながら現時点では相手がゴブリンでも歯が立ちません」


 体術の指導をした恵子と三咲が口を揃えて否定的な見解を述べている。それほど初期設定のままで戦うことを余儀なくされていた彼女たちの能力は低かった。



「使用している武器はどの程度の物か?」


「最低限の品ね。私のアイテムボックスにもっとマシな武器が山程入っているけど」


「「「あっ!」」」


 美香、恵子、三咲の3人が同時に何か気がついた様子だ。



「恵子とタレちゃんはアイテムボックスに眠っている武器を放出して欲しい。武器の性能だけでも戦いは変わる筈」


「私もすっかり忘れていたわ! こんな物で良かったら好きなだけ使ってよ!」


「手に馴染む武器が見つかるといいですね」


 恵子と三咲はアイテムボックスを開放して中から次々に武器を取り出す。



「恵子とタレちゃん、まだ出し終わらないのか?」


「もうしばらくは時間が掛かりそうね」


「なにぶん大量にありますので」


 こうして2人は30分かけてアイテムボックスに眠っていた武器を総ざらいする。その量は優に一山出来る程であった。



「良くぞこれだけ大量の武器を集めたもの・・・・・・」


「ははは、暇な時にダンジョンに入り捲くっていたらこんなになっちゃった!」


「私の世界では迷宮と呼ばれていましたが、武器がたくさん集まった理由は恵子ちゃんと一緒ですね。ああ、これなんかお勧めですよ! 迷宮にいた人身馬頭の怪物が振るっていたハルバートです」


 全長3メートルの大型の斧に槍の穂先や相手を引っ掛ける鉤爪など様々な武器を取り付けた重量が100キロを越えるハルバートを三咲が軽々と振り回している。その様子に魔法少女たちは・・・・・・



(((((そんな物勧められても絶対無理!)))))


 全員が高速で首を左右に振っているのだった。だが好奇心が強いこの人物は瞳にキラキラの星を浮かべてうず高く積まれた武器の山に近付いて来る。



「私は武器なんか使ったことがないから面白そうですね。ちょっと試してみましょうか!」


「ハルハルも武器に興味があるの? でも気をつけてよ、切れ味の鋭い剣とかいっぱいあるからね!」


「恵子ちゃん、大丈夫ですよ! 剣なんかには触れないようにしますから」


 心配する恵子をよそに榛名が手にしたのは鉄製のメイスであった。用途としてはは鎧を叩き壊す金属の棒である。榛名が手にしたのは細長い八角柱の長さ1.3メートルくらいのメイスだった。異世界の鉄パイプと表現するのが妥当かもしれない。



「こんな感じで振るんですかね? えい、えいっ!」


 スポッ!


 榛名が振り回していたメイスが手からすっぽ抜けて飛んでいく。その速度は音速をはるかに突破して、熱の壁すらも突き抜けて進行方向の空気を圧縮して夥しい熱にエネルギー変換を行いながら突き進む。そして先端が高熱でドロドロに解けながら、そのメイスは葵の電磁砲の的となった大岩に突き刺さった。



 ドゴーン!


 大岩はメイスが刺さった圧力と高温に耐えかねて大爆発を引き起こす。灼熱に熱せられた溶岩弾のような礫が四方に飛び散る。その一部は美香たちがいる方向にも高速で向ってくる。



「キャァァァァァァ!」


 誰かが悲鳴を上げる。



「夢想連撃拳!」


「神斬波!」


 だがこちらに向ってきた大量の礫は彼女たちに届かなかった。恵子の拳から発した衝撃波と三咲の豪剣が生み出した波動が全ての岩の欠片を消し飛ばしていく。



「ふう、今のは危なかった」


 美香も念のために障壁の展開を準備したが、恵子と三咲の反応が一歩早かったため彼女たちの邪魔にならぬように自重していた。



「このバカハルハル! デブで不器用なんだから今後武器に触れるのは禁止!」


「恵子ちゃんにバカと言われました! もう明日から生きていけません!」


 この一歩間違うと全滅もありえた危機に対して榛名は大した反省の色を見せていない。



「榛名ちゃん、二度と武器を手にしないでください! 約束が守れなかったらおやつはナシですよ!」


「タレちゃん、ごめんなさい。もう二度と武器には触りません!」


 今度はコロッと態度を変えて素直に謝っている。この違いはないだろうか? どうにも釈然としない遣り場のない気持ちを抱える恵子であった。




次回こそ、次回こそはダンジョンに入ります! この続きはそう遠くない未来に・・・・・・ 来週には何とか投稿する予定です。どうぞ長い目で見てください。

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