少年の褒美
そうして三日後、春の女王様がやってきました。あの少女は、新しい冬の女王は、皆が知らないうちにひっそりと出ていきました。国の人は、いつの間にか冬の女王がいなくなっていることに首をかしげましたが、ようやく来た春に浮かれて、すぐ忘れてしまいました。
冬の終わる日、旅立ちの前に少女はエディに会いに来てくれました。みんなが眠りに就く頃、エディの部屋の窓の外にルイーゼが立っていたのです。
「さようならを言いに来たの」
少女は相変わらず白くて薄いワンピースだけを着た姿でした。外は風がとても強くて、ルイーゼのか細い声は掻き消されてしまいそうでした。それでもエディはなんとか少女の言葉を聞き取ります。
「この前の貴方の言葉、信じても良い?」
三日前に貰えなかった返事を、ようやく貰うことができたので、エディは嬉しくなりました。
「もちろんだよ」
胸を張って答えます。
「次の冬に君が来るのを楽しみに待ってるよ」
ルイーゼはようやく表情を綻ばせて、お別れの挨拶と再会の約束を口にしました。
さて、冬を終わらせ、春を招き入れた者には王様から褒美が与えられます。春の女王様がエディのことを話しましたので、その褒美はエディに与えられることになりました。
春を祝うお祭りの最中、王様は集まった民衆の前でエディを呼びました。そして、周りに促されるままに壇上に上がったエディを褒め称えました。
民衆の拍手が鳴り響くなか、王様はエディに問いかけます。
「さあ少年、いったいどんな褒美を望むのだ」
たくさんの人に注目されて、エディはとても緊張しましたが、勇気を出して自分の望みを口にしました。
「僕にお役目を与えてください。
次の冬に、新しい冬の女王を迎えるお役目を。そして、冬の女王に仕えるお役目を。
女王が来たときに喜んでもらえるよう、もてなしをしたいのです」
次の冬、新しい冬の女王様がどんな表情でこの国を訪れたのか。
知っているのは、前の冬を終わらせた少年だけでした。