力と代償 3話
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太陽が完全に沈み、赤と青の2つの月が頭上に上った頃に家を出る。
「よし、準備完了。行くか」
家の玄関の鍵を閉めてから壁を蹴り、屋根へと登る。夜の街の闇に紛れながら屋根から屋根へと飛び移りアイラとの待ち合わせ場所まで移動する。
「到着っと。さてさて、アイラはいるのかな?」
どうやら、アイラは先に着いていたようでキョロキョロと俺のことを探している。
「先に着いてたのか、スマン待たせたな」
ワザとアイラの背後に回ってから耳元で囁く。
「ヒャッ!ビッビックリするからヤメて、心臓に悪いから!」
「アイラ、口調が元に戻っているぞ。」
「レイのせいだからナ!」
どうやら、驚いてくれたようだ。よかったよかった。
「それで、お城までの侵入経路は確保できたか?」
「できたんダナ。何代も前の王族が作った相当古い使われてない隠し通路を見つけたんダナ。」
「そうか、そいつは期待できそうだな。ありがとう、助かった」
「当たり前なんダナ。ちゃんと帰って来るんダナ、レイ」
拳を握りこちらに突き出してきたアイラに対して、こちらも同じように返す。
「ああ、約束だ。必ず生きて帰る。じゃあ行ってくるな」
そう言ってお城まで繋がっているというアイラが見つけた地下水路の中に降りていく。
「それにしても、暗いな」
一人で黙々と真っ暗な地下水路を手当たり次第に進む。
「明かりを付けた方が良さそうだな」
ポケットの中にあるライターに火をつける。ボワッ、という音と共にライターの火が辺りを照らす。
「明るくなったな、ん?」
今まで気がつかなかったが自分以外の何者か、いや何かの気配を感じる。ライターに照らされた光の向こうにいる巨大な何かに。
「おいおい、嘘だろ。俺は暗殺をしに来たのであって化け物退治に来た訳じゃねぇのに」
困惑するがどうやら見逃してはくれないようだ。
「しかたねぇなぁ、やればいいんだろ。依頼も達成してないのに死ねるかよ」
ポケットから自分の愛用している小型のナイフを取り出して構える。
『GYAAAAAA!』
自らに襲いかかる鋭い牙をナイフで受け流しすれ違いざまにその目を斬りつける。
「大蛇が相手とか勘弁して欲しいんだけどな、目を斬りつけただけでは諦めてくれないだろうし。というか、むしろ怒っているし」
殺意をだだ漏れにして残った片方の目でこちらを見てくる大蛇の相手をするのが面倒臭くなってきた。
「しかたない、使うか。」
自らの左目にグッと力を入れる。本来なら奥の手、まさか暗殺をする前に使うことになるとは思わなかった力を行使する。左目の視界が赤く染まり全く違う世界を映し出す。
「なるほど、そこがお前の弱点か」
孤児院で秘密裏に行われた人体実験で得たこの力は物の一番弱いところを映し出す。大蛇から映し出されたのはその首の鱗の一枚。それが分かったので一気に大蛇へと走る。
『GUGYAAAAAA!!』
怒りに任せ突進してきた大蛇を避け右手に持つ短剣を大蛇の一番の弱点である鱗に刺す。刺された大蛇はその瞬間、動かなくなった。
「ふう。ついてないな。左目も見えなくなっちゃったし」
この力を使った後は約1日程目が見えなくなるという代償がある。大きな力に対する仕方のない犠牲だ。
「さてと、今度こそ殺しに行きますか。本来の標的をね」
そう言って動かなくなった大蛇の横を通り、城への隠し通路を先へと進んで行った。
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