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能力を使って働いたらブラック企業になっちゃいました。  作者: 著者:窓際ななみ 労働法監修・解説:曽利和彦(特定社会保険労務士)
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能力を使って働いたらブラック企業になっちゃいました。(7)

【労働法解説】


本作品のテーマである労働法を、専門家の特定社会保険労務士 曽利和彦さんに解説をお願いしました。


■特定社会保険労務士とは?

労働法や年金の専門家で、厚生労働省の国家資格です。

一般的には、略称の社労士と呼ばれています。


■特定社会保険労務士 曽利和彦

法律専門士業グループ 共永総合法律グループのパートナー社会保険労務士。

東京都千代田区に、曽利社会保険労務士事務所を開設しています。

日々、中小企業の労働環境を良くするためのコンサルティングを行っています。

マンガを用いた解説を得意としており、難しい法律を分かりやすく伝えるようにしています。


■メディア実績

「魔法でわかる労働法 ~間違いだらけの労働現場~」 ハーヴェスト出版 2011年9月

「知らなきゃ損する職場の法律 ~問題社員と言われないために~」バレーフィールド 2013年2月

「社長、本当にぼくが総務ですか? -マンガで身につく企業法務(労務・法務)入門」清文社 2015年3月(共著)

 2011年9月16日 読売新聞(朝刊)「法令学んで離職ストップ 若者セミナー・メルマガ・マンガ」にて、労働法をマンガで分かりやすく伝える社労士として掲載されました

【労働法解説編】

‐解説 特定社会保険労務士 曽利和彦‐


~労働法解説 その1 遅刻な問題児~


 コンビニ【ナイン・ナイン】では、遅刻する従業員が多いので、罰金を取ることになりました。これは労働法的に正しいのでしょうか?


 確かに遅刻をしてはいけません。

 コンビニのように24時間営業しているお店は、シフト勤務で店舗運営の計画を立てているのですから、勤務開始時間に遅れると、その間、お店の人員が減ってしまい、計画通りのオペレーションが行えなくなります。

 レジの人員が減りますし、店内で品出しが遅れてしまうかもしれません。


 遅刻という罪を犯したのだから、償わなければならない。この考え方自体、間違ってはいません。しかし、遅刻をした人は、本当に罪を犯したのでしょうか?


 答えはノーです。

 遅刻は、職場に迷惑をかけていますが、あくまで迷惑、罪ではありません。罰金を取ることで、遅刻を戒めることはできるかもしれません。でも、お店が徴収した罰金は、何を根拠に、得られた収入なのでしょうか?

 コンビニは、お客様に商品を売ることで、売上を得ることができます。従業員から罰金を徴収して、収入を得ること自体、おかしいのです。これは、会社が恐喝しているようなものです。


 仮に、お店と従業員との間で、罰金制度に合意があったとしても、そのような非常識な約束事は、法律の前では無効なのです。だから、あなたのアルバイト先で罰金制度があっても、支払う必要はないのです。


 でも、お店の立場で考えると、納得いかない部分もあるでしょう。何らかの不利益を与えたい、そう考えますよね。


 遅刻が多いことでの、従業員へ与える不利益は、人事評価という点で合法です。

 例えば、長期間、真面目に勤務していると、時給がアップすることがあります。

 アルバイト募集で「昇給有」なんて記載がありますよね。


 Aさんは遅刻が多かった。

 Bさんは遅刻をせず、勤務している。

 両者が1年間勤務した時に、昇給を検討し、Bさんだけ昇給した。

 これは違法ではありません。

 あくまで人事評価の採点対象として、勤怠を基準にしていたというだけの話だからです。


 このように、職場で罰金を取ることは、会社が違法行為をしているブラックな職場なのです。



*****



~労働法解説 その2 ノルマ~気にしてなんかいられないっ!!~


 コンビニ【ナイン・ナイン】では、売れ残った鰻弁当を、従業員に買い取りさせました。理由は、売上ノルマを達成できなかったから。これは労働法的に、正しいのでしょうか?


 この問題は2つのテーマがあります。


1:厳しいノルマは違法なのか?


 仕事をしていると、会社から様々なノルマ(達成目標)を課せられます。分かり易いのは営業職です。

 会社が定めた売上目標を達成するため、走り回っています。営業でなくても、事務職も決められた期間に、一定の業務量を遂行しないといけません。技術職も、会社から求められた研究成果を上げなくてはいけません。


 実現可能な範囲で与えるノルマは、ちゃんとした業務命令で従業員は従う義務があります。でも、実現不可能なありえないノルマは?

 これは、もはやパワハラです。会社が自分の優位な立場を利用して、従業員をいじめているのと変わらないのですから。


 そもそも、ノルマという単語は、第二次世界大戦後のシベリア抑留で、強制労働させられた人たちに課せられたものです。こんな言葉を会社で使う時点で、ブラック会社だと言っているようなものだと、私は考えます。



2:残り物を従業員に買い取らせるのは違法なのか?


 コンビニ【ナイン・ナイン】は、本部から押し付けられたノルマを達成しなければならない状況でした。達成できなければ、売れ残った鰻弁当を買い取ることになり、損失が発生します。

 このようなノルマをこなせなかった場合、従業員がその損害を被らなければならないのでしょか?

 答えはノーです。


 そもそも、鰻弁当のノルマを達成できなかった従業員に、責任はありません。売上目標を達成するという結果責任を負うのは、会社だけです。鰻弁当をお客様に宣伝するアプローチのやり方が、下手な人もいたでしょう。

 でも、会社はそのやり方を指導して是正し、売れるように指導する義務があります。それもせずに、ただ売ってこい、というのは、あまりに無責任なのです。


 仮に、あなたのアルバイト先でノルマ未達を理由に、買い取りを迫られたとしても、それは違法ですから、応じる必要はありません。それって、ブラック会社なのですから。



*****



~労働法解説 その3 助っ人はJC、関係ねぇよ~


 コンビニ【ナイン・ナイン】にやってきた、忍の幼馴染の美花、彼女は中学生です。人手不足を理由は、美花に品出しを仕事をさせてしまいました。これは労働法的に、正しいのでしょうか?


 労働法では、義務教育期間中の子どもを働かせることを、原則禁止しています。

 義務教育期間中なので、中学校を卒業するまでは働けない、ということです。これはアルバイトであっても、法律で禁止されています。

 原則と言ったのは、一部例外があって、演劇の子役のような子どもでないとできない仕事は、特別に許可されています。


 今回のケースでは、数時間だけのお手伝い程度の仕事しかしていません。小学生の子どもがお使いに出かけて、報酬としてお駄賃をもらうのは、なんの不思議のない光景ですよね。


 この問題を労働法の視点で考えると、子どもがどのような立場にあるのかによって、判断が異なります。


 家が自営業をしている、例えば八百屋をしているとします。夕方になり、お客さんが増えてきて、店先は混雑し始めました。お父さんとお母さんだけでは、お客さんをさばけない状況なので、応援を頼むことにしました。


1:他人の子どもをお手伝いさせた

 お隣の中学生の娘にお願いし、お店で働いてもらったら?

 このケースは他人の関係ですから、当然に労働基準法が適用されます。

 つまり、労働基準法違反になります。

 コンビニ【ナイン・ナイン】のケースも、労働基準法違反です。


2:自分の子どもをお手伝いさせた

 中学生の自分の娘に店員として仕事をしてもらったら?

 このケースは、労働法で禁止することはありません。

 労働基準法では、「同居の親族のみを使用する事業」に法律を適用しないとしています。

 同居の親族とは家族のことで、法律、つまり国は家族の問題に介入しないということです。


 ポイントは「のみ」となっている点です。

 先ほどの八百屋さんが、従業員を一人でも雇っていると、話が変わってきます。家族以外の人が働いていると、そのお店は労働基準法が適用されます。

 つまり、その場合は中学生以下の子どもも従業員と同じとなりますので、法律違反です。



*****



~労働法解説 その4 娘16、働き盛り~


 コンビニ【ナイン・ナイン】は、年末年始の人員がたりなくなってしまい、忍はいつも以上にシフトを入れてしまいます。結果、週の労働時間が40時間を超え、深夜も働くことになりました。

 これは労働法的に、正しいのでしょうか?


 まず、週の労働時間は法律で40時間までと決められています。週40時間は長いか、短いかは個人の感覚によりますが、体への負荷は大きいので、結構きついものです。

 過労死って言葉がありますが、働きすぎると、身体を壊してしまう恐れがあるので、労働時間を制限しているのです。


 会社勤務している人は、残業していて、もっと働いている、と言う人もいるでしょう。週40時間を超えて働くことを、いわゆる「残業」といいます。(法律では、法定時間外労働といいます)

 残業は、一定の手続きを行うことで、週40時間を超えて働かせることができます。でも、18歳未満の子どもは、週40時間以上働くことを禁止しています。つまり、一切の残業はできない、ということです。

 理由は簡単です。

 子どもはまだカラダが成長しきっていないので、身体に負荷がかかる残業を禁止しているのです。

 未成年が飲酒できないのと似ていますね。


 つづいて、高校生が深夜に働くことは、どうでしょうか?

 労働法で深夜とは、夜10時から翌朝5時までの7時間のことです。

 この時間は、人間の本能で体を休める時間で、ほとんどの人は睡眠時間です。本来、身体を休めなければならない時間帯に働くことで、身体に大きな負荷がかかります。結果、病気に成ったり、最悪、死んでしまうこともあります。

 だから、労働法では18歳未満の子どもには深夜労働を禁止しています。

 これも、子どもがタバコを吸えないことと似ていますね。


 ちなみに、深夜時間帯の時給が高めに設定させているのは、労働法で割増賃金を上乗せするように定めているからです。

 金額は時給の25%、例えば時給1000円なら250円を上乗せされるわけです。お金が多くもらえてお得な感じもありますが、この上乗せは、健康被害への補償ですから、決してお得なわけではありません。


 コンビニ【ナイン・ナイン】のケースでは、忍が希望して長時間労働、深夜労働しています。

 このようなケースでも、会社に非があります。

 会社には、従業員が安全に健康で働ける環境を用意する義務があるからです。だから、従業員が無茶な働き方をしたいと希望しても、それを許すことは違法なのです。


 このように、18歳未満の子どもに、週40時間以上の長時間労働、深夜勤務をさせることは違法、ブラック会社なのです。身体を壊してしまっては、終わりですからね。

 そんな職場はさっさと辞めてしまうことをオススメします。



*****



<了>


文責 特定社会保険労務士 曽利和彦

※本解説は、平成30年4月1日時点で施行されている法律・法令等に基づいています。

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