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能力を使って働いたらブラック企業になっちゃいました。  作者: 著者:窓際ななみ 労働法監修・解説:曽利和彦(特定社会保険労務士)
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能力を使って働いたらブラック企業になっちゃいました。(2)

 数日が過ぎ、やっとニューさいたまでの暮らしに慣れてきたあたしは、学校の創立記念日の休日を利用して、アルバイトを探すべく街に出ることにした。


 アルバイトの目的は金銭的なものもあるが、第一は社会貢献。働く格好いい高校生になることだ。あたしが一生懸命働くことで、みんなが幸せになる。ああ、それは、なんという素晴らしいことではないでしょうか!


 街の様子を見渡すと、平日の正午を過ぎた辺りということもあり、サラリーマンやOLでかなり賑わっていた。ニューさいたまの駅周辺には、何棟もの高層ビルが立ち並んでいる。そこには大手企業も数多く入っており、駅周辺の社会人の数がかなり多い。その為、お昼時は特に人の多さが目立っているようだった。


 あたしは、そんなお店の様子を、一軒一軒チェックしていく。

 

「うーん、飲食店のアルバイトいいんだけど、なんか……お腹がすきそうなのよね……」


 そんなことを考えながらお店のリサーチ続けていると、どこかで見覚えのある煉瓦模様の建物が目に入ってくる。

 それは、全国チェーンのコンビニ「ナイン・ナイン」の店舗だった。


 実家の山奥にはコンビニすら存在はしなかったのだが、流石に県庁所在地の前橋市の周辺では、何店舗か見つけることができたコンビニの大手チェーンだ。あたしはコンビニの入り口の前に近づくと、窓ガラスを隔ててお店の様子を確認する。 

 

 お店の中には、十数人のお客がレジ待ちをしており、かなり混雑していた。……もっとも、満員電車に比べれば可愛いものではあるけれども。お昼時ということもあり、会計待ちのお客が持っている買い物かごの中身は、お弁当やサンドイッチが多く見られた。

 レジの様子を確認すると、そこには、マスクをした少し怖い感じのツンツン頭の男性と、大学生くらいだろうか……? 身長の高いイケメン風の男性アルバイトが、次々と迫り来るお客に対して颯爽とレジ対応していたのだった。


「うわぁ、格好いい! ああ、これよこれ!」


 二人の店員の、丁寧且つ俊敏な動きに、あたしは目を輝かせる。田舎の小さな個人経営の商店では、お目にかかれない光景だった。あたしも、あんな風に華麗に働きたい! そんな思いで一杯になってしまう。

 店内の様子を確認していると、ふと、ドアに張り紙が貼られていることに気がつく。張り紙には、最近どこでも見かける可愛い絵風のイラストと共に、こう書かれていた。


【急募! アルバイト募集! 長期間働ける方、元気な方! やってみませんか!?】

 

 あたしの中に、何かが稲妻のように響いてくる。


「こ、これだわ……!」


 ドアに手をあてしがみつくと、内容を一字一句見逃さないように目で追っていった。


「アルバイト時間は、早朝から……深夜まで……時間は要相談……、時給は……1100円から……。高校生歓迎……」


 募集要項では、高校生も可能だった。


「コンビニのバイトだったら、24時間営業しているから目一杯働けそうだし、いろいろな作業ができそうね」


 善は急げ! あたしはお昼が一段落した辺りで、張り紙に記載されていた電話番号に電話する。

 

「はい、ナイン・ナインニューさいたま駅前店です」


 男の人が丁寧な口調で、電話に出る。アルバイトの応募について確認すると、電話口の男の人は丁寧に対応してくれた。結果としては、後日面接したいので、週末に一度来てくださいとのことだった。

 スマートフォンの電話を切ると、さっそく面接に必要な物を揃えることにした。


「さっそく履歴書と写真を準備しないと……。保護者の同意書は、おばあちゃんにお願いしよう」


 あたしは、早速面接の準備を始める事にしたのだった。



*****


 

 そして面接の日――。


 あたしは、指定された時間のちょうど十分前にコンビニの店先に到着する。早くもなく、遅くもない、ちょうど良い時間だと思う。

 店内を見るとお客が数人いるだけで、平日の正午の混雑に比べると平和な様子だった。レジには、この前見た時にいた、身長の高いイケメン風の男性アルバイトがレジで接客をしていた。


 頃合いを見てあたしは店内に入ると、レジに向かう。


「いらっしゃいませ――」


 レジのアルバイトが着ているユニフォームには、名札がついていた。

 身長の高いイケメン風の男性アルバイトは【三雲みくも 定吉さだきち】という名前らしい。

 見た目よりも、少し古風な名前だなぁと感じた。


「あ、あの、すいません、あたし、三日村 忍といいますが、今日アルバイトの面接に来たのですが、店長さんはいらっしゃいますでしょうか?」


「ああ、アルバイト応募の方ですか。店長から聞いています。あちらの奥の扉からバックヤードにいけますので、どうぞ」


「は、はい、ありがとうございます」


「いえ、面接頑張って下さいね」


 あたしは、三雲さんに軽くお辞儀をすると、指示された奥の扉の前に歩いていき扉を軽くノックする。……すると中から、少し低い男の人の声が聞こえた。


「ん? どうぞ――」


「失礼します――」


 あたしは、ゆっくりと扉を開け入室する。そしてざっと辺りを見渡した。予想していたよりもバックヤード内は狭く、4人ほど中に入ったら息苦しさを感じてしまうかも……というような感じだった。

 奥のパソコンを操作していた人が手を止めると、こちらに向かって歩いてくる。先日見た、マスクをしたツンツン頭の人だった。どうやら、この人がコンビニの店長のようだ。


「時間よりちょっと早くきてくれたんだね、感心感心」


 見た目とは違い、優しいそうな声の人。聞き覚えのあるその声は、この前電話対応してくれた人の声だった。


「はい、もちろんです。社会人として当然です」


「うんうん。いい心構えで嬉しいよ。えっと、今日あと一人面接にくることになっているんだ。ちょっと座って待っててくれるかな? あ、コーヒー飲む?」


「あ、はい。それでは頂きます」


 あたしは、指示された部屋の中央のテーブルの側にあったパイプ椅子に座ると、室内を再度見渡した。室内の四分の一位は、宅配便や商品在庫だろうか? そんな感じのダンボール箱で埋め尽くされていて、バックヤードをより一層狭く感じさせていた。奥には、まだスペースがあるようだった。

 ちょっと覗いてみるとドアがあり、ドアプレートにはロッカールームと書かれていた。お手洗いなどは、こちらには無いようだった。


「……お手洗いは、お店にあるものを使うのかな……?」


 そんな事を考えながら、店長にいれてもらった珈琲を飲んでいると、突然、バックヤードの扉が勢い良く音を立てて開かれた。


「す、すいません! 遅れちゃいました! 電車がもろ混みで……あれ、忍?」


「……舞さん!?」

 

「なんであなたがここにいるの?」


「いえ、あたしはアルバイトの面接で……」


「え、忍も? 奇遇だね!」


 そんな会話をしていると、店長が会話に割り込んでくる。


「あー、なんだ君たち知り合いだったの?」


 店長はニコニコしながら、舞さんに近づいていく……が、何か威圧感のようなものを感じていた。舞さんも、不穏な気配を感じたのか、少し怯えた様子だった。


「でも、連絡なしに遅刻は駄目だよね。そういうときはちゃんとにお店に連絡しないと。俺も仕事があるけど、そういった時間を割いているんだからさ……」


 舞さんは、店長の気迫にやられてしまったのか、涙目で子犬の様に震えて萎縮してしまっていた。


「す、すいません、時間に間に合わないと思って急いでいてテンパちゃっていて……」


 舞さんは申し訳なさそうに、頭を下げる。ちゃんと反省していることが伝わったのか、店長の威圧感はスッっと消えていった。


「うん、まぁ、反省しているようだし、次からはちゃんとに連絡するようにしてね」


「は、はい、すいません……」


「それじゃあ、面接を始めようか?」


 そういうと店長は、部屋の中央にある長机の奥へ座る。

 

「じゃあ、そこ座って」


 あたしと舞さんは、店長と長机を隔てて隣同士で座る。


「早速だけど、いまちょっと人手不足でね。できればアルバイトをお願いしたいんだけど、二人共アルバイトは初めて?」


「はい、あたしは初めてです」


「わ、私も初めてです……」


「そっか、まぁいろいろと作業内容は多いけど、どれもそんなに難しくないから、少しずつ覚えていってほしいな」


 希望動機やそういった事をいろいろ聞かれると思って準備していたのだけれど、そんなことはなく、雑談レベルの話が終わると、即採用ということになってしまった。

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