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オーディエンス異世界生活  作者: すみやん
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プロローグ

俺の名前は山岡ジュン。

私立さくらんぼ学園高等部に通う、普通の高校生だ。

至って平均的な体型だが、顔立ちだけは昔から女に間違われる。

どうも中性的な顔付きらしく、可愛いのであって俗に言うイケメンでは無いらしい。

この顔のおかげか男女問わず友人も沢山いる方だと思う。

これが良い!と決めるのが苦手であり、昔から主体性は無いとみんなから言われた。




「ジュンちゃん、お前異世界に興味あるか?」

良く晴れた日の給食時間、友人の言葉が俺の耳に飛び込んだ。

真顔でその問を投げかける人物の顔を見る。

「今日の給食、なにか悪いものでも入ってた?」

「ジュンちゃんも同じもの食べてるから問題は無いはず」



そういってにこやかに笑うのは桜桃アツシ。通称あっくん。

小学生からの付き合いであり、一番仲の良い友人だ。

この学園の理事長の孫でイケメンと呼ばれる顔をしている。

俺があっくんと一緒にいると一部が色めき立つのが最近の悩みでもある。





「じゃあ藪から棒に異世界って何いってんの?また何かの影響?」

「まあ聞けよ。昨日爺さんの書斎で本を漁っていたらだな…

なんと異世界に旅立つ方法を見つけたんだ」

俺も頭が良い方ではないが、あっくんも頭が良いわけではない。

ただ、この時だけは本当におかしくなったのではないかと本気で考えた。

だがノリの良さなら地域10本指に入るとも謳われた俺はいつも通りバカな話に乗ることにする。

「詳しく聞こうじゃないの」

「そうこなくっちゃ」

ここから昼ごはんを食べ終わるまで、あっくんの話は続いた。





あっくんの話を要約すると3点である。

1つ、この学園の真夜中3時に職員室にある教頭の机の中に入ると異世界に飛ぶ。

2つ、それを行うときは3人でなければならない。

3つ、かつ3人はこの学園の生徒であること。



昼休みも始まり、ざわめき出す教室。

「1つ目はまあ俺がどうにか鍵を持ってくるから大丈夫」

「ならもう1人、この学園から誰か付き合ってくれる人を探すだけだね」

「それはまあ…みーこで良いだろ」



あっくんの言う《みーこ》は俺の双子の妹だ。

色んな友人が口を揃えて言うのは、俺をもっと可愛くした感じとのこと。



「うーん…来るかなあいつ…」

「お兄ちゃん権限発動しろよ……あ、ほら丁度あそこにいるじゃん」

「まあ言うだけ言ってみますわ」

そういってあっくんと一緒にみーこの側まで歩いて行く。



「はぁ?」

あっくんが事情を説明すると眉をひそめ短くそういった。

わかるぞ妹よ。俺も話を聞いて頭おかしくなったんだと思ったもん。

「しかも夜中3時って…嫌だよ私」

「ほらお兄ちゃん、バトンタッチ!」

「えー…あー来てくれたらあっくんが何でも買ってく―」

「乗った!」

食い気味に了承するみーこ。ウインクまでしてみせた。

「ちょっと!待て待て!……分かった。…2千円までな」

「あっくん話わかるじゃん!ジュンちゃんもご馳走様!」

「よし、お兄ちゃんは可愛い妹様にゲンコツのご馳走をやろう」

3人でわーわーと騒いでいると午後の授業を告げる鐘がなったのでそれぞれの教室へ戻る。

「ジュンちゃん、みーこ!今夜決行だからなー!」

1人クラスの違うみーこは手をあげてそれに答えた。





深夜2時48分。

俺とみーこは制服で、あっくんだけはスーツで職員室前にいた。

「なんでスーツなの?」

「転移先が砂漠だったりしたらどうするんだ?」

みーこの問にあっくんはさも当然の用に答える。

「砂漠に一番適したのはスーツだって漫画で読んだことある」

「なら飲み物持っていったほうが良くない?」

みーこの鋭いツッコミにぐうの音もでないあっくんは力なく頭を垂れた。

「そろそろ中に入ったほうが良いんじゃないか?」

俺の言葉を聞くと活気が戻ったようにガチャガチャと鍵を開けた。




「「「失礼しまーす」」」

3人とも癖なのか入るときにそう言ってしまい、顔を見合わせて笑った。

色んな机がある中、一番奥の他の机より小奇麗に整理された机の前に立つ。

時刻は――2時58分。

「というか入るってどうやって入るのコレ」

「有名なロボットアニメの感じじゃない?」

二人の会話をよそに

明日の1限目は数学だったかな?

あー明日丁度当たる番だ。

この時はそんなことを考えてたんだっけ。




「よし時間だ」

あっくんは勢い良く教頭の机を開いた。


「やっぱりなにも起きないなあ」

その時俺はそよ風が吹いたように感じたんだ。


「ふわぁあ…私もう良いでしょ?眠いからそろそろ寝たい」

次に感じたのは静電気だったかな?


「ジュンちゃん、みーこ!もうちょっとだけ時間ちょうだい!」

ゴゴゴゴゴと音が聞こえた気がする。



次の瞬間、机から暴風がうねりをあげ3人を包み込んだ。













「う・・・ここは・・・?」

俺が気付いたのは、真っ白な空間だった。

俺のちょうど前にスチール製であろう机と椅子があるだけだった。

「なんだここ!?・・・みーこ!あっくん!2人は!?」

後ろを振り返り2人を探すが見つからない。

そして正面に視線を戻すと椅子に知らないおじさんが腰掛けていた。




50台半ばくらいであろうか。

やや疲れたように見えるおじさんは俺を見据えている。

「あの!ここは一体どこなんですか!?あの2人は!?」

「君は・・・いや、君たちは異世界への扉を開いたんだよ」

俺の悲鳴にも似た問いにゆっくりと口を開いた。

「すみません・・・貴方が何を言っているのか俺にはわかりません」

「わからなくても良い。すぐに実感するさ」

おじさんはどこから取り出したかわからないペンを

クルクルと回し、決めポーズのように握りしめた。

「いや言っ―――」

「さて少年、君は異世界へ飛ぶにつれて2つの能力を得ることが出来る。

1つは既に決まっているんだが、オーディエンスという。

―――ほう。いつも答えを決めかね、周りに流されるように生きてきた君にピッタリな能力じゃないかね?」

そう言い放つおじさんの手には一枚の紙が握られていた。

「なんでそ――」

「いいか少年。今聞くことはそんなことで良いのか?

よく考え、かつスピーディーに言うんだ。

【なんでそんなことを?】と聞きたかったのか?

それを聞いてどうなる?その後私がまだここに居るとも限らないぞ?」


おじさんの言うことは最もだが、あまりにも酷ではないか。

何を聞こうか悩む俺をよそに、おじさんはただじっと見ている。



「2つ目の能力の説明に入る。これは選択式だ。よく考えて選ぶと良い。」

おじさんの事情にデカデカとしたボードが何の力で浮いているのかわからないが出てきた。

そこには可愛らしいポップ体でこう書かれていた。




1.傷を癒やすにはモッテコイ!

 1日10回どんな傷も癒せるぞ!治癒能力ヒーリング


2.男はやっぱり肉体強化!

 1日2回30分パワーアップ!筋力強化テンションアップ


3.何も言うな、チャーハンこそ世界の選択!

 どんな食材でもなかなかな味のチャーハンに仕上がるぞ!焼飯製造クリエイトチャーハン


4.遊べ遊べ!遊びに限っちゃ天才的だ!

 1日1回1時間ゲームと名のつくものに何でも強くなる!遊戯王プレイボーイ




「この中から選ぶのじゃ」

「え?この中からですか?そしてなんかキャラ変わってません?」

「ふぉふぉふぉ。なぁーんにも変わっとらんよ」

「嘘だ・・・絶対変わってる・・・」

おじさんとコントみたいなやり取りをすることになるとは・・・。

「後からこっちが良いはダメじゃから、じっくり考えて選ぶんじゃぞ。」



さて提示された4つの能力だが、どれが良いだろうか・・・。

・・・ダメだ。どれも一長一短で難しい。

俺がかなりの時間悩んでいるとおじさんは業を煮やしたのか急かしてきた。

「もうあれだ。もう一個の能力オーディエンスで決めろ。長い。」

ビビビとペン先から出た光線に撃たれた俺は何かの力に目覚めたのが実感できた。


「オーディエンス習得、オメデトウゴザイマス」

脳内に機械的な音声が流れた。

「コノ能力ハ、アナタガ分岐デ悩ンダ時二発動出来マス」

なるほど、世界が思ったよりよい選択を俺に教えてくれるわけか。

良い能力じゃないか。

「発動スル時ハ、選択肢ヲ思イ浮カベテ、【オーディエンス】ト言ッテクダサイ」

「コレデ説明ヲ終ワリマス」



「さあ少年よ。使ってみてくれ。オーディエンス――世界の選択を」

おじさんに頷き、俺はその言葉を口にする。

「世界よ俺を導いてくれ――――オーディエンス!」



つづく

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